今日の絵:七夕08
これは星の夜露です。これで墨を溶いて短尺に願いを書こうと思い、手近な器にとりました。すると器に星空がやどって、きらきらと光を放ちます。それがあんまりにもきれいなので、私はその夜露を墨で染めるのが惜しくなってきました。この美しい水を何に使えばいいだろう。私は家じゅうを歩きまわりました。そうしたら見つけました。それは小さな鏡でした。昔とある雑貨屋さんで見つけて、一目惚れした手鏡です。初めこそ気に入って使っていましたが、いつしか忘れ去られて、部屋の端に放り出されていました。ああ、私はいつから、私を見つめることを忘れていたのだろう。薄汚れた鏡をきれいにするなら、この夜露こそがふさわしい。そう思いました。器に指をいれて、夜露を一滴、すくいとりました。指の先はきらきらと濡れました。そっと鏡の表面を拭うと、鏡は深く透明にかがやきはじめました。星の夜露は、鏡に染み通って、鏡の向こうの世界をうすく彩ります。小さな鏡を覗き込むと、向こうの世界に、私の瞳が見えました。それは夜と朝のあいだの色をしていました。そうして、星のひかりをたたえて、いつまでもちかちか輝くのでした。
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