短編小説『5弦』 第1話(サンプル掲載)

短編小説『5弦』 第1話(サンプル掲載)

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小説
僕はギターの弦。
5弦。

ギターにも色々あるけれどオーソドックスな弦が6本あるものは、僕を基準に音を調整する。

僕はギターという世界のルールだ

ってあたりでこれは夢だなとわかった。
僕の手足は細く長くなり隙間のないように体に巻き付いている。
いわゆる巻き弦ってやつだ。

窓際に立てかけられたギターは様々な光を浴びて一日を終える。

だけれども僕は夢から醒めない。

夜になり、持ち主らしき少年が帰ってきた。
手にはニッパーを持っている。

いくらなんでも夢とはいえ体を二つにされるのはいい気分ではないし、できることならやめて欲しい。

錆びたニッパーの刃が僕に食い込む、痛みは無い。
上手くいかない少年はニッパーを何度か閉じたり開いたりする。

不快感だけが募っていく。

完全に丸まった刃に押しつぶされるような、左右に弾かれるような、そして食い込みを感じながらも僕の張力に変わりはない。

少年が両手でニッパーを、握り締めグッと力を入れた瞬間、目が覚めた。

暗い部屋、家具も何もないありきたりな普通の部屋。
電気すらないけど、普通の部屋、どこからか声が響く。

「好きにいきろ。」

世界に放り出された僕の持ち物は、ギターの弦だったあの1日の記憶だけ。

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