Excelで名簿や売上の表を整理していると、「重複の削除」というボタンを押したくなる場面が来ます。押すと確かに行は減ります。困るのは、減った後で「何が消えたのか」を確かめる手立てが残らないことです。
自分で作った12行の見本で、順番に追いかけてみます。会社名・支店・商品名・金額の4列で、目で見ると同じ会社が何度も出てくる、よくある形の表です。架空の社名で作った見本なので、お預かりしたデータの話ではありません。
結果から書くと、12行は9行になりました。減った3行のほかに、直した6か所と、あえて寄せずに候補として出した5行があります。順に見ていきます。
1. 黙って消してよかった3行
完全に同じ内容の行が3組ありました。会社名も支店も商品名も金額も同じです。この3行は片方を消しました。
ただし消して終わりにはしません。「4行目と同じ内容なので消した」という1行を、別紙の一覧に残します。表だけを渡されると、依頼した側は自分の表が何行減ったのかを後から検算できないからです。
2. 黙って直してよかった6か所
意味が変わらない直しが6か所ありました。内訳はこの3種類です。
- 半角カタカナを全角にした(ボールペン → ボールペン)……2か所
- 全角の英数字を半角にした(FAX用紙 → FAX用紙)……2か所
- 前後の空白を落とした(「 カワセ工業株式会社 」 → 「カワセ工業株式会社」)……2か所
このうち、いちばん気づきにくいのが空白です。画面で並べても、ほとんど見分けがつきません。それでも集計では別の会社として数えられます。合計が合わないときに真っ先に疑うのはここです。
しかもこの表では、1で消した3行は、どれも2の直しをした後で初めて「完全に同じ内容」になりました。直す前の12行をそのまま見比べると、完全に一致する行は1組もありません。つまり先に「重複の削除」を押していたら、3行とも残っていたことになります。
3. 消さなかった、いちばん大事な3行
会社名の欄に、こういう3行が残りました。
- 株式会社ミドリ商会/大阪/ボールペン/12,000円
- (株)ミドリ商会/大阪/ボールペン/8,000円
- ミドリ商会/大阪/封筒/2,400円
「(株)」を「株式会社」に開けば、3行とも同じ会社に見えます。寄せませんでした。理由は2つあります。
1つは、本当に別の会社である可能性が消せないからです。表の中だけを見ても、決め手がありません。
もう1つはこちらのほうが重くて、寄せた瞬間に上の2行が「同じ会社・同じ支店・同じ商品で、金額だけ違う2行」になるからです。これは値引きなのか、二重入力なのか、別の日の取引なのか。表からは決まりません。ここで機械が重複と判断して消せば、12,000円か8,000円のどちらかが、誰にも気づかれないまま売上から消えます。
なので、この3つの表記は消さずに、別紙に「同じものなら、どの表記に寄せるかご指定ください」という候補として並べます。判断は、その会社を知っている人の手元に残すという考え方です。
4. 機械が「決められません」と言ってくる、もう1組
同じ表に、こういう2行もありました。
- サクラ印刷/福岡/名刺用紙/15,600円
- さくら印刷/福岡/名刺用紙/15,600円
カタカナとひらがなです。人が見れば同じ会社だろうと思います。機械もここは候補として並べます。ただし並べるだけで、同じ会社だという判断はしません。「はし」と「ハシ」のように、かなの種別が違うだけで別の語ということが本当にあるからです。だから候補の表では、この2行にだけ「別の語ならご放念ください」という断りを添えています。
結果として、寄せずに残した候補は5行になりました。ミドリ商会の3行と、この2行です。
ここを最短で埋められるのは、機械ではなく渡すときの一言です。
「サクラ印刷とさくら印刷は同じです」
この1行があると、候補の表を見返す手間がそのまま消えます。
5. 押す前に決める3行
自分でやる場合も、誰かに頼む場合も、先にこの3つを決めておくと後戻りが減ります。
1. 何が同じなら「同じ行」とみなすか(全部の列が一致したときだけか、会社名と商品名が同じなら同じとみなすか)
2. 寄せてよい表記があるか(あるなら、どちらの書き方に寄せるか)
3. 重複を消すか、印を付けて残すか(金額が絡む表では、消さずに印だけ付けるほうが安全なことが多いです)
1が決まっていないまま「重複の削除」を押すのが、いちばんよくある事故です。Excelのボタンは、どの列を見て判断したかを後から教えてくれません。
最後に
行数が多くて手が回らないときや、どこまで機械に任せてよいかの線引きから相談したいときは、代行として引き受けています。
お渡しするのは、整えた表だけではありません。どこを何件直したかの一覧と、寄せずに残した候補の表を必ず添えます。上の3や4のように「決めなかったこと」が残るのが普通なので、そこを隠さずにお見せするためです。元の行は消さず、後から追える形でお返しします。
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