ーこれって労災になるの?ー
上司から繰り返し厳しい叱責を受ける。
同僚から嫌がらせや中傷を受ける。
職場でセクハラを受ける。
顧客から暴言や執拗なクレームを受ける。
仕事量や責任が重く、強いストレスが続いている。
こうした職場での出来事が重なり、心や体に不調が現れることがあります。
「これも労災になるの?」
今回は、仕事による強いストレスと労災について、できるだけわかりやすく整理してみます。
① 心の病気と労災
労災というと、
「仕事中に転んで骨折した」
「機械で手をケガした」
といった事故を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、
仕事による強い心理的な負担が原因で精神障害を発病した場合も、
労災の対象となることがあります。
厚生労働省では、精神障害について労災と認定するための基準を定めています。
その中には、
・上司等からのパワーハラスメント
・同僚等からの暴行やひどいいじめ・嫌がらせ
・セクシュアルハラスメント
・顧客や取引先などからの著しい迷惑行為
・仕事内容や仕事量の大きな変化
など、さまざまな出来事が示されています。
② 「つらかった」その内容は?
精神障害の労災では、
その出来事による心理的な負担が、どの程度のものだったのか
という点も重要になります。
たとえばハラスメントやいじめのように繰り返される出来事については、
一つひとつを切り離すのではなく、
一連の出来事として評価されることがあります。
一度だけの出来事でも、その内容や状況によって評価は変わります。
そのため、
「上司に叱られたから労災」
「嫌がらせを受けたから必ず労災」
と単純に判断することはできません。
③ 労働基準監督署の出番です
精神障害の労災申請では、申請した本人の話だけで認定が決まるわけではありません。
申請後、労働基準監督署が必要な調査を行い、
出来事の内容や状況などを確認したうえで判断します。
私が労災申請の実務に携わっていたときも、精神障害の申請では、事故による
ケガとは違った難しさを感じることがありました。
本人と会社側とで出来事についての認識が異なることもあります。
そのような場合でも、申請手続きをサポートする側が、
「どちらが正しい」
「誰が悪い」
と判断するわけではありません。
最終的な労災認定の判断を行うのは、労働基準監督署です。
④ 「申請」と「認定」は別の話
ここは、とても大切なところです。
労災を申請したからといって、その時点で「労災と認められた」ということではありません。
申請後に必要な調査が行われ、その結果、労災として認定される場合もあれば認定されない場合もあります。
だからこそ、
「労災申請できるらしいから、すぐ申請しよう」
と考えるのではなく、まず自分に何が起きているのかを整理することも大切です。
⑤ ひとりで決めなくても大丈夫
精神障害の労災は、交通事故や転倒事故のように出来事が目に見えやすいもの
ばかりではありません。
だからこそ、
「こんなことでも相談していいのかな」
「労災になるのかわからない」
と思うこともあるでしょう。
自分だけで「労災になる・ならない」と決める必要はありません。
労災という制度があることを知り、自分の状況を整理したうえで、必要に応じ
て労働基準監督署などへ相談する。
それも選択肢のひとつです。
申請するかどうかを決めるのは、ご本人です。
このコラムでは、特定のケースについて労災認定される・されないという判断は行っていません。
制度を知り、次にどうするかを考えるための参考としてお読みいただければと思います。
**参考資料**
厚生労働省「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(令和5年9月1日 基発0901第2号)
厚生労働省「心理的負荷による精神障害の認定基準に係る運用上の留意点について」(令和5年9月1日)
厚生労働省「精神障害の労災認定」(令和6年10月)