仕入が上がった。時間が足りない。利益が残らない。
値上げを考えはじめる理由は、だいたいこのどれかです。
ただ、上げ幅を決める前に確かめておくことがあります。
順に書きます。
■ 1. いま、1件あたりいくら残っているか
値上げの話は、ここが出発点です。
売上から、その仕事に直接かかった費用を引きます。
・仕入、材料
・外注
・その仕事のためだけに使った経費
残った金額が、1件あたりの粗利です。
そして、これをかかった時間で割ってください。
1件2万円で、材料が5千円、かかった時間が5時間なら、
1時間あたり3千円です。
この数字を出さずに値上げ幅を決めると、
「なんとなく1割」のような決め方になります。
■ 2. 固定費は、何件で埋まるか
家賃、通信費、保険料、返済。
毎月必ず出ていく金額を足します。
それを、1件あたりの粗利で割ります。
固定費 ÷ 1件あたりの粗利 = 損益がとんとんになる件数
たとえば固定費が30万円、1件あたりの粗利が1万5千円なら、20件です。
この20件が、いまの自分の下限です。
値上げをすると、この件数は下がります。
1件あたりの粗利が2万円になれば、15件で足ります。
つまり値上げは、5件ぶんの余裕を作るという意味を持ちます。
そこまで出しておくと、迷いが減ります。
■ 3. 何割の人が離れたら、損をするか
ここが、いちばん見落とされます。
値上げをすると、一部のお客さんは離れます。
ただ、全員に残ってもらう必要はありません。
先ほどの例で言うと、20件が15件で足りるようになります。
つまり25%離れても、手元に残る金額は変わりません。
先にこの数字を出しておくと、
2、3人に断られたくらいで慌てずに済みます。
逆に、「1人でも離れたら困る」という状態なら、
値上げの前に、件数か単価の土台を作るほうが先です。
■ 4. 伝え方は、値上げ幅より効きます
同じ金額でも、伝え方で反応が変わります。
避けたいのは、この2つです。
・黙って上げる
・「原価が上がったので」とだけ言う
黙って上げると、気づいたときの印象が悪くなります。
原価の話だけだと、こちらの都合にしか聞こえません。
伝えるときは、この3つを入れてください。
・いつから変わるか(1か月前には伝える)
・いくらになるか(新しい金額をはっきり書く)
・何が変わるか、または何は変わらないか
「何が良くなるか」を1つ添えられると、いちばん通ります。
増やせるものがないなら、「これまで通りの品質を続けるため」でも構いません。
その場合も、続ける努力の中身を具体的に書いてください。
■ 5. 全部を一度に上げなくていい
やり方はいくつかあります。
・新規のお客さんから新価格にする
・既存のお客さんは3か月後から
・一番安いプランだけ据え置く
・品数や時間を調整して、実質的に単価を上げる
長く付き合っている相手ほど、猶予を置くと納得されやすいです。
ただし、据え置きを約束するときは期限を切ってください。
「当面は」と言うと、次に上げるときに余計に揉めます。
■ 6. 上げどきの見分け方
こういうときは、上げていい合図です。
・断ることが増えている
・値段を言っても、ほとんど交渉されない
・いちばん安いプランばかり選ばれている
・仕事は埋まっているのに、手元にお金が残らない
とくに最後の2つは、単価が実態に合っていないサインです。
■ 今日できること
直近の仕事を3件選んで、それぞれの粗利と、かかった時間を出してみてください。
1時間あたりいくら残っているかを見て、
それが自分の納得できる金額かどうかを確かめる。
そこから先の話は、それが出てからです。
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いくらにするか、どう伝えるか。数字と言い方の両方を一緒に組み立てます。