「YouTubeを見せない親」は正義?正解が見えない今こそ、親子で育みたい“情報との向き合い方”

「YouTubeを見せない親」は正義?正解が見えない今こそ、親子で育みたい“情報との向き合い方”

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「YouTubeを見せない親」が正義で、「ロブロックス漬けにさせてしまう親」はダメ?…子どものスマホ利用を考えるとき、見落とされがちな視点があります。もしかしたらYouTubeを「禁止」する家よりも「攻略」する家の方が、子どもの未来を広げられるかもしれません。

スマホを見ていただけ…なのに、ある人は夢を叶え、ある人は知らぬ間に傷ついていく——そんな「分かれ道」は、いったいどこにあるのでしょうか。筆者はこの問いを、13歳から読める一冊にまとめました。本の中には、スマホとの関わり方が異なる何人もの登場人物が出てきます。彼らのエピソードを追いながら、「自分ならどう使うか」を自然に考えられる構成になっています。この記事では、その本のエッセンスをお届けしながら、子どものスマホ利用について一緒に考えてみたいと思います。

スマホが子どもを惹きつける、やっかいな仕組み

子どもに初めてスマホを持たせることになったご家庭、あるいはクラス替えや進学で環境が変わり、以前にもまして「YouTubeショート」や「イタリアン・ブレインロット」にのめり込む姿をみて、不安を感じている親御さんもいるかもしれません。
世間では未成年のSNS規制をめぐる議論も盛り上がっています。しかし、制度が整うのを待っている間にも、子どもは毎日スマホに触れ、あっという間に大きくなっていきます。今目の前にある悩みを、親はどう捉えればいいでしょうか。

そもそもなぜスマホがこれほどまでに私たちを吸い寄せるのかというと、それは、企業や発信者の利益が「ユーザーをどれだけ画面に縛り付けたか」で決まる仕組み(アテンション・エコノミー)があるからです。

たとえば、次々に流れてくるショート動画。あるユーザーが1秒でも長く見られる動画の傾向がわかれば、似たようなものばかりをおすすめ表示することで、少しでも長い間、その人をスクリーンに釘付けにさせられます。そうやって、広告を表示する枠を確保したり、ユーザーの関心や行動パターンを分析し、より効果的に広告を届けられるようにすることで、企業や発信者は利益を上げています。

インスタグラムもTikTokもYouTubeも、さらにはゲームアプリまで、あらゆるアプリが「どうすればもっとあなたの時間を使わせられるか」を常に考え、通知・おすすめ・ガチャ・無限スクロールといった仕掛けを作り続けています。それによって、自分から探しに行かなくても興味のある情報が集まってきてくれるので便利な反面、様々なリスクも指摘されています。

未成年にとっては、意図せず危険なアカウントと繋がってしまうリスクもゼロではありません。アメリカの裁判で、こんな恐ろしい証拠が提出されたことがあります。成人男性と少女を互いに「フォローのおすすめ」として表示させることでユーザーエンゲージメントが向上する(相互フォローが成立し、アプリの滞在時間が増える、など)ことから、アプリ側がそのような標準設定にしていたと言うのです。その結果、性犯罪歴のある人物と少女が多くつながってしまったと指摘されています。

他にも、スマホから流れ込む情報が感情や意見を変え、偏った接触がストレス、不眠、無関心、共感力の低下につながりうるとも言われます。子どもだけでなく大人も、スマホを持つだれもが、このようなリスクと隣り合わせなのです。

スマホが“薬”になる瞬間

一方で、SNS利用率が世界トップクラスの北欧諸国が、世界幸福度ランキングで上位を占め続けているのは興味深い事実です。もともと他者とのコミュニケーションを重視する文化ということもあり、SNSが単なる「消費の場」に止まらず、「交流の場」としての機能を果たしているのではないかという専門家もいます。明確な因果関係は不明ですが、少なくともSNSを使うことで、ただちに幸福度が下がる、というわけでもなさそうです。

中には、スマホを「見るだけ」から「学ぶ手段」へと変えることで、夢をつかんだ人もいます。宮崎県出身で、英日ハーフのスケートボーダー、スカイ・ブラウン選手もその一人です。彼女には専属のコーチがいません。代わりに、YouTubeで技の動画を見ながら独学でトリックを習得してきました。「ずっとYouTubeで技を調べながら練習してきた」と本人も語っています。そうして東京・パリと2大会連続でオリンピックのメダルを手にしました。スマホで動画を「ただ見ている」ように見えても、何かを学ぼうとする意志があれば、それは夢への入口にもなりうることを教えてくれます。

他にも、次のような例があります。

・オンラインでのつながりがあったからこそ、当時の孤立や家庭内の不安を乗り越えられた
・インターネット上で得た知識をもとに、進学やダイエットを決意できた
・ゲームで身につけた「目標設定をする習慣」が、勉強でも役立った

もし、子どもがずっとスマホを見ているからといって、ただちに取り上げてしまうと、「薬」として上手に使いこなしていくための、貴重な機会を逃してしまうかもしれない。そんな「機会損失」は、親子にとって想像以上に大きいかもしれません。

利用時間より大切な「見るべきポイント」

スマホとの向き合い方を考えるためのヒントが、情報を食べ物のように考える「情報的健康」という概念です。スマホから得る情報は、その全てが心や考え方に影響を与えます。だとすれば、食べ物の栄養バランスを考えるように、偏りなく多様な情報に触れたり、今の自分の体調にあったものをスマホの中から選び取っていくことで、ヘルシーになることができるわけです。

例えば、ゲーム版のSNSと言われる「ロブロックス」というアプリを、長時間、プレイしている子どもがいたとします。最初は友達とのオンライン上での交流を楽しめていたけど、段々と、早朝や深夜の睡眠時間を削ってまでプレイしないといけなくなり、睡眠不足に悩まされるようになってしまった、というケースがよく見られます。

ここでロブロックスだけを問題視するのは、食べ物にたとえると「ある1種類のチョコレートのお菓子」だけを制限するのと同じことです。チョコレートのお菓子は禁止!と言われても、代わりにキャンディやスナック菓子、また別のチョコレートの量が増えてしまったら、総合的な栄養は偏ったままです。逆に、普段から食事に気を遣っていれば、たまにそのお菓子を食べても、大きな問題はありません。

何を、どれだけ食べるか。どんなバランスで摂取するのがいいか。こうした情報的な食習慣を、自分でコントロールできる人は、スマホを「薬」に変えられます。その視点に立てば、とあるチョコレートのお菓子を食べることだけを切り取るのはあまり意味がないように、ロブロックスの利用時間だけを問題視する必要はないわけです。

本当に見るべきなのは、何分使ったか、どのアプリを開いたかではなく、その時間のあとに、子どもが元気になっているか、どんな行動を起こしたか、です。そこに目を向けることが、スマホを「毒」にするか「薬」にするかの分かれ道になります。

例えば「スマホの中で素敵な人とつながったり、ワクワクを生み出すには、どう使うのが良いか」といった共通のテーマを設定することで、「それっていいスマホの使い方だよね!」とか、「この使い方はカロリー高めだよね」と、親子や家族同士で楽しみながら話し合うことができるようになるかもしれません。

対話のきっかけにおすすめの一冊

アメリカの心理学者・ジャクリーン・ネシ教授によると、親子でスマホについて話し合う時、親が次のような話し方をすることで、子どもが聞く耳を持つ可能性が高くなるそうです。

・スマホの「良いところ」と「だめなところ」の両方について語る
・説得力のある根拠を示す(「心配」の背景にある理由を説明する)
・子どもの視点に寄り添って、子どもが自分の意見を話せるように促す

こうした対話を実践するためのツールになれば、という思いで、スマホを持ち始める13歳前後の子どもに伝わる言葉でまとめたのが、拙著『スマホを見てただけなのに! 13歳から知っておきたい情報社会のかしこい生き抜き方』です。
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スマホを見てただけなのに、ある人は、事件に巻き込まれて大変な目に。またある人は、人間関係の悩みがすっかり晴れてハッピーに。またある人は、画面が同じ広告で埋め尽くされてちょっと嫌な気持ちに…。親も子も一緒に、自分だったらどの登場人物みたいになりたいか、ぜひ語り合ってみてください。

そしてこの本の出版をきっかけに、ありがたいことに全国での講演会や出前授業に呼んでいただく機会も増えています。そこで痛感するのは、スマホとの付き合い方に悩む子どもや保護者が想像以上に多いことです。しかもその悩みの種類や深さは、子やご家庭によって様々。「スマホの授業」と題した出前授業には一定の手応えもある一方、一度きりの授業では、それぞれの子どもや家庭が抱える個別の悩みにまでは踏み込めません。

そこから思いついたのが、「オンラインでの個別支援」という発想です。一人ひとりの親子にオンラインで伴走し、その家庭に合ったスマホやAIとの付き合い方を一緒に考える取り組みです。まずは小さく、オンラインでの個別相談や講座から、地道に始めていきたいと思います。

必要な学びを、誰かが、いち早く届けなければいけません。私もまずは手が届く範囲から、その一助になれればと思います。


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