自叙伝「それでも、生きてる(幼少期~小学校期)」全三十一話
第一話 「拾われた子供」
「ママお金ある?」
貧乏な家に生まれた私は、小さい頃どうしても欲しい物がある時に、母にいつもこうお伺いを立てていた。
その度に、母に言われた。
「金欲しいんだったらオマエの親父に言え」
私の父親は、物心がつく頃には既にいなかった。一、二歳の時に、母の腕に抱かれ、父親が車で去ってくのを見送った様な、そんな映像がわずかながら記憶に残っている。母は私を抱きながら、何かを言っていた。何を言っていたのかは覚えていないが、声のトーンと表情で、この人は怖いことを言っていると思った。母と父の間に何があったのか詳しくは知らないし知りたくもないが、当時の母は相当私の父親を憎んでいたと思う。その憎しみは、当然私にぶつけられた。
「オマエの親父は…オマエの親父は…」と、事あるごとに私に言ってきた。今で言うなら立派な精神的虐待だ。母にそう言われても、小さかった私にはどうしようもなく、見たことのない父親の悪口を延々と聞かされるのだった。
当時私は、母と、七つ上の兄と、ぼろい平屋の貸家に三人で住んでいた。いや、三人で住んでいたのかが曖昧な程、三人での記憶がほとんどない。唯一、家の前で兄と遊んでいた時に撮ったであろう写真が記憶に残っているが、それも今となってはどこかにいってしまった。それほど、当時の兄との思い出は無い。7つも歳が離れていれば当然なのだろう。ただ、写真の中の私と兄は、ピースサインをして、最高の笑顔をしていた。
そんな兄と私は、父親が違う。このことを理解したのはいつなのだろう。わからないが、いつの間にか知っていた。私が母に聞いたのか、母が自ら話してきたのか、どうりで七つも
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