AIを仕事に使うことは、もう特別なことではなくなってきました。文章を整える。アイデアを広げる。画像の方向性を探す。構成案をつくる。実際のクライアントワークでも、AIを使う場面は少しずつ増えています。
ただ、AIに仕事を任せれば、すべてが早く・良くなるわけではありません。実案件では、クライアントごとに目的も状況も違います。だからこそ大切なのは、AIを使うことではなく、どこで使い、どこで人が判断するかだと思っています。
今回は、社名や案件名は伏せながら、実際の制作やSNS、Web、映像などの仕事の中で、AIをどう取り入れているかを書いてみます。
1. AIを使う目的は、ただ早く終わらせることではない
AIを使う一番の理由は、単純な時短だけではありません。僕が大きいと感じているのは、考えるための時間を増やせることです。
たとえば、ゼロから案を10個考えるところに時間を使うより、AIに叩き台を出してもらい、その中から方向性を選び、言葉や見せ方を深く詰める。そのほうが、本来人が向き合うべき部分に時間を使えます。
AIに任せたいのは作業。人が担うのは、目的と判断。
2. ヒアリング後は、まず課題を整理する
実案件では、最初からAIに何かをつくらせるわけではありません。まずはクライアントの話を聞き、何に困っているのか、誰に何を届けたいのか、今回の制作で何を変えたいのかを整理します。
そのうえで、ヒアリング内容を要約したり、論点を整理したり、抜けている視点を確認したりするためにAIを使います。頭の中に散らばっている情報を、一度机の上に並べ直すような感覚です。
もちろん、機密情報や個人情報をそのまま入力することは避けます。必要に応じて情報を匿名化したり、AIに渡す必要がない情報は切り離したりしながら使います。便利さよりも、まず扱い方を考えることが前提です。
3. 企画・構成では、答えをもらうより案を増やす
企画段階でAIが特に役立つのは、正解を出してもらうときではなく、選択肢を増やしたいときです。
SNSなら投稿テーマや切り口。映像なら冒頭の見せ方や構成。Webならページ構成や情報の順番。コピーなら言い回しの方向性。ひとつのテーマに対して複数の角度を短時間で出せるので、企画の初速が上がります。
ただし、出てきた案をそのまま使うことはほとんどありません。クライアントの事業やブランドに合っているか、既視感が強くないか、本当に相手に届くかを見ながら、人の手で選び直していきます。
AIは、答えを決めるためではなく、考えられる範囲を広げるために使う。
4. 制作では、ラフを早く形にするために使う
制作に入ると、AIの使い方はさらに具体的になります。画像のイメージ検証、動画の構成ラフ、コピーの仮案、ナレーションの方向性、ビジュアルのバリエーションなど、完成前の段階を早く見える形にできます。
これによって、頭の中だけで説明する時間が減ります。クライアントにも、こういう方向です、と視覚的に共有しやすくなり、認識のズレを早い段階で修正できます。
一方で、AIで出力したものには、細かな違和感が残ることがあります。文字、手、質感、ブランドらしさ、情報の正確さ。そこをそのままにせず、デザインや編集、レタッチ、構成の調整を重ねて、最終的な制作物にしていきます。
5. 最終確認は、AIに任せない
実案件で一番大事なのは、最後の確認です。AIがきれいにまとめてくれた文章でも、そのクライアントらしくなければ使いません。AIで生成したビジュアルも、雰囲気が良いだけでは採用しません。
事実として正しいか。言葉が強すぎないか。見た人に誤解を与えないか。企業や商品の空気に合っているか。制作物を公開したあと、相手がどう受け取るか。ここは、人が責任を持って判断する部分です。
AIは、それらしいものをつくるのが得意です。でも、らしさを決めるのは人です。クライアントワークでは、この違いがとても大きいと感じています。
6. 納品後の改善にも、AIは使える
AIの活用は、制作して納品したら終わりではありません。SNSの反応、アクセスデータ、コメント、問い合わせにつながった内容などを整理し、次の改善案を考えるときにも使えます。
数字を眺めるだけでは見落としやすい傾向を整理したり、次に試せる仮説を増やしたりすることで、制作を一回きりで終わらせず、改善につなげやすくなります。
ここでも最終的に見るのは、数字だけではありません。実際に現場で何が起きたのか、クライアントがどう感じているのか、ユーザーからどんな反応が返ってきたのか。AIが整理した情報と、現実の手触りを合わせて次を考えます。
AIが入っても、仕事の中心は変わらない
実際のクライアントワークでAIを使っていると、できることは確実に増えたと感じます。考えるスピードも、形にするスピードも上がりました。
でも、仕事の中心にあるものはあまり変わっていません。相手の話を聞くこと。目的を見つけること。必要なものを選ぶこと。そして、最後まで責任を持って形にすること。
AIは、その仕事を代わりにやってくれる存在というより、より深く考え、より多く試すための道具です。
マッタ創作所では、AIを使うこと自体を価値にはしていません。必要なところでは使い、使わないほうがいいところでは使わない。その案件にとって一番いい方法を選ぶことを、これからも大切にしていきたいと思っています。