「マンハッタン1999」 ・・・西55丁目の恋愛小説①
この物語はまだ携帯電話やインターネットやEメールがオフィスや家庭に普及する直前で、コロナもテロリストもトランプもいなかった今から約20数年前のニューヨーク・マンハッタンを舞台にした、どこにでもありそうだけれど誰もが主人公になれそうなありふれた恋愛小説である。 東京在住の音楽ディレクターの堤亮平は仕事で定期的にニューヨークに通ううちに、偶然、旅行代理店の通訳ガイドとしてマンハッタンの55丁目に暮らす藤堂綾乃と知り合い、恋に落ちる。 その恋の舞台になる1999年から2000年のミレニアムに変わる頃の活気あふれるマンハッタンのレストランやホテル、料理、街の場面などが当時のありのままのリアルな情景と実名描写で詳細に表現されている。しかし、やがて2001年同時多発テロが発生、ふたりの心は離れ離れになってしまうのだが・・・。第一話「JFK」 この物語は僕がニューヨークで彼女と出会ってから約2年あまりのできごとと、それから後の時間の経過をつづったものである。その間には2001年の9月11日の同時多発テロが起きている。ある意味で、ワールドトレードセンターがまだロワーマンハッタンで美しいシルエットを誇っていた日まで、ニューヨークの物価もいまほど狂乱しておらず、ホテルもレストランも安くて、秘密にしておきたいようないいところがたくさんあって、街角にはこれから僕が書くような、名もない小さな恋の花がいくつも咲いていた。 物語に出てくるほとんどのホテルも、レストランやカフェも今は名前が変わったり、なくなったり、まったく別な店に変わってしまっている。
だからこそ、これはそんな90年代の終わり、素敵だった
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