【解説】侮辱罪の法定刑が引き上げられています!!

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法律・税務・士業全般
インターネット上で人の名誉を傷つける行為が特に社会問題化していることをきっかけに非難が高まり、抑止すべきとの意識が高まっています。
それに対応して、令和4年6月13日、「刑法等の一部を改正する法律」が成立し、そのうち、侮辱罪の法定刑の引上げに係る規定が、同年7月7日から施行されています。
その改正により、侮辱罪の法定刑が「拘留又は科料」から「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に引き上げられています。

(改正前)
第231条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留(30日未満)又は科料(1万円未満)に処する。
○公訴時効期間は1年

(改正後)
第231条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
○公訴時効期間は3年

侮辱罪は、事実を摘示せずに、「公然と人を侮辱した」ことが要件になっています。
具体的には、事実を摘示せずに、不特定又は多数の人が認識できる状態で、他人に対する軽蔑の表示を行うと、侮辱罪の要件に当たることになります。

人の名誉を傷つける行為を処罰する罪としては、侮辱罪のほかに、名誉毀損罪(刑法230条)があり、この罪は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」ことが要件となっています。

いずれも、人の社会的名誉を保護するものとされていますが、両罪の間には、事実の摘示を伴うか否かという点で差異があり、人の名誉を傷つける程度が異なると考えられることから、法定刑に差が設けられています。

名誉毀損罪の法定刑は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」とされる一方、侮辱罪の法定刑は「拘留又は科料」とされてきたのです。
しかし、近年における侮辱罪の実情などに鑑みると、事実の摘示を伴うか否かによって、これほど大きな法定刑の差を設けておくことはもはや相当ではありません。

そこで、侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止するとともに、悪質な侮辱行為に厳正に対処するため、名誉毀損罪に準じた法定刑に引き上げることとされたのです。

侮辱罪の法定刑の引上げに伴い、法律上の取扱いにどのような変更が生じかについて、法務省は以下のQ&AのAをホームページに掲載しています。

侮辱罪の法定刑の引上げに伴って、例えば、次のような違いが生じるとのこと
です。
(1) 教唆犯及び幇助犯(※1)について、これまでは、処罰することができませんでしたが(刑法64条)、法定刑の引上げに伴い、その制限がなくなります。

(2) 公訴時効期間(※2)について、これまでは1年でしたが、法定刑の引上げに伴い、3年となります(刑事訴訟法250条2項6号・7号)。

(3) 逮捕状による逮捕について、これまでは、被疑者が定まった住居を有しない場合又は正当な理由なく出頭の求めに応じない場合に限り逮捕することができましたが(刑事訴訟法199条1項ただし書)、法定刑の引上げに伴い、その制限がなくなります。

(4) 現行犯逮捕について、これまでは、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り現行犯逮捕をすることができましたが(刑事訴訟法217条)、法定刑の引上げに伴い、その制限がなくなります。

(※1)教唆とは、他人をそそのかして犯罪実行の決意を生じさせ、その決意に基づいて犯罪を実行させることをいい、幇助とは、実行行為以外の行為で正犯の実行行為を容易にさせることをいいます。

(※2)公訴時効とは、犯罪行為が終わった時点から起算して一定の期間が経過すると、その後の起訴が許されなくなる制度のことです。

インターネットに投稿する際は、侮辱罪にならないかどうかの検討が必須です。

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