最近、サロンワークをしていると少しずつ増えてきたことがあります。
それは、
「AIで自分の顔に髪型を合わせてみたんですけど、こんな感じどうですか?」
と、生成AIで作った画像を見せていただくことです。
ChatGPTなどで相談した内容を、そのまま見せてもらうこともあります。
AIを使えば、自分では思いつかなかった髪型を提案してもらったり、自分の顔で髪型をシミュレーションしたりできるようになりました。
美容師としても、とても便利な時代になったなと思います。
ただ、実際にお客様からAIの画像や提案を見せてもらったとき。
正直に言うと、僕自身、ほんの少しだけ複雑な気持ちになることがあります。
美容師として、少しだけ複雑に感じること
僕は美容師として17年間、お客様の髪を担当してきました。
普段から、
「この方にはどんな髪型が似合うだろう」
「本当はどんな雰囲気になりたいんだろう」
と考えながら仕事をしています。
だから、AIが提案した髪型をお客様から見せてもらったとき、
「今まで自分がしてきた提案では物足りなかったのかな」
「自分よりAIの提案の方を信頼しているのかな」
と、一瞬だけ考えてしまうことがあります。
僕自身、美容師としてのプライドがものすごく高い方ではないと思っています。
最終的にお客様が喜んでくれるなら、参考にするものは雑誌でもInstagramでもAIでも何でもいい。
基本的にはそう考えています。
それでも少し引っかかる。
この感覚について、自分なりに少し考えてみました。
お客様は「美容師よりAIを信じている」わけではない
考えてみれば、お客様がAIを使う理由は、美容師を否定したいからではないんですよね。
「自分に何が似合うのか知りたい」
「髪型を変えて失敗したくない」
「こんな髪型にしてみたいけど、自分に似合うか分からない」
そんな不安があって、AIという新しい方法を使っているだけだと思います。
そして、これはInstagramやヘアカタログで参考画像を探して美容室に持っていくことと、本質的にはそれほど変わらないのかもしれません。
むしろ、自分の顔で髪型をシミュレーションできる分、「こんな自分になってみたい」というイメージを見つけやすくなっています。
そう考えると、AIは美容師の代わりというより、お客様が自分の「なりたい」を探すための道具なのだと思うようになりました。
ただ、AIの画像だけでは分からないこともあります
ここは美容師として、ぜひ知っておいてほしいところです。
髪型を考えるとき、美容師が見ているのは顔の形だけではありません。
髪の太さや硬さ、毛量、クセやうねり、頭の形、顔まわりのバランス、襟足などの生え癖。
さらに、過去のカラーや縮毛矯正などの施術履歴、普段どのくらいスタイリングに時間を使えるのか。
実際のサロンワークでは、いろいろな情報を確認しながら髪型を考えています。
特に生え癖や毛量の分布、髪のダメージ状態などは、写真だけでは判断しにくく、実際に髪を見たり触ったりして初めて分かることもあります。
そのため、AIでとても素敵な髪型になっていたとしても、実際の髪でまったく同じようにできるとは限りません。
でも、だからといってAIで作った画像が役に立たないわけではありません。
大切なのは、使い方だと思っています。
AI画像を見せるなら「どこが好きか」も伝えてほしい
美容師として参考画像を見せてもらったとき、実は知りたいことがあります。
それは、
「この髪型の、どこが好きなんだろう?」
ということです。
同じ写真を見ても、
「前髪が好き」
「顔まわりの感じが好き」
「後頭部の丸みが好き」
「長さが好き」
「なんとなく柔らかい雰囲気が好き」
など、人によって気に入っているポイントは違います。
ここが分かると、美容師はその方の髪質や生え癖に合わせて、別の方法でその雰囲気に近づけることもできます。
だからAIで作った画像を美容室で見せるなら、
「この通りにしてください」
ではなく、
「この写真の顔まわりの感じが好きです」
「このくらい柔らかい雰囲気にしたいです」
「私の髪質で難しいところがあれば、似合うように調整してほしいです」
という伝え方の方が、担当する美容師さんとも相談しやすいと思います。
AIに「正解」を決めてもらわなくていい
AIを使って髪型を考えること自体は、僕はとても面白いと思っています。
これまでなら挑戦しようと思わなかった髪型を、自分の顔で試してみることもできます。
ただ、
AIが選んだ髪型=自分にとっての正解
にする必要はないと思います。
AIを使って可能性を広げる。
その中から「自分はこれが好きかも」を見つける。
そして最後は、実際の髪を見てくれる担当美容師さんと相談して決める。
この使い方が、一番いいのではないかと思っています。
だから「美容師への指示書」は作らないことにしました
今回、ココナラで「似合わせヘアカルテ」というサービスを作りました。
最初は、似合う髪型を提案して、最後に「美容師さんへのオーダーシート」を付けようと考えていました。
でも作っている途中で、自分がお客様からAIの画像を見せてもらったときの気持ちを思い出しました。
別の美容師さんやAIから、
「前髪はこうしてください」
「ここはこう切ってください」
と細かく書かれた指示書を持っていくことが、本当にお客様と担当美容師さんにとって良いことなのか。
少し違う気がしました。
そこで、オーダーの「指示書」を作るのではなく、
お客様自身が「何が好きなのか」「どうなりたいのか」を整理して、美容師さんに伝えやすくするもの
を作ることにしました。
似合う髪型を3つ提案することも、そのための一つの手段です。
お客様と担当美容師さんの「橋渡し」をしたい
僕がこのサービスで目指しているのは、担当美容師さんの代わりになることではありません。
AIに美容師の代わりをさせたいわけでもありません。
AIを使って髪型の可能性を広げる。
僕が美容師として、その方の悩みや好み、髪の状態を整理する。
そして、
「私はこういう髪型が好き」
「こんな雰囲気になりたい」
ということを、担当美容師さんに伝えやすくする。
最後は実際の髪を見てもらいながら、担当美容師さんと一緒に髪型を決めてもらう。
そんなお客様と担当美容師さんの橋渡しができるサービスにしたいと思っています。
AIに髪型を決めてもらうのではなく、
AIを使って「自分はどうなりたいのか」を見つける。
AIが当たり前になっていくこれからだからこそ、美容師とのコミュニケーションは、むしろ今まで以上に大切になっていくのかもしれません。
次に美容室へ行くとき、
「なんとなくこんな感じ」
から、
「私はこんな感じになりたい」
へ。
そのお手伝いができればと思っています。