物件台帳の月次集計、まだ手で数えていませんか? Excelの「数える関数」だけで自動化した記録

記事
IT・テクノロジー

はじめまして、さか店長です。宅地建物取引士を持ち、大手不動産で土地仕入れと住宅販売をしてきた実務家として、いまも住宅営業の現場に立ちながら、「毎月必ず発生する手作業」をExcelとAIでどこまで自動化できるかを検証しています。このnoteでは、その制作過程と学びを記録していきます。

先に断っておきます。この記事に出てくる物件名・価格・件数などの数値は、すべて架空のダミーデータです。実在の顧客や物件、勤務先の情報は一切含まれていません。

月末の「数える作業」は、静かに時間を奪う

物件台帳を使っている会社なら、月末にこんな作業が発生していないでしょうか。

- ステータス別に「販売中が何件、商談中が何件、成約が何件か」を数える
- 担当者ごとに反響数と内見数を足し上げる
- 今月登録した物件、今月成約した物件を拾い出す

物件が10件程度なら手作業でも回ります。でも30件、50件と増えてくると、数えるだけで30分、担当者別の集計までやると1時間近くかかることもあります。しかも数え間違いが混ざると、会議で「先月と言っていた数字と違う」という話になり、集計そのものへの信頼が落ちていきます。

問題は速さより、毎月「同じ物差し」で測れていないことだと感じました。そこで、台帳に1行入力するだけで集計が自動で更新される形を作ってみることにしました。新しいシステムの導入ではなく、今使っているExcelの延長で作るのが条件です。

やったこと:台帳の「列」を決めて、集計は関数に任せる

作ったものは3つのシートです。

1. 物件台帳シート(入力)
物件名、種別(新築戸建/中古戸建/土地/マンション)、価格、所在地、面積、間取り、ステータス(販売中/商談中/申込/成約/中止)、担当者、反響数、内見数、申込日、成約日、登録日、アピールポイント。入力するのはこのシートだけです。ステータスと種別はプルダウンで選ぶ形にして、入力の表記が人によってブレないようにしました(この理由は後述します)。

2. 集計シート(自動計算)
使う関数は、数える「COUNTIF」、条件を複数重ねる「COUNTIFS」、条件に合う行だけ合計する「SUMIF」が中心です。特別なマクロは使っていません。

- 総物件数、販売中・成約の件数、平均価格、掲載価格の合計
- ステータス別・種別別の件数
- 担当者別の担当件数、反響・内見の合計、申込・成約の件数
- 月別の登録件数・成約件数

3. 物件概要シート
台帳の中から物件を1つ選ぶと、A4判1枚の概要シートに自動で反映される仕組み(物件番号で引くINDEXとMATCHの組み合わせ)も作りました。こちらは別の記事で詳しく書きます。

あえてマクロ(VBA)は使っていません。理由は単純で、会社の共有PCではマクロが無効化されていることが多く、「開いたら動かない」ファイルは現場で使われなくなるからです。関数だけで作れば、Excelでもスプレッドシートでも動く範囲が広がります。自動化の第一歩は、高機能さよりも「誰の環境でも開けること」だと思います。

もう一つ意識したのは、平均価格のような「判断に使う数字」です。平均は物件の顔ぶれで大きく動くので、件数と合計とセットで出すようにしました。数字を1つだけ切り取って見せるダッシュボードは、かえって判断を誤らせます。

ダミーデータで試した結果

架空の住宅会社を想定し、ダミーの物件を20件入れて試しました。結果はこうなりました。

- 総物件数:20件
- 販売中:10件/成約:4件
- 平均価格:3,025万円
- 掲載価格の合計:60,500万円
- 登録月別では、8月3件、9月8件、10月9件

繰り返しますが、これはすべて架空のデータです。ただ、台帳側のどこか1件のステータスや反響数を書き換えると、集計シートの数字が連動して変わることまで確認できました。手作業で数える工程を関数に任せる仕組みとしては、機能しています。

詰まった点:数式は合っているのに、数字が出なかった

制作の中で一番ハマったのがこれです。

ファイルをスマホで確認したところ、集計シートの数字が表示されず、台帳の数値を変えても反応しません。一見すると「数式が壊れている」ように見えます。ところがPCで開き直すと正しく計算される。原因は、ファイルの中に「計算済みの値」が保存されていなかったことでした。

数式だけが入っていて計算結果が保存されていないファイルは、アプリのプレビュー表示では再計算されず、数字が出ない(あるいは古いまま)に見えることがあります。対策はシンプルで、納品前にPC側で一度開いて再計算し、計算済みの値ごと保存すること。そして最終確認は、実際に買い手が使う環境——つまりPCのExcel——で行うことです。

今回の件で、確認の役割分担を決めました。スマホは「見る・承認する」用、PCは「最終確認」用。この線引きは、今後のファイル販売でもそのまま使っていきます。

もう一つ、細かいけれど大事だったのが「数え方の定義」です。たとえば「申込件数」は、ステータスが「申込」の行を数えるのか、「申込日が入力されている行」を数えるのかで結果が変わります。集計式を書く前にこの定義を決めて、台帳の使い方シートに書いておく。自動化の価値は、速さよりも「定義が固定されて、担当が変わっても数字がブレないこと」にあると実感しました。

学びのまとめ

1. 集計が壊れる原因は、数式より先に「入力の表記ゆれ」にある。種別やステータスはプルダウンで固定する
2. 集計式の前に「何をどう数えるか」の定義を決め、台帳に明記しておく
3. 数式だけでなく「計算済みの値まで保存された状態」で渡す。最終確認はPCの実機で行う

なお、今回自動化したのは「台帳の集計と概要シートの出力」までです。広告表示の法令確認や、重要事項説明書・契約書類の作成といった専門判断は、この仕組みの対象外です。自動化できる事務作業と、人が責任を持って確認すべき部分は、分けて考える必要があります。

次回は、今回いちばん効いた「入力の表記ゆれ対策」について、壊れた実例と直し方を書きます。

(さか店長@ちっちゃい不動産屋のプチDX記録)
サービス数100万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す