両手いっぱいの金貨を抱えて、微動だにせず座っている人を見かけたら、あなたはどんな言葉を思い浮かべますか。こんばんは、月詠ソラです。今夜開くのは金貨のスート5枚目、「金貨の4」です。38弾「金貨の9」・42弾「金貨の8」・46弾「金貨の2」・47弾「金貨の3」に続く1枚で、これで金貨も他のスートに並びます。
もしあなたが、
・「金貨の4=ケチ・独占欲・強欲」と聞いて、あの人は自分のことしか考えていないのではと不安になっている
・気持ちを聞いても曖昧にはぐらかされるばかりで、独り占めしたいくせに差し出してはくれないと感じている
・せっかく距離が縮まりかけているのに、あの人がそこで急に頑ななまでに動かなくなる瞬間があって戸惑っている
・「執着しているなら、もっと歩み寄ってくれてもいいはずなのに」と、矛盾しているように見える態度に困惑している
このどれかに心当たりがあるなら、今夜はこの絵柄を、順を追って見ていきましょう。
■「金貨の4」は恋愛占いで「ケチ・独占欲・強欲」と誤解されやすいカードです
タロットの「金貨の4」は、玉冠をかぶった人物が石造りの台座に腰掛けている絵柄です。両腕で金貨を一枚しっかり胸に抱え込み、頭の上にももう一枚を乗せてバランスを取り、さらに両足の裏でそれぞれ一枚ずつ金貨を踏みしめています。表情は硬く、視線はまっすぐ前だけを向いていて、背後に小さく描かれた街には顔を向けていません。四枚の金貨を体じゅうで固めるように抱え込んだ姿から、恋愛占いでは「これが出たらケチで独占欲が強い」「執着して絶対に手放そうとしない、強欲の象徴」と、閉じた心そのものを言い当てるカードとして読まれがちです。ただ、四枚の金貨がそれぞれどう配置されているかを一枚ずつ数えてみると、少し違う景色が見えてきます。
■「金貨の4」が伝えているのは、独占欲でも強欲でもありません
よく見ると、この人物はどの金貨にも手を伸ばしている最中ではありません。四枚ともすでに体のどこかに収まっていて、これから新しく何かを掴みに行く動作は描かれていないのです。それどころか、頭の上の一枚はバランスを取らなければ落ちてしまう不安定な位置にあります。つまりこの静止は、もっと欲しがって握りしめている強欲な姿ではなく、いますでに抱えているものを落とさないための緊張そのものです。少しでも姿勢を崩せば、頭の金貨も、胸の金貨も、足元の金貨さえも崩れてしまうかもしれない。だから動けないのであって、動きたくないのではありません。踏み込んだ分だけ、いまの心地よさごと失うかもしれない。そんな恐れが先に立って、体が言うことを聞かなくなっているだけかもしれません。あの人の頑なさにも、これと近い硬さが視えることがあります。街のほうへ顔を向けていないのも、拒絶しているというより、視線をそちらへ動かす余裕そのものがない、というくらいの意味かもしれません。
■ 金貨の4が示す、二つの色
このカードを鑑定していると、次の2色が重なって視えてくることがよくあります(どちらか一方だけとは限りません)。
錆鼠(さびねずみ)が、その背筋の硬さを覆っているとき
灰みがかった、少し赤茶けた鼠色です。素鼠の「二人の外にいる第三者の視線そのものの重み」とも、藍鼠の「思い込みの重さ」とも違って、錆鼠は他者の視線でも思い込みでもありません。いま両手にあるものを落とさないよう、本人の身体そのものに生じている緊張、その硬さを表す色です。
紅梅色(こうばいいろ)が、抱え込んだ胸の内で保たれているとき
少しくすんだ、やわらかい紅色です。山吹や支子色の「まだ確信に至らない淡い期待」とも、紅や臙脂色の「強く濃い執着や未練」とも違って、紅梅色は未来への期待でも過去への未練でもありません。すでに手にしている温かさを、失うのが怖くて力いっぱい抱え込んでいる、その温かさそのものを表す色です。
■ 実際の鑑定で視てきたパターン
実際にそうした緊張を抱えたまま鑑定にいらっしゃる方の言葉を借りるなら、「せっかく良い雰囲気なのに、自分から動いていまの距離感を壊してしまうのが怖くて、結局その場から一歩も動けないまま同じ関係を続けている」というものになるかもしれません。金貨の9のように満ち足りて味わう静止でも、金貨の8のように没頭して周りが見えなくなる静止でもありません。金貨の2の、動きながら抱え続ける静止とも、金貨の3の、誰かの視線が態度を硬くさせる静止とも、また違います。金貨の4の静止は、恐れそのものが身体を固めている静止です。しかもこの絵柄には、台座に座る本人のほかに人物が一人も描かれていません。杖の6の騎手を迎える大勢や、聖杯の6で花の杯を差し出す二人と立ち去る一人のように、誰かとの関わりが画面の中に見える形で描かれていたのとは違い、金貨の4では関わる相手は背後の街、つまり画面の外へすでに退いています。あの人が黙って動かなくなる瞬間があるとしても、それは独り占めしたい欲そのものではなく、いま両手にあるものを守ろうとする緊張が、外へ向く力まで奪ってしまっているだけなのかもしれません。
■ 今夜のあなたへ
「金貨の4」は、ケチで独占欲が強いと言い切るカードではありません。動かないことと、欲しがっていることは、似ているようで別の話です。頭の上の金貨がまだ落ちていないのは、その人なりに、いま手にしているものを大事に思っている証でもあります。硬さの奥にある震えのようなものを、独占欲だと決めつけて突き放すより、落とすのが怖いだけなのかもしれない、と少し分けて眺めてみる。今夜は、その手にこもった震えの分だけ、そっと分けて眺めておければ十分だと思います。
これで金貨も聖杯・杖と並んで5枚目になりました。次に向かうのは、しばらく間が空いている剣のスート。まだ開いていない「剣の2」を見てみようと思います。
こわばりの奥にある色を、まず自分の手で確かめてみたい方には、コンテンツマーケットに置いている色の読み方の入門記事も参考にしていただけると思います。
事情を抱えた関係ほど、いまの距離感を崩すのが怖くて、こわばりが強くなることがあります。そうした複雑な事情のもとにある本音は、鑑定メニュー「その恋の行方と本音を視てお伝えします」で、1,500字ほどの鑑定書にして24時間以内にお届けしています。いまは開店記念として1,000円(8月末まで、9月からは3,000円)でお受けしています。
こわばった両手が、少しずつ力を抜いていけますように。
月詠ソラ