許可を求める表現 「サセテモラッテモイイカ」と「シテモイイカ」
自分がしようとする行為に対して他者に許可を求める表現として、「~させていただいてもいいですか」などの「使役形+モラウ」を使うタイプ(「サセテモラッテモイイカ」系と総称)と「~してもいいですか」などのテ形を使うタイプ(「シテモイイカ」系と総称)の二種類があります。日本語学習者が前者のタイプの表現を使おうとする際に、使役形が欠如した「テ形+モラウ」の形になってしまう誤用がよく見かけられます。下の(1)のような場面で「休んでいただけませんか」と言ってしまうと、相手に休むことをお願いすることになってしまい、許可を求める意味になりません。
(1) 【休暇を1日とる場面】
学習者:どうか。あのう、1日だけ、ど、休んでいただけませんでしょうか。
母語話者:あ、それは張さんが休みが欲しいってことよね。
学習者:あー、はい。そうですね。
母語話者:あー、わかったわかった。
(蒙・中井2020、p.116)
「休んでもいいですか」なら許可を求める意味にはなりますが、丁寧さが足りないように感じられるので、学習者は丁寧な依頼表現を使おうとして「~ていただけませんでしょうか」を使ったのだと思われます。ただ、学習者にとっては動詞を使役形にすることがなぜ丁寧さと結びつくのか理解しにくいでしょう。なぜ日本語では「使役形+モラウ」の形を使うと丁寧に許可を求める表現になるのでしょうか。
「サセテモラウ」という形にすることで、相手の許可によって自分が利益・恩恵を受けることを強調することになるからです。つまり、相手が自分の行動を決定する権利を持っていて、相手が許可して
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