デザインを知ると、毎日が少しだけ豊かになるーー第9回 高層建築から始まった新しいデザイン「シカゴ派とサリヴァン」

デザインを知ると、毎日が少しだけ豊かになるーー第9回 高層建築から始まった新しいデザイン「シカゴ派とサリヴァン」

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第9回 高層建築から始まった新しいデザイン「シカゴ派とサリヴァン」

19世紀後半、アメリカのシカゴは急速な発展を遂げていました。重工業や製鉄業が成長し、1900年前後には人口約170万人を抱える大都市へと変貌していきます。

人口が増え、限られた土地を有効に使う必要が生まれると、建物は横ではなく上へと伸びていきました。鉄骨構造などの新しい建築技術も発達し、シカゴには次々と高層建築が建てられるようになります。

こうした新しい都市の姿とともに生まれたのが、近代建築の重要な流れの一つである「シカゴ派」です。

新しい時代には、新しい建築を

シカゴ派を代表する建築家の一人が、ルイス・ヘンリー・サリヴァンです。

建築の世界では長い間、過去の様式を参考にした装飾が使われていました。しかし、新しい技術によって高層建築がつくられる時代になれば、その建物にふさわしい新しいデザインも必要になります。

サリヴァンは、建物の形はその目的や機能から生まれるべきだと考えました。彼の思想を象徴する言葉として知られているのが、「形態は機能に従う(Form follows function)」です。

見た目を先に考えるのではなく、「何のために使うのか」を考え、そこから形を導き出す。この考え方は、その後の建築だけでなく、プロダクトデザインをはじめとする幅広い分野に大きな影響を与えていきます。

装飾を捨てたわけではなかった

「形態は機能に従う」と聞くと、サリヴァンは装飾を否定した建築家のように思えるかもしれません。しかし、実際の作品を見ると、植物を思わせる繊細で美しい装飾が数多く使われています。

ここがサリヴァンの面白いところです。建築全体は合理的に構成しながら、必要な場所には豊かな装飾を取り入れる。機能と美しさのどちらかを捨てるのではなく、両方を新しい建築の中で成立させようとしていたのです。

この考え方は、「機能的であること」と「美しいこと」は決して対立するものではない、というデザインの本質にもつながっています。

フランク・ロイド・ライトへ受け継がれた思想

サリヴァンのもとで働き、大きな影響を受けた人物がフランク・ロイド・ライトです。後に世界を代表する建築家となるライトは、サリヴァンを敬意を込めて「Lieber Meister(親愛なる師)」と呼びました。

その後、ライトは独立し、独自の建築思想を発展させていきます。建物だけを設計するのではなく、家具や照明、窓、室内装飾なども含め、住宅全体を一つの作品として考えました。

建築とインテリア、家具、そして人々の暮らし。それらを別々に考えるのではなく、一つの世界としてデザインする。この考え方は、現在の「トータルデザイン」にも通じています。

都市の変化がデザインを変える

シカゴで新しい建築が生まれた背景には、急速な都市化と技術革新がありました。つまり、シカゴ派のデザインは、単なる流行から生まれたものではありません。

社会が変わり、技術が変わり、人々の暮らしが変われば、求められるデザインも変わります。

これは現代でも同じです。スマートフォンが登場すれば、それにふさわしいインターフェースが生まれ、働き方が変われば、オフィスや家具のあり方も変わります。デザインはいつの時代も、社会の変化とともに生まれてきたのです。

おわりに

シカゴの高層建築から生まれた新しい考え方は、サリヴァンからフランク・ロイド・ライトへ、そして20世紀のモダニズムへとつながっていきました。

「何のためにつくるのか。」

デザインを考えるとき、この単純な問いはとても重要です。形を考える前に、まず目的を考える。100年以上前にサリヴァンが示した考え方は、現在のデザインにも通じる大切な視点なのです。

【参考資料】
シカゴ派とサリヴァンの図案や作品画像を含む、より詳しい参考資料については、私が別途まとめている記事でもご紹介しています。
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