「求人サイトのご案内です」また怪しい営業か……からの予期せぬ展開。
工場で油まみれになりながら機械のメンテナンスをしていた夕方、事務所の固定電話がけたたましく鳴り響いた。
作業の手を止めて慌てて受話器を取ると、電話の奥からやけに爽やかで丁寧な女性の声が聞こえてくる。
「お忙しいところ失礼いたします。私、求人サイトをご案内しておりますLumio(ルミオ)の〇〇と申します。代表者様でお間違いないでしょうか?」
(……また営業かよ)
俺は瞬時に声をトーンダウンさせた。
地元の求人誌に15万円を払って応募ゼロという大失敗を経験して以来、俺は「求人」と名がつく電話に対して極度の警戒心を抱いていたのだ。
「あー、今忙しいんで結構です。うち、求人出す予定ないんで」
どうせ「初期費用〇〇万円でWebに掲載しませんか?」という、いつものパターンだろう。世の中、人手不足に頭を抱える中小企業の弱みにつけ込むようなサービスが溢れている。調子のいいことばかり言って高額な契約を結ばせ、効果が出なくても一切責任を取らない。そんな苦い思いはもう懲り懲りだった。
だが、電話の相手はすんなりとは引き下がらない。
「社長様、お気持ちは大変よく分かります。ですが、現在事務スタッフさんの件でお困りではありませんか?弊社の求人サイトは、従来の掲載課金型とは仕組みが根本的に異なるんです」
「仕組みが違う?」
「はい。成果が出るかわからない掲載料として何十万円もお支払いいただく形ではありません。自社が求める条件に合った人材へピンポイントでアプローチできる仕組みになっておりまして……一度、資料だけでもご覧になりませんか?」
「ルミオ」という名前の求人サイトなど、これまで聞いたこともなかった。どうせ口上手な営業トークだろうと疑いの目は晴れない。
しかし、「掲載費用で何十万円もドブに捨てるリスクがない」というフレーズが、連日の残業で疲れ果てた俺の頭に強く引っかかった。
受話器を置いた直後は「また無駄な時間を過ごしたか」と溜息が出た。だが、この一本の電話が、我が社の暗黒時代を打ち破るキッカケになるとは、この時の俺はまだ思いもしなかったのだ。