日々、動物病院の診察室で命の現場に立ち会う中で、獣医師として本当に胸が苦しくなる場面があります。
それは、肺水腫、肺炎、発作などで重度の呼吸促迫を起こしている子の、これからの過ごし方を、飼い主さんと一緒に決めなければならないときです。
私たちは、次のような、あまりにも切ない二択を突きつけられます。
一案目:病院のICUに入院させて、最善の治療をする
動物病院のICU(集中治療室)では、酸素濃度を細かく管理できるため、苦しい呼吸を確実に楽にしてあげられます。
呼吸を維持することは、救命率を上げるために何より重要です。
しかし、多くの動物病院には、夜間に無人になる時間帯があります。
最善の治療はできる一方で、万が一のことがあったとき、誰にも看取られず、一人きりで逝かせてしまうかもしれない。そんな大きなリスクが伴います。
二案目:万が一を考えて、我が家でみんなで見守る
最期を迎えるなら、寂しい病院ではなく、大好きな家族がそろう我が家で。そう考える飼い主さんも少なくありません。
ただ、お家に適切な酸素設備がなければ、その子は苦しい呼吸のまま過ごすことになります。
ドラッグストアで必死に買ってきた酸素缶とシャワーキャップで、少しでも凌ごうとしても、本格的な呼吸困難の前では焼け石に水です。
みんなのそばにいられる代わりに、苦しい時間を強いてしまうことになります。
獣医師としての正論、いち飼い主としての本音
プロとしての私の答えは、断然、入院です。
動物の苦痛を取り除くことが獣医師の使命であり、少しでも生きられる可能性を上げるための最善の選択肢だからです。迷わず、飼い主さんには入院をお勧めします。
でも、診察室を離れて、いち飼い主に戻ったとき、私の心は揺れ動きます。
私自身、かつて愛猫を、入院中に病院で逝かせてしまった経験があります。
あのとき、無理に入院させず、家に連れて帰っていたら。大好きな我が家で、私の腕の中で看取ってあげられたのではないか。
そのときの後悔や切なさは、何年経っても消えることはありません。
だからこそ、苦しむと分かっていても、家で看取りたいと涙を流す飼い主さんの気持ちに、心から共感します。
プロとしての正論と、飼い主としての本音。
どちらを選んでも、何かしらの後悔が残るかもしれない。本当に辛い選択です。
絶望を希望に変える、三案目
そんなとき、もし前もって、お家にきちんとした医療用の酸素室を準備できていたら、どうでしょうか。
これまで二択しかなかった選択肢に、別の未来が開けます。
それは、家で獣医師の指示のもと酸素療法を行いながら、家族みんなで見守る(看取る)という選択です。
そのために、実績と信頼のある業者さんから、適切な医療レベルの酸素濃縮器とハウスをレンタルしておきます。
こうしておけば、呼吸をできる限り楽に保ち、苦痛を和らげながら、大好きな家族の温もりの中で、穏やかな時間を過ごさせてあげられます。
獣医師の処方のもとで在宅酸素療法を続けることも、苦痛の少ない、穏やかな看取りを選ぶことも可能になります。
酸素室は、動物と飼い主さん、双方のQOLを支えてくれる
事前にきちんとした酸素室をレンタルしておくことは、動物の「苦しまない権利」を守ります。
同時に、飼い主さんにとっても「最期まで寄り添ってあげられた」という心の支えになります。
動物と飼い主さん、双方のQOL(生活の質)を大きく高めてくれると、私は感じています。
呼吸促迫がひどくなってから慌てて手配しても、機械が届くまでの数日間を、その子が持ち堪えられないかもしれません。
だからどうか、「まだ早いかな」と思う段階でも構いません。
もしものときは、お家で過ごさせてあげたい。そんな願いがあるなら、自己判断せず、事前にかかりつけの獣医師に相談してください。
動物病院のスタッフは、病院でも、お家でも、みんなの大切な我が子が一番よい時間を過ごせる方法を、一緒に考えたいと願っています。