「幸福論の幸不幸」東洋大学文学部哲学科自己推薦小論文型2021年
(1)問題
次の文章を読み、自分自身の経験をふまえて、「幸福であること」について1,000宇以内で論じなさい。
幸福論の幸不幸
① 世紀を跨いだ頃から、「国民総幸福度」(GNH:Gross National Happiness )が、国情、ないしは国家の発展を測る指標として人口に膾炙(かいしゃ)するようになった。1972年にブータン王国の国王ジグミ・シンゲ・ワンチュクによって提唱されたこの考えは、国民総生産(GDP:Gross Domestic Product)ないしは国民総所得(GNI:Gross National Income)という経済指標に代わるものとして広まった。社会のほんとうの豊かさは、経済の規模や成長度で測れないというところから、GDPに象徴されるような豊かさのイメージに対抗するものとして提唱されたのである。ちなみに、政財界の人たちがひたすら注視してきた「経済成長率」といえば、このGDPの伸び率のことである。
② 「国民総幸福度」でいう「幸福」は、国民の満足感の多寡で測られ、その満足感はさらに健康や心の安らぎ、寿命の長さ、失業や事故の少なさ、仕事と生活の調和などの観点から測られる。そしてそれを裏づける指標を求めて、「幸福に関する実証研究」なるものに取り組まれるようにもなっている。
③ しかしいざ「幸福とは何か」というふうにその定義をなそうとすると、それは日々の暮らしに満足できていることだとはかんたんに言えないことがあきらかになる。そもそも何を満足とするかについて、意見の一致を見ることは少ないからである。
④ 人間の行為はみな幸福をめざしているという点につい
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