さか店長です。第1回は台帳の自動集計、第2回は入力の表記ゆれ対策を書きました。今回は一歩進んで、物件概要シートの作成そのものを自動化した話です。
先に断っておきます。この記事に出てくる物件名・価格・件数などの数値は、すべて架空のダミーデータです。実在の顧客や物件、勤務先の情報は一切含まれていません。
ビフォー:概要シート1枚に、コピペを何度も繰り返す
案内資料や店頭掲示に使う物件概要シートは、A4判1枚に物件名・価格・所在地・面積・間取り・設備・アピールポイントをまとめたものです。多くの会社では、物件台帳やポータルサイトの画面から項目を拾って、シートの様式に貼り付けて作っているのではないでしょうか。
1枚あたり数分の作業でも、物件の入れ替えや価格改定のたびに発生します。そして本当の問題は時間よりも、間違いに気づけないことです。前の物件の価格が残ったまま印刷してしまった。所在地だけ別の物件のものになっていた。コピペ作業の事故は、貼った本人ほど気づけません。確認のためにもう一度台帳と突き合わせる、という二度手間も発生します。
アフター:物件No.を1つ入れるだけにする
作った仕組みはシンプルです。概要シートの先頭に「物件No.」の入力セルを1つ置き、そこに台帳の通し番号を入れると、残りの項目がすべて自動で反映される形にしました。
使っているのは、Excelの基本関数の組み合わせです。
- MATCH:台帳の中で、その物件No.が「何行目にあるか」を探す
- INDEX:見つけた行から、価格・所在地・面積などの列の値を取り出す
項目ごとに INDEX と MATCH を組み合わせた式を1回だけ設定しておけば、あとは No. を変えるたびにシート全体が差し替わります。マクロは使っていません。第1回で書いたとおり、会社の共有PCではマクロが無効化されていることが多いので、「誰の環境でも開ける」ことを優先しました。
設計で気をつけたのは、次の3点です。
1. 台帳の列を増やしても壊れにくくする:MATCHで列の位置も名前から探す形にしておくと、列の追加や並び替えで参照先がずれる事故を減らせます
2. 存在しないNo.を入れたら空白にする:エラー表示のまま印刷される事故を防ぐため、該当がなければ空欄になる式にしています
3. A4判1枚に収まる様式を固定する:項目の反映先は様式側で固定し、長いアピールポイント文でもレイアウトが崩れない文字数の目安を決めました
なぜVLOOKUPではなくINDEX+MATCHなのか
台帳から値を引く関数は、VLOOKUPでも作れます。では、なぜあえてINDEXとMATCHの組み合わせにしたのか。理由は「台帳の変化に強い」からです。
VLOOKUPは「左から何列目か」を数字で指定するので、台帳に列を挿入・削除すると、参照先がずれて別の項目を表示してしまう事故が起きます。しかもエラーにはならず、「それらしい値」が出続けるのが厄介です。台帳は運用しながら列が増えていくものなので、この弱点は無視できませんでした。
INDEX+MATCHなら、「物件No.の列」と「価格の列」をそれぞれ名前で探す形にできます。列の順番が変わっても、項目が正しく引けます。式は少し長くなりますが、一度作ってしまえば触る機会はほとんどありません。「最初に少し丁寧に作る代わりに、壊れにくくする」。台帳のような長く使うファイルでは、この考え方が効きます。
注意点も書いておきます。MATCHで「完全一致(0)」の指定を忘れるのは、この仕組みでいちばん典型的なミスです。近似一致のままにしておくと、並び順によっては別の物件の行を引いてしまい、「No.を変えたのに価格が前の物件のまま」という表示になりかねません。エラーは出ないので、見た目では気づきにくい種類の事故です。対策として一般的なのが、検証用のチェックを習慣にすることです。たとえば「No.を端の物件(1件目と最終件)に変えて、正しい物件名に切り替わるか」を確認する。この2件チェックを入れておくだけで、行ズレの多くは事前に拾えます。
自動化で本当に減るのは「確認の手間」
実際にダミーの台帳(20件)で試すと、No.を変えるだけで概要シートが切り替わり、価格や面積の転記ミスが構造的に起きなくなりました。ここでいう「構造的に」というのが重要で、注意深く作業するかどうかに関係なく、間違いの入り口自体が塞がれるからです。
もちろん、自動化しても人の確認がゼロになるわけではありません。台帳側の入力が間違っていれば、概要シートにもそのまま出ます。だからこそ第2回で書いた「入力ルール(プルダウン固定と数え方の定義)」が前提になります。入力が整っている台帳が1つあれば、集計も概要シートも、その台帳から自動で出せる。これが台帳自動化の全体像です。
また、広告表示に関する法令上の確認は、この仕組みの対象外です。自動で出たシートをそのまま掲載するのではなく、掲載内容の最終確認は必ず人が行ってください。自動化するのは「転記」という事務作業であって、表示の責任まで自動化するものではありません。
完成版パッケージはココナラで提供しています
今回の仕組み(台帳の入力シート+自動集計ダッシュボード+物件概要シートの自動出力+使い方手順書)を、会社の列構成に合わせて作る完成版パッケージを、ココナラで提供しています。ダミーデータの見本ファイルで動作を確認してから進める形で、詳細はプロフィールに案内を置いています。
次回は、「申込件数って、そもそもどう数えるもの?」という、集計の前に決めるべき“数え方の定義”の話を書きます。
(さか店長@ちっちゃい不動産屋のプチDX記録)