「毎週やらなきゃいけない書類があるけれど、毎回中身を考えるのがつらい」
そういう業務をAIに任せる設計をしています。今回は実際に自分の事業で動かしている事例を、進め方がわかる形で書きます。ご依頼を検討中の方は「頼んだらこう進むのか」という目安にしてください。
■ もとの困りごと
自動車運転代行業では、法令で従事者への指導と、その記録を帳簿に残すことが求められています。やらない選択肢がありません。
つらいのは、指導そのものではなく「毎週ネタが尽きること」でした。飲酒運転はダメ、安全運転を、お客様には丁寧に——3週目で言うことがなくなります。それでも記録簿の実施内容欄は毎週埋めなければいけない。先月と同じことを書けば、その帳簿は「形だけやったことにした記録」になります。
■ 最初にやったこと:作る前に6つ決めた
ここが仕事の本体です。設計より先に、業務の実態を聞かないと決まらないことがありました。
1. 指導項目の見出しは固定するか、毎回変えるか
2. ポスターは指導の当日までに手元にあればよいか(自動生成の時刻との兼ね合い)
3. 乗務員が氏名欄の枠数を超えるとき、どう扱うか
4. 名簿はどこに入力するか(入力元が2か所あると必ず食い違う)
5. 支払いは現金のみか(実態にない指導内容を帳簿に載せないため)
6. 自動実行をどの方式にするか
このうち3番は「毎週4人ずつローテーション」を検討して却下しました。ローテーションだと特定の方が数週間だけ指導を受けていない期間ができ、その最中に事故が起きたら直近の教育記録がない状態になるからです。帳簿として意味を失います。
こうした判断は、業務の実態を知っている方にしか答えられません。逆に言えば、ここに答えていただければ、あとの設計と実装はこちらの仕事です。
■ 設計:「ネタが尽きる」を在庫の問題として解いた
・指導トピックを101件用意する(法令遵守・飲酒運転根絶・安全運転・接遇・事故対応・点検・健康管理・季節ものなど11分野)
・毎週その中から6件を選ぶ
・直近13週(3か月)に使ったものは候補から機械的に外す
・法令に基づく教育事項は四半期に一度必ず巡回させる
・凍結路面や台風などの季節ネタは、その月にしか出ないようにする
1週6件・13週で78件。101件あれば余裕は23件です。ネタ切れは「頑張って考える」問題ではなく「在庫を切らさない」問題に変わりました。
指導用のA4ポスターも同時に生成しています。「キャッチ/なぜ危ないか/こうする3項目」の3ブロック固定。モノクロ印刷で読めるよう色は1色だけ、改行位置もこちらで指定しています。事務所で刷って貼る紙なので、そこまでやらないと現場で使われません。
■ 納品前に52週ぶん回して確かめた
・13週以内の重複:0件
・6件セットが過去と完全一致:0件
・季節外れのトピックが出た回数:0件
この過程で穴が1つ見つかりました。13週の重複はゼロなのに、「6件の顔ぶれが丸ごと過去のある週と同じ」になる回が52週中4件出たのです。同じ記録簿が二度出るのは帳簿として望ましくないので、過去の全組み合わせと照合して1件差し替える処理を追加しました。
A4縦1ページに収まるかも、最悪ケース(文字数の多い6件×最大人数)でPDFにして確認しています。「たぶん収まる」で納品すると、収まらなかった週にだけ現場が困ります。
■ 結果:人がやることは印刷と押印だけになった
日曜の指導では、前の週に出来ているポスターを使います。日曜の深夜に、その日の記録簿と翌週分のポスターが自動で出来ます。人が確認して印刷し、確認印を押して保管する。ネタを考える時間はゼロになりました。
■ 正直に書いておくと、作る途中で1回ファイルを壊しました
複数ファイルの文字列を一括置換したときに、想定外の挙動で1文字単位の置換が走り、3つのファイルが壊れました。差分を追って全て復旧し、「一括置換は禁止・1ファイルずつ行う」というルールをプロジェクトの規約に書き足しています。
AIに任せれば事故が起きないわけではありません。起きた事故を検出して、ルールに変えられるかどうかが差になると考えています。
■ ご自身の業務が同じ形か、3つで判定できます
① 決まった周期で必ず発生する(毎週・毎月・四半期ごと)
② 出す紙の形式が決まっている(様式・テンプレートがある)
③ 中身だけ毎回変えなければいけない(同じ内容の使い回しが許されない)
3つ揃っているなら、同じやり方が効きます。安全衛生の教育記録、避難訓練の記録、店舗の衛生チェック、朝礼のネタ、社内報——だいたい同じ構造です。
逆に、周期が不定で様式もなく毎回判断が要る業務は、無理に自動化しないほうが速いです。この見極めもお手伝いします。
■ ご相談について
「うちのこの作業、任せられますか?」という購入前のご相談だけでも歓迎です。お受けできない場合は、理由を添えて正直にお伝えします。
※本文に登場する事業者名・従事者名は伏せています。
※法令上の指導義務や帳簿の備付けは事業形態によって求められる内容が異なります。実際の運用は所轄の行政庁または行政書士等にご確認ください。