建築・リノベーション編【第13回】増築・改築に必要な手続きとは?~安心・安全な家づくりのために~

建築・リノベーション編【第13回】増築・改築に必要な手続きとは?~安心・安全な家づくりのために~

記事
マネー・副業
こんにちは。
長崎県で古民家の利活用や民泊設計を支援している、"たくえい"です。

今回のテーマは「増築・改築に必要な手続き」について。

「ちょっと部屋を広げたい」「間取りを変えたい」「2階を増やしたい」など、建物に手を加えたいときに、意外と見落とされがちなのが“手続き”です。

「自宅なんだから、自由に変えてもいいんじゃないの?」
「建築確認って、増築にも必要なの?」

そんな素朴な疑問にお答えしながら、増築・改築をスムーズに進めるための基本知識と注意点を、建築士の立場から丁寧に解説していきます。

1. 増築と改築の違いとは?

まずは基本用語から整理しましょう。

・増築:今ある建物の床面積を増やすこと。たとえば、1階の居間の横に新たに和室を増やす、2階を増やす、などが該当します。
・改築:建物の一部を壊して、新しく作り直すこと。古いトイレやキッチン部分を撤去し、新しく間取りを変更するようなケースです。

ちなみに、屋根の葺き替えや内装の更新、水回りの交換などは「リフォーム」に分類され、構造的な増減がない限り、建築確認申請は不要です。

2. 建築基準法上の「増改築」とは?

法律的に見た場合、「増築」や「改築」は建築行為の一部とみなされ、建築確認申請が必要になる可能性があります。

建築基準法第6条では、「一定規模以上の建築物の新築、増築、改築、移転」には、原則として建築確認申請をして、確認済証を受けなければならないと定められています。

ただし、例外として以下のような「規模が小さい増改築」については、確認申請が不要とされるケースもあります。

3. 建築確認申請が「必要」かどうかの判断基準

では、自分のケースが建築確認申請の対象になるかどうかは、どこで判断するのでしょうか?

以下の基準が目安になります。

■ 建築確認申請が【不要】なケース(一般的な木造住宅の場合)
・10㎡(約3坪)以内の増築で、防火地域・準防火地域に該当しない
・構造的に大きな変更がなく、建物の安全性や用途を変えない
・建ぺい率・容積率を超えない
・法定の道路に接しており、違反建築でないこと

※たとえば、庭に簡易的な物置を設置する、縁側をガラスで囲う程度なら、申請が不要になる場合があります。

■ 建築確認申請が【必要】なケース
・10㎡を超える増築
・耐力壁や構造躯体の変更がある改築
・火災の危険が高いエリア(防火・準防火地域)での工事
・建築基準法に違反するおそれがある場合(接道義務違反、既存不適格など)

特に都市部や商業地にある建物は「準防火地域」に指定されていることが多く、思った以上に厳しい制限を受けることがあります。

4. 「増築」をきっかけに既存不適格が問題化することも

ここで注意したいのが、「既存不適格建築物」の存在です。

これは、「建築当時は合法だったが、その後の法改正により、現在の基準では不適格となっている建物」のこと。
建ぺい率オーバー、道路接道義務違反、高さ制限超過など、さまざまなパターンがあります。

既存不適格の建物は、現状のまま維持・修繕することは認められていますが、「増築・改築」を行う際には現在の法基準に適合させなければならない場合があり、これが大きなハードルになります。

たとえば、接道義務(幅4m以上の道路に2m以上接している)が満たされていないと、新たな建築行為が認められず、「再建築不可」に近い扱いになるケースもあるのです。

5. 計画前にやるべき「事前調査」のポイント

増築や改築をスムーズに進めるには、事前のリサーチが重要です。

以下のポイントを、建築士と一緒に確認しておきましょう。

・建物の法的位置付け(用途地域、防火地域、斜線制限など)
・建ぺい率・容積率の余裕があるか
・接道状況(再建築可か否か)
・構造上の改変が可能か(耐震性や荷重への影響)
・所有者の意思・権利関係(登記・相続・共有など)

これらを調べずに工事を進めてしまうと、最悪の場合「違反建築」になり、是正命令や使用制限が課されることも。

6. 増築・改築における主な手続きの流れ

増築・改築を合法的に進めるには、以下のようなステップが必要です。

①【建築士への相談・依頼】
 設計事務所や工務店に相談し、既存建物の調査と法的検討を行います。

②【基本設計・構造チェック】
 増築部分の構造計画、既存部分との接合部の検討、法適合性の確認。

③【建築確認申請】
 建築主事(または指定確認検査機関)に対して確認申請書類を提出します。確認済証が交付されるまで、工事は開始できません。

④【工事着工】
 建築確認の内容に基づいて工事を実施。中間検査や完了検査がある場合もあります。

⑤【完了検査・検査済証の取得】
 完了検査を受けて、問題がなければ検査済証が交付されます。これにより、法的に工事が完了したと認められます。

7. 実例:平屋にロフトを増築したケース

長崎県内のある住宅では、「子ども部屋を確保したい」という要望から、既存の平屋にロフトを設ける工事を検討しました。

【課題】
・建ぺい率には余裕があったが、屋根裏への高さ制限に注意が必要。
・構造的に小屋裏の梁が細く、補強が必要。
・防火地域に該当していないため、確認申請は不要だった。

【対応】
・建築士が事前調査を行い、安全性と居住性を確保。
・補強梁と断熱材を組み合わせ、快適な空間を実現。
・無申請でのトラブルを避けるため、役所にも事前相談。

このように、小さな増築でも法的・構造的なチェックが必要です。

8. 補助金や優遇制度の活用も検討しよう

自治体によっては、「住宅改修」「空き家活用」などの名目で、増改築に対して補助金を用意している場合もあります。

例:
・バリアフリー化:手すり設置、段差解消などに補助あり
・子育て世帯の住環境整備:部屋数の確保や断熱改修
・空き家利活用:地域活性化を目的とした改修支援

また、一定の基準を満たせば、固定資産税の軽減や住宅ローン控除の対象になるケースもあります。

9. 増改築の計画は“長期的な視点”で

「とりあえず部屋が欲しい」「収納が足りないから増やす」といった短期的なニーズだけで増築してしまうと、将来の住み替えや相続時にトラブルになることも。

たとえば:
・耐震性能が落ちていたり、構造に無理があったりすると、売却が難しくなる
・法適合性が担保されていないと、住宅ローンや保険に支障が出る
・複数回の改築により、建物の図面が不整合になることも

だからこそ、増築・改築の際は「10年後、20年後を見据えた家づくり」が大切です。

まとめ:手続きを制する者が、安心リノベを制す

増築や改築は、生活をより快適にするための重要な手段です。
しかし、それを合法的・安全に進めるためには、「建築確認」「法規制」「構造チェック」といった“見えない部分”にこそ目を向ける必要があります。

・少しの増築でも申請が必要なことがある
・既存不適格に注意
・工事の前に建築士や自治体に相談を
・長期視点での設計と資産価値の維持が大切

安心して住み続けられる家づくりのために。
見た目のデザインだけでなく、「手続き」や「構造」も一緒に整えることが、これからの時代のリノベ術です。

次回は「建築・リノベーション編 第14回」として、「木造住宅の構造と工法」をテーマにお届けします。どうぞお楽しみに。
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