飲食店を経営しています。
値上げを試す額を1か所入れると、全メニューの増え方が並ぶExcelを作っています(記事の最後に載せています)。
仕入れ値がまた上がって、値上げを考えることが増えました。
そのたびに迷うのが、「全部のメニューを上げるか、どれかだけにするか」です。
今回は、値上げの前に私が見ている数字を、架空の例で書きます。
全品を50円上げると、月にいくら増えるか
9品だけの居酒屋だと思ってください。
全部のメニューを50円ずつ上げて、出数が今のまま変わらなかったとします。
・生ビール(中) 月900杯 × 50円 = +45,000円
・レモンサワー 月600杯 × 50円 = +30,000円
・若鶏の唐揚げ 月420皿 × 50円 = +21,000円
・枝豆 月330皿 × 50円 = +16,500円
・豚バラ串(2本) 月300皿 × 50円 = +15,000円
・フライドポテト 月260皿 × 50円 = +13,000円
・だし巻き玉子 月150皿 × 50円 = +7,500円
・刺身盛り合わせ 月110皿 × 50円 = +5,500円
・焼きおにぎり(2個)月90皿 × 50円 = +4,500円
合計で、月 +158,000円です。
増える分の6割は、3品から来ている
並べてみると、偏りがあります。
上の3品、生ビール・レモンサワー・唐揚げだけで +96,000円。
全体の60.8%です。
いちばん値段の高い刺身盛り合わせは、同じ50円でも +5,500円。
生ビールの +45,000円と比べると、ずいぶん小さい数字です。
同じ50円でも、出数の多いメニューほど効きます。
ここまでは、なんとなく想像がつく話だと思います。
値上げすると、出数は減るかもしれない
ただ、この計算には大きな仮定があります。
「値上げしても、出数が変わらない」という仮定です。
実際には、少し減るかもしれません。
では、どれくらいまでなら減っても大丈夫なのか。
私はこれを、メニューごとに出しています。
何杯まで減っても、元の利益と同じか
生ビールで計算してみます。
生ビール(中)は、売価550円、材料の原価274円。
1杯あたりの利益は276円です。
(ここでの利益は、売価から材料の原価を引いただけの数字です。人件費などは入っていません)
今の月の利益は、276円 × 900杯 = 248,400円。
50円上げると、1杯の利益は326円になります。
248,400円を326円で割ると、約762杯。
つまり、月900杯が約762杯まで減っても、月の利益は今と同じです。
割合にすると、15.3%減っても大丈夫、ということです。
同じ計算を、刺身盛り合わせでやってみます。
1皿の利益は731円。今は月110皿。
50円上げると1皿781円の利益になり、元の月の利益と同じになるのは約103皿です。
減ってもいいのは6.4%。月に7皿ほど減っただけで、値上げ前と同じになります。
生ビールは15.3%、刺身盛り合わせは6.4%。
同じ50円の値上げでも、余裕の大きさがまったく違います。
1品の利益が小さいほど、減っても耐えやすい
計算の中身は、この1行です。
減ってもいい割合 = 値上げ額 ÷(1品の利益 + 値上げ額)
ほかのメニューも出してみます。
・豚バラ串(2本) 1品の利益180円 → 21.7%
・生ビール(中) 1品の利益276円 → 15.3%
・若鶏の唐揚げ 1品の利益312円 → 13.8%
・レモンサワー 1品の利益387円 → 11.4%
・刺身盛り合わせ 1品の利益731円 → 6.4%
1品の利益が小さいメニューほど、50円の上乗せが大きな割合を占めます。
だから、出数が少し減っても、値上げ前を下回りにくい。
反対に、1品の利益が大きいメニューは、50円の上乗せが占める割合が小さくなります。
少し減っただけで、値上げ前を下回ります。
見る順番
この2つを合わせると、私が値上げを考えるときの順番はこうなります。
1. 出数が多いメニュー
同じ50円でも、月の増え方が大きい。
2. その中で、1品の利益が小さいメニュー
出数が少し減っても、値上げ前を下回りにくい。
この例では、生ビールと唐揚げがこれに当たります。
どちらも「よく出るのに、1品で残る額が小さい」メニューです。
レモンサワーも出数は多いですが、1品の利益が大きいぶん、減ったときの余裕は小さめです。
刺身盛り合わせのように、出数が少なくて1品の利益が大きいメニューは、
増える額も、減ったときの余裕も小さいので、私は後から考えます。
数字に出ないこと
ここまでは、あくまで数字の話です。
値上げの判断には、数字に出ないことの方が大きく効くこともあります。
・お店の看板で、お客さんが値段を覚えているメニュー
・近くのお店と値段を比べられやすいメニュー
・それを目当てに来店して、ほかも頼んでくれるメニュー
こうしたメニューは、計算で「上げやすい」と出ても、私は慎重に考えます。
数字は、考える順番を決めるためのものだと思っています。
最後に
「全品50円」か「どれかだけ」かで迷ったとき、
出数と1品の利益を並べるだけで、どこから考えるかが決まります。
紙と電卓でもできます。
ただ、仕入れ値が上がるたびに全メニューを計算し直すことになるので、私はExcelでやっています。
値上げを試す額を1か所入れると、全メニューの増え方が並ぶExcelを作っています。
「人気なのに儲けが薄い料理」も、出数×粗利で分かります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
※この記事の数字はすべて架空の例です。実在するお店の数字ではありません。