教養としての日本儒教②:陽明学
陽明学:主観主義的・実践的・行動主義的な学風から、社会体制や権威に対して批判的な精神的態度を育て、幕府からは敬遠されましたが、幕末においては大塩平八郎・吉田松陰などに現状改革の精神と行動をもたらしました。中江藤樹(なかえとうじゅ):日本陽明学の祖、「近江聖人」、『翁問答』。はじめ朱子学を学び、藤樹書院で教えていましたが、やがて疑問を抱くようになり、『陽明全書』に触れて陽明学の致良知説に共鳴するようになりました。林羅山が主君への「忠」を強調したのに対し、「孝」に人倫関係を成り立たせている根本原理を見出し、全ての人々が儒学を学び、実践すべきだと主張しました。
致良知:良知とは人間に生まれながらに備わっている、善悪分別を真実に弁(わきま)え知る徳性断の知のことで、これを働かせることを致良知と言います。
知行合一(ちこうごういつ):知ることと行うことは本来一つであるという考え。
時処位(じしょい):時・処(場所)・位(社会的地位)に応じて適切な判断を行う主体的な働きを「権」と言い、具体的な場面に即した「権」の働きを重視しました。
愛敬(あいけい):孝の徳を具体的に言えば、人々が「ねんごろに親しみ」(愛)、「上を敬い、下をあなどらない」(敬)ことであるとしました。
熊沢蕃山(くまざわばんざん):江戸前期の陽明学者、『大学或問(だいがくわくもん)』。中江藤樹の思想に影響を受け、礼法は時・処・位に応じて柔軟に変えてもよいと考えました。「治国平天下」という儒学の理念を現実との関わりの中で考え、岡山藩主池田光政に仕えて治山治水に業績を上げ、例えば樹木を切り尽くすと山の保水力が乏しくなり、水害が起
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