子どもに「もう部活を辞めたい」と言われたとき

  子どもに「もう部活を辞めたい」と言われたとき

記事
コラム
「お母さん、もう部活を辞めたい」
ある日、子どもから突然そう言われたら、あなたはどんな言葉を返すでしょうか。
「せっかくここまで頑張ってきたのに」
「もう少し続けてみたら?」
「途中で辞めたら、後悔するんじゃない?」
子どものことを大切に思っているからこそ、こんな言葉が出てくるのかもしれません。これまで頑張ってきた姿を見てきたお母さんなら、簡単に辞めてほしくないと思うでしょう。

途中で投げ出すことを覚えてほしくない。
もう少し頑張れば、乗り越えられるかもしれない。
将来のためにも、今は続けた方がよいのではないか。
どれも、お母さんなりの愛情や心配から生まれた考えです。
でも、ここで一つ、立ち止まって考えてみてほしいのです。
お母さんは、子どもの気持ちを聴く前に、自分の考えを伝えていませんか?

子どもの「辞めたい」の奥にあるもの
子どもが部活を辞めたいと思う理由は、一人ひとり違います。

友達との関係に悩んでいるのかもしれません。
一生懸命練習しても結果が出ず、自信をなくしているのかもしれません。
自分には合わないと感じているのかもしれません。
あるいは、ほかに挑戦したいことが見つかったのかもしれません。

もちろん、心身の疲れや、周囲には言いにくい事情が隠れていることもあります。同じ「辞めたい」という言葉でも、その背景にある思いや事情は違います。ところが、親が自分の価値観で理由を判断してしまうと、子どもの本当の気持ちを知る機会を失ってしまいます。

例えば、
「そんなことで辞めるの?」
「逃げてばかりではだめでしょう」
「みんな頑張っているんだから」

こうした言葉は、親にとっては励ましや助言のつもりでも、子どもには「自分の気持ちをわかってもらえない」「親の考えに従わなければならない」と伝わることがあります。

自分の気持ちをわかってもらえない。
何を言っても反対される。
お母さんの考えに合わせなければいけない。
そんな思いが重なると、子どもは次第に自分の気持ちを話さなくなることがあります。

 「子どものため」が、親の価値観の押しつけになっていませんか?
ここは、少し厳しい問いかもしれません。

お母さん自身のこれまでを振り返ってみてください。
子どもが何かを選ぼうとしたとき、最後まで話を聴く前に、よかれと思って答えを出していませんでしたか?

子どもが自分の考えを話したとき、「でもね」「それは違うよ」と、すぐに訂正していませんでしたか?
子どもが迷っているとき、本人が考える時間を待たずに、親の経験や正しさで結論を出していませんでしたか?

もちろん、親には親の経験があります。
子どもが困らないように、失敗しないようにと願う気持ちもあります。
しかし、親の経験や価値観が、そのまま子どもにとっての正解になるわけではありません。

親がよいと思う道と、子どもが歩みたい道は違うことがあります。
そして、親が先回りして答えを出し続けると、子どもが自分で考え、選び、その結果を受け止めていく機会まで少なくしてしまうことがあります。

子どもを大切にすることと、子どもの考えを親の考えに合わせることは、同じではありません。
子どもは、親の考えを実現するために生きているのではありません。
一人の人間として、自分の気持ちや考えを持ち、自分の人生をつくっていく存在です。
子どもの意見を尊重するために、親にできること
では、「もう部活を辞めたい」と言われたとき、どのように関わればよいのでしょうか。まずは、すぐに賛成したり反対したりせず、子どもの言葉を受け止めてみてください。

例えば、
「そうなんだね。辞めたいと思っているんだね」
「そう思うようになったのには、何か理由があるのかな?」
「あなたは、これからどうしたいと考えているの?」
「今は、お母さんに話を聞いてほしい?それとも、一緒に考えてほしい?」
こんなふうに尋ねてみます。

大切なのは、親が望む答えを引き出すために質問するのではなく、子ども自身の考えを知るために聴くことです。
子どもが話している途中で、親の意見を挟まない。
すぐに解決策を示さない。
親の期待する答えに誘導しない。

そして、子どもが考えを話してくれたら、
「あなたは、そんなふうに考えていたんだね」
と、その考えを受け止めてみてください。

子どもの意見に賛成できなくても、まず理解しようとすることはできます。
自分の考えを聴いてもらえたという経験は、子どもが安心して自分の思いを話すための土台になります。
尊重することは、何でも受け入れることではありません
子どもの意見を尊重することは、子どもの言うとおりにすることでも、親が自分の気持ちを我慢することでもありません。

親には親の考えがあります。大切なのは、親の考えを伝える前に、まず子どもの考えを理解しようとすること。そして、親子がお互いの考えを話し合える関係をつくることです。だから、お母さんが心配なら、心配だと伝えてよいのです。

「お母さんは、これまで頑張ってきたことを知っているから、辞めると聞いて少し驚いているよ」
「あなたの考えはわかったよ。お母さんが心配していることも聞いてほしいな」
このように、親の気持ちも率直に伝えてよいのです。

ただし、親の心配を理由に、子どもの考えを押さえ込まないこと。
親と子どもは、考えが違っていてもよいのです。
お互いの気持ちを伝え、相手の考えにも耳を傾けながら、一緒に考えていくことが大切です。

もちろん、心身の安全に関わる問題や、いじめ、過度な負担などがある場合は、本人の気持ちを聴くことと同時に、安全を守るための対応や周囲への相談が必要です。

子どもを信じることは、子どもの人生を尊重すること
思春期の子どもは、親から少しずつ自立し、自分の考えで物事を決めようとしています。親から見れば、まだ未熟で、心配になることもあるでしょう。

失敗してほしくない。
傷ついてほしくない。
できれば遠回りをせずに進んでほしい。
その気持ちはよくわかります。
けれど、子どもが自分で考え、選び、時には迷いながら進んでいく経験も、成長には大切です。

親がすべての答えを用意するのではなく、子どもが自分の答えを見つけていく過程を支える。
そのためには、親自身も「自分の考えが正しいとは限らない」と立ち止まることが必要なのかもしれません。

子どもの考えを尊重すること。
そして、お母さん自身の気持ちも大切にすること。

「私は、子どもの話を最後まで聴く前に、答えを決めていなかっただろうか」
「子どもの選択を、私の経験や価値観だけで判断していなかっただろうか」

その両方を大切にしながら、親子で話し合える関係を育てていきませんか。
子どもの「どうして?」が「そうだったんだ!」に変わる。
そんな親子の信頼関係を、一緒に育てていきたいと思っています。

親子・家族関係修復カウンセラー
河野遥香


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