民泊を始めるとき、私が一番気になっていたのは近隣の方のことでした。
ニュースでは、民泊の騒音やゴミ問題が取り上げられることもあります。
「近所に民泊ができる」と聞いて、不安に思う方がいるのは当然です。
だから私は、営業を始める前に近隣のお宅へ一軒ずつご挨拶に伺いました。
当時はまだ名刺がありませんでした。
メモ用紙に自分の名前と電話番号、メールアドレスを書き、「何か気になることがあれば、いつでもご連絡ください」と添えて、お菓子と一緒にお渡ししました。
「これから民泊を始めます。ご迷惑をおかけすることもあるかもしれませんが、何かあれば遠慮なくご連絡ください。」
そんな言葉を添えながら回ったことを覚えています。
「一番心配なのはゴミです」
もちろん、すべての方が最初から安心してくださったわけではありません。
「一番心配なのはゴミです。」
そう率直に話してくださった方もいました。
その言葉を聞いて、「大丈夫です」と伝えるだけでは足りないと思いました。
そこで、ゲストが道路脇にゴミを置くことがないよう、車庫には大きな蓋付きのゴミ置き場を設置しました。
民泊では、運営者が当たり前だと思っていることでも、近隣の方から見ると不安になることがあります。
だからこそ、その声を聞いて、できることは形にしていくことを大切にしています。
真夏にいただいた、一杯の麦茶
その後、家具や家電が次々と届き、毎日のように段ボールを運び込む日々が始まりました。
真夏の暑い日、大きな段ボールを何箱も運んでいると、向かいに住むご夫婦が声をかけてくださいました。
「暑いでしょう。お茶でも飲んで休みなさい。」
家に招いていただき、冷たい麦茶をごちそうになりました。
民泊を始めることをお話しすると、ご主人がこんな言葉をかけてくださいました。
「最近は空き家が増えてきたからね。この地域が少しでも盛り上がってくれたらうれしい。」
その言葉が、とても印象に残っています。
奥様は趣味で作られているレース編みの小物までたくさんくださいました。
民泊というと、「近所の人は反対している」というイメージを持たれることがあります。
もちろん、不安を感じる方もいます。
でも、実際に顔を合わせて話をすると、「地域が元気になるなら応援したい」と考えてくださる方もいることを知りました。
朝、監視カメラを開いたら警察が映っていました
それからしばらくして、今でも忘れられない出来事がありました。
ある朝、たまたま監視カメラを開くと、画面には警察が映っていました。
寝起きでしたが、一瞬で目が覚めました。
確認すると、宿泊していたゲストが近隣の方の駐車場へ車を停めてしまい、警察が来ていたのです。
とにかくお詫びに行かなければと思い、「きっと隣のお宅だ」と思い込んで虎屋の羊羹を持って伺いました。
ところが留守だったため、お詫びの手紙と一緒に羊羹を置いて帰りました。
その後、「うちではありませんよ」とご連絡をいただきました。
さすがに「羊羹を返してください」とお願いすることもできず、「よろしければ召し上がってください」とお伝えしました。
本当にご迷惑をおかけしたお宅が分かったあと、翌朝、旭川のイオンへ向かい、GODIVAのクッキーを買って改めてお詫びに伺いました。
今では笑い話として話せますが、当時は本当に焦りました。
地域との信頼も、民泊運営の一部
この出来事があってから、民泊は宿泊施設を管理する仕事であると同時に、地域との信頼関係を築いていく仕事でもあるのだと、改めて感じました。
人が利用する以上、トラブルを100%なくすことはできません。
だからこそ、何かあったときにすぐ状況を把握し、誠実に対応すること。
そして、普段から近隣の方と顔の見える関係を築いておくこと。
それが、長く民泊を続けるためには欠かせないことだと思っています。
近隣の方にとって一番不安なのは、「民泊があること」ではなく、「誰が運営しているのか分からないこと」です。
一度お会いして話をすると、「何かあればあの人に連絡すればいい」と思っていただけます。
その安心感は、運営者が思っている以上に大きいものです。
レビューや稼働率は数字で見えます。
でも、地域の方との信頼関係は数字では測れません。
民泊を始めた頃、ご主人が話してくださった言葉があります。
「最近は空き家が増えてきたからね。この地域が少しでも盛り上がってくれたらうれしい。」
この言葉を、私は今でも時々思い出します。
あの言葉に恥じない運営を、これからも続けていきたいと思っています。