▼「自分のため」と思っていることが、本当に自分のためになっているのか?
以前、電話相談で、少し印象に残っているケースがありました。
相談者さんは、ある専門職として仕事をしている女性でした。
お悩みの内容は、彼女の家で同居している彼氏から愛されたい、というものでした。
しかし、彼は彼女の気持ちとは正反対の態度を取ることが多いようでした。
彼女がひどい病気にかかったときにも、ほとんど看病をしてくれない。
二人の関係をもっと良いものにしたいと彼女が話をしても、前向きに話し合おうとはせず、その場を離れてしまう。
ところが、彼が関係を解消するのかと思えば、しばらくすると、また彼女の家に戻ってくる。
そんな関係だったそうです。
その話を聞いていて、紀真が不思議に思ったのは、
「なぜ彼女は、そこまでその男性にこだわるのだろう?」
ということでした。
▼「彼に愛されたい」という気持ち
いろいろと話を聞いていくと、彼女は以前に結婚していた経験があり、前の夫との関係は非常に良かったそうです。
しかし、家庭内の親族関係がうまくいかず、それが原因となって離婚したということでした。
では、今回の彼女の悩みは何なのか。
話を聞いていくと、
「とにかく、相手から愛されない状態が我慢できない」
「彼に愛されたい」
という気持ちが非常に強いようでした。
さらに話を進めていくと、彼女自身から、こんな言葉が出てきました。
「本当は、相手に愛されることばかりを考えて行動するのではなく、自分自身をもっと大切にする生き方をしたい」
そして、
「これからは、自分の仕事にももっと真剣に取り組みたい」
というのです。
紀真は、その言葉を聞いて、
「それなら、自分自身の人生を変えるために何かできることはないだろうか」
と考えました。
▼彼女のために、ある提案をした
実は紀真には、以前から付き合いのある、皆さんも一度は名前を聞いたことがあるかもしれない、著名な人材育成・研修関係の仕事をしている友人がいました。
そこで、その友人が主催している勉強会を、彼女の住んでいる地域でも開催できないか、紀真から相談してみることにしました。
もちろん、紀真としても、友人だからといって、その仕事に簡単に口を出せるわけではありません。
それでも、
「彼女が本当に自分の人生を変えたいと思っているのなら、協力したい」
そう考えました。
そして彼女に、
「もし実現できるなら、頑張ってみる?」
と本人の意思を確認しました。
すると彼女は、
「ぜひ、やりたいです」
と答えました。
そこで紀真から友人に事情を説明し、相談してみました。
友人も快く協力してくれることになりました。
ただし、
「まだどんな人物なのか分からないので、いきなり本人と直接連絡を取るのは避けたい。最初のうちは紀真さんが間に入ってほしい」
という条件でした。
紀真も、それならばと了承しました。
ところが、その後まもなく、彼女から連絡がありました。
「今度、友人のいる地域に行く予定があるので、そのときに会いたい」
というのです。
しかし、たまたまそのタイミングでは予定が合わず、会うことはできませんでした。
ところが、その後も彼女から、立て続けに会うためのアポイントを取ろうとする連絡が入ってくるようになりました。
このあたりから、紀真の中に少しずつ違和感が生まれてきました。
▼「いくら払えば、会わせてもらえますか?」
そこで、少し言いにくいことではありましたが、彼女に率直な気持ちを伝えることにしました。
「お金の話をするのは気が引けるけれど、紀真もボランティアで仲介しているわけではありません。今回のことにかかる紀真の時間や労力についても、少し考えてほしい。
そして、まず良い関係を作らなければならない相手は、その友人ではなく、今回間に入っている紀真なのではないでしょうか」
そんな趣旨を伝えました。
すると、彼女から返ってきた答えは、
「実際に会うことができたら、お金を払おうと思っていました。いくら払えば、その方に会わせてもらえますか?」
というものでした。
これには、紀真も正直、複雑な気持ちになりました。
▼彼女の「本当の目的」が見えてきた
最初に話を聞いたときには、
「彼氏に依存するのではなく、自分自身の人生を豊かにしたい」
という彼女の思いに協力するつもりでした。
ところが、話を整理していくうちに、どうもそれだけではない、彼女の内心が見えてきました。
実は、彼氏も彼女と同じような仕事をしていました。
そして、彼自身もなかなか仕事が軌道に乗らず、彼女はそのことを気にしていたようでした。
彼女の中には、
「今回のことがうまくいけば、自分自身の成長というより、彼の大きな仕事につながり、私を見直してくれるのではないか」
という気持ちがあったようです。
つまり、表面上は、
「自分自身の人生を変えたい」
という話だったのですが、その奥には、
「彼に振り向いてもらいたい」
という思いがあったのです。
結局のところ、彼女が自分自身のために始めようとしていたことが、いつの間にか、
「彼に愛されるための行動」
に変わっていたのです。
▼これは「心の癖」なのかもしれない
以前、このブログでも「心の癖」について触れたかもしれません。
人には、自分ではなかなか気づきにくい考え方や行動のパターンがあります。
それは、いつも同じ形で現れるとは限りません。
「自分のために頑張りたい」
「自分の人生を良くしたい」
「新しいことを始めたい」
と思っていても、その気持ちを少し深く掘り下げてみると、
「
誰かに認めてもらいたい」
「誰かに愛してもらいたい」
「誰かを振り向かせたい」
という思いが隠れていることがあります。
もちろん、誰かに愛されたい、認めてもらいたいと思うこと自体が悪いわけではありません。
人間なら、誰にでもそうした気持ちはあるでしょう。
問題は、その気持ちに気づかないまま、自分の人生の選択をしてしまうことなのだと思います。
▼「自分の願望に従うこと」は、本当に自分のためなのか?
ここで、もう一つ考えてみたいことがあります。
それは、
「自分が望んでいることなら、それに従うことが本当に自分のためになるのだろうか?」
ということです。
「彼に愛されたい」
「彼に振り向いてほしい」
という願望がある。
だから、その願望をかなえるために行動する。
一見すると、自分の気持ちに正直に生きているようにも見えます。
しかし、その行動によって、自分自身を大切にできなくなったり、相手の反応に一喜一憂したり、自分の人生よりも相手の気持ちを優先するようになったりするのであれば、本当にそれは「自分のための行動」なのでしょうか。
「自分が望んでいること」と「自分のためになること」は、必ずしも同じではない。
私は、このことを今回の相談から改めて考えさせられました。
だからこそ、自分が何かを選択するときには、
「私は本当にこれをしたいのだろうか?」
だけではなく、
「なぜ、私はこれをしたいのだろう?」
と、一度立ち止まって考えてみることも大切なのではないでしょうか。
その「なぜ?」をたどっていくと、自分では気づいていなかった「心の癖」が見えてくることがあります。
そして、その心の癖に気づくことができれば、
「誰かに愛されるための人生」ではなく、
「自分自身を大切にする人生」
について、改めて考えるきっかけになるのかもしれません。
もし、今あなた自身も、
「自分では分かっているつもりだけれど、なぜか同じことで悩んでしまう」
「自分のためにしているはずなのに、苦しくなってしまう」
そんなことがあるのであれば、一度、自分の気持ちをゆっくりと言葉にしてみてはいかがでしょうか。
▼もし良ければ、紀真の電話相談やチャット相談をご利用下さい。
今の気持ちを言葉にすることで、頭の中で絡まっていた思いや、自分では気づきにくかった「心の癖」を整理するきっかけになれば幸いです。
※なお、このブログで紹介している事例は実際の相談をもとにしたものですが、個人が特定されることや、個人情報が漏えいすることのないよう、一部の内容を変更・一般化しています。あらかじめご了承ください。