映像制作というと、撮影や編集の技術を思い浮かべる人が多いかもしれません。もちろん、カメラの使い方も、編集のテンポも、色も音も大切です。
でも、実際の制作で僕が最初に考えているのは、もっと手前のことです。
誰に、何を伝えるのか。見た人に、どんな気持ちになってほしいのか。
この部分が曖昧なまま撮り始めると、映像はきれいに仕上がっても、なぜか残らないものになってしまいます。
最初に考えるのは、映像ではなく「目的」
まず確認するのは、この映像を何のためにつくるのか、ということです。
商品の魅力を伝えたいのか。会社の考え方を知ってほしいのか。採用につなげたいのか。SNSで興味を持ってもらいたいのか。
目的が変われば、同じ会社や同じ商品を扱う映像でも、構成も長さも見せ方もまったく変わります。
映像の方向性は、撮影現場ではなく、目的を言葉にした時点で半分決まります。
「誰に届けるか」を具体的にする
次に考えるのは、その映像を誰が見るのかです。
企業側が伝えたいことと、見る側が知りたいことは、必ずしも同じではありません。そこをそのまま並べるだけでは、情報はあっても届きにくい映像になります。
初めてその会社を知る人なのか。すでに興味を持っている人なのか。採用を検討している人なのか。それによって、最初の数秒で見せるものも変わります。
相手を具体的に想像できるほど、何を説明し、何をあえて説明しないかも見えてきます。
全部を伝えようとしない
映像制作では、素材が集まるほど、あれもこれも入れたくなります。
会社の歴史、サービス、強み、人、設備、実績。どれも大切だからこそ、全部入れたくなる。
でも、短い映像の中で全部を伝えようとすると、結果として何も残らなくなることがあります。
だから、最初に「この映像を見終わったあと、一つだけ覚えてもらうなら何か」を決めます。
伝えることを増やすより、残したいものを一つ決める。
言葉になる前の「感情」も決めておく
映像には、文章や写真とは少し違う力があります。時間の流れ、音、動き、間によって、情報だけでなく感情まで伝えられることです。
だから構成を考えるときは、何を理解してほしいかだけではなく、どう感じてほしいかも考えます。
安心してほしいのか。ワクワクしてほしいのか。誠実さを感じてほしいのか。少し立ち止まって考えてほしいのか。
その感情が決まると、カメラの動き、光、音楽、編集の速さ、言葉の量まで自然に方向が揃ってきます。
撮影と編集は、その答えを形にする工程
ここまで整理して、ようやく撮影や編集について具体的に考え始めます。
どんなカットが必要か。どこを寄りで見せるか。どの瞬間に音を落とすか。何秒見せるか。
それらは感覚だけで決めるのではなく、最初に決めた目的、相手、伝えたいこと、感情に戻りながら選んでいきます。
技術は大切です。でも、技術は目的ではなく、伝えるための手段です。
迷ったときは、最初の問いに戻る
制作を進めていると、途中で迷うことがあります。どちらのカットがいいか。文章を入れるべきか。もっと派手にするべきか。
そんなときは、最初に整理した「誰に、何を伝えるのか」に戻ります。
そこに照らして必要なら残す。必要でなければ削る。
この基準があるだけで、映像はずっとシンプルに強くなります。
映像をつくる前に、伝えたいことを見つける
映像制作は、カメラを回した瞬間から始まるわけではありません。編集ソフトを開いた瞬間からでもありません。
その前に、何を伝えたいのかを一緒に整理するところから始まっていると思っています。
見た目のかっこよさだけではなく、その映像が誰かに届き、何かが少し動くこと。
マッタ創作所では、そのための「最初の問い」を大切にしながら映像をつくっています。