税理士試験は、5科目をまとめて受けなければならない試験ではありません。
1科目ずつ合格を積み重ねていくことができ、しかも合格した科目には原則として有効期限がないという特徴があります。
仕事や育児と両立しながら取り組みやすい反面、長期戦になりやすい試験でもあります。
ここでは、2026年時点の制度と、学習計画を立てる際に誤解しやすいポイントを整理していきます。
必須2科目と、選択する税法3科目
試験科目は、会計科目である簿記論・財務諸表論の2科目と、税法科目3科目を合わせた合計5科目で構成されています。
税法科目は、
・所得税法
・法人税法
・相続税法
・消費税法または酒税法
・国税徴収法
・住民税または事業税
・固定資産税
の中から選択します。
ここで注意したいのが、所得税法か法人税法のどちらか一方は必ず選ばなければならないという点です。
さらに、消費税法と酒税法、住民税と事業税は、それぞれ同時に選択することができません。
一見自由に選べるようでいて、実際には組み合わせにルールがあるのです。
受験資格は2023年度から緩和されている
簿記論と財務諸表論については、2023年度の第73回試験から受験資格の制限が撤廃され、誰でも受験できるようになりました。
一方、税法科目には引き続き受験資格が設けられていますが、学識要件は「法律学または経済学」から「社会科学に属する科目」へと範囲が広がっています。
大学等で社会科学に属する科目を1科目以上履修して卒業した人、一定の単位を取得した大学3年次以上の在学生、日商簿記1級合格者、会計に関する実務に2年以上従事した人など、該当するルートは複数あります。
私は、当時簿記1級を取得したので、そこから税理士試験を目指すというルートを取ろうとしていました。
(結果的には公認会計士試験の勉強を始めてしまったので、実際には資格試験を受けてはいませんが…)
科目名だけで自己判断するのではなく、成績証明書の内容を国税庁が示す例示と照らし合わせて確認するのが安全です。
合格率は科目ごとに年によって大きく変動する
2025年度の科目別合格率を見ると、
簿記論11.1%
財務諸表論31.9%
法人税法13.5%
所得税法13.0%
相続税法13.8%
消費税法10.1%
となっています。
全11科目の延べ受験者数に対する合格率は17.8%でした。
注意したいのは、前年度は財務諸表論の合格率が8.0%だった点です。
つまり、単年度の数字だけを見て「この科目は簡単だ」と判断するのは危険だということです。
合格率は、その年の受験者層や出題との相性、採点結果によって変動します。科目を選ぶ際は、直近1年の合格率よりも、自分の学習量、実務とのつながり、受験できる曜日、得意分野といった要素で判断したほうが、結果的に安定しやすいでしょう。
「5科目合格までの平均年数」を示す公式統計は存在しない
「税理士試験は平均何年かかるのか」と検索すると、3〜5年、5〜10年など、さまざまな数字が出てきます。
しかし国税庁は、5科目に到達した人一人ひとりについて、学習を始めてからの平均年数を公表しているわけではありません。
ですから、どこかで見た年数を公的な平均値として扱うのは適切ではないのです。
実際には、毎年1科目ずつ合格を重ねて5年で終える人もいれば、一度に複数科目に合格して期間を短縮する人、仕事や家庭の事情で学習を中断する人、大学院の研究認定による科目免除を組み合わせる人までさまざまです。
必要な年数を左右するのは、受験する科目数そのものよりも、「毎年、合格圏内までどれだけの科目を仕上げられるか」なのです。
学習計画は1年ごとに立て直す
初年度に簿記論と財務諸表論の2科目を同時に学ぶのは王道の進め方ですが、仕事をしながら週10〜15時間程度しか学習時間を確保できない人が無理に2科目を抱えると、どちらも中途半端に終わってしまうことがあります。
まずは1週間のうちで自由に使える時間を書き出し、そこに講義の受講、復習、計算演習、理論暗記をどう配分するか当てはめてみましょう。
科目合格制の強みは、そのときどきの生活に合わせて学習のペースを調整できることです。
ただしその一方で、すでに合格した科目があるからこそ、途中でやめにくくなるという側面もあります。
毎年8月頃に「このまま続ける条件」「科目数を減らす条件」「大学院を検討する条件」を見直しておくと、惰性で続けてしまうことを防げます。
合格後には実務経験と登録が必要になる
試験で5科目すべてに合格しただけでは、すぐに税理士として業務を始められるわけではありません。
試験合格者などが税理士登録をするには、原則として租税または会計に関する実務経験が通算2年以上必要です。
登録を終えて初めて、税務代理、税務書類の作成、税務相談といった税理士業務を行えるようになります。
「5科目をできるだけ早く取り切る」ことだけを目標にするのではなく、将来どんな顧客に、どのような形で関わっていきたいのかも合わせて考えてみてください。
そうすることで、科目選択と勤務先選びの方向性がそろいやすくなります。