一時は入手困難になるほど人気を集め、バッグに付けるだけで注目された「ラブブ(LABUBU)」。
中国発の玩具メーカー、POP MART(ポップマート)が展開するキャラクターで、ギザギザした歯と、かわいいような不気味なような独特の表情が特徴です。
BLACKPINKのリサなど、世界的な有名人が愛用したことも人気に火をつけました。SNSでは購入報告や開封動画が次々と投稿され、店頭では品薄が続き、転売価格が高騰するほどのブームになりました。
ところが、あれほどの熱狂は徐々に落ち着きつつあります。
なぜラブブは以前ほど売れなくなったのでしょうか。
結論から言えば、供給が増えて希少性が薄れたことに加え、SNS発のブームが一巡し、転売目的の需要も縮小したことが大きな理由です。
ラブブそのものの魅力が突然なくなったというより、人気を押し上げていた仕組みが変化したと考えられます。
1. 入手困難だから欲しい、という心理が弱まった
ラブブの人気を支えた要素の一つが、簡単には手に入らないという希少性でした。
欲しくても店頭に在庫がない。オンラインで販売されてもすぐに売り切れる。そんな状況が続けば、「見つけたら買いたい」「今買わなければ次はいつ手に入るかわからない」という心理が働きます。
さらに、入手できた人がSNSに購入報告を投稿すれば、それを見た人も欲しくなる。
こうして、商品そのものの魅力に加えて、手に入りにくいこと自体が価値を高めていきました。
しかし、供給が増えて普通に購入できるようになれば、状況は変わります。
以前は「手に入れたこと」自体が特別な体験だったのに、誰でも買えるようになれば、その特別感は薄れてしまいます。
実際、ラブブの人気が高まった時期には生産体制の拡大も進みました。
もちろん、商品が買いやすくなることはファンにとって喜ばしいことです。しかし、希少性が人気の一部を担っていた商品では、供給拡大が熱狂の沈静化につながることもあります。
2. 転売価格の高騰が終わり、購入するメリットが減った
ラブブのブームを考えるうえで、転売市場の存在も無視できません。
人気が高まると、定価で購入した商品を中古市場で高値で売ろうとする人が現れます。
定価では数千円の商品に何倍もの価格が付けば、純粋にキャラクターが好きな人だけでなく、利益を得る目的で購入する人も増えていきます。
ところが、転売価格が下がり始めると、この構図は崩れます。
例えば、定価より高く売れることを期待して購入した商品が、定価以下でしか売れなくなれば、転売するメリットは小さくなります。
2025年には、中国の中古市場でラブブの一部商品の価格がピーク時の500元超から約108元まで下落した事例も報じられました。
ここで重要なのは、転売価格の下落と、商品の人気そのものがなくなることは同じではないという点です。
定価で買って楽しみたい人が残っていても、利益目的で購入する人が減れば、中古市場の価格や取引量は大きく変わります。
つまり、ラブブのブームには、キャラクターを楽しむ需要だけでなく、値上がりを期待する需要も含まれていたのです。
その一部が離れたことで、以前のような勢いが失われたと考えられます。
3. SNSで話題になること自体が珍しくなくなった
ラブブの世界的な人気には、SNSの影響も大きかったといえます。
有名人がバッグに付けている姿が話題になり、一般の人も購入して投稿する。さらに、ブラインドボックスを開封する動画や、どのキャラクターが出たかを紹介する投稿が拡散される。
こうした流れによって、ラブブを知らなかった人まで興味を持つようになりました。
SNSには、人気商品を一気に広める力があります。
しかし、その反面、話題が移り変わるのも早いものです。
最初は珍しかったものでも、何度も目にするうちに新鮮さが薄れていきます。投稿する人が増えれば、同じような写真や動画も多くなり、以前ほど目を引かなくなります。
そして、別のキャラクターや新しい商品が話題になれば、注目はそちらへ移っていきます。
これはラブブに限った話ではありません。
SNSをきっかけに急成長した商品は、話題性が購買意欲を押し上げる一方で、注目が落ち着いたときに需要がどう変化するかという課題も抱えています。
ラブブの場合も、キャラクターとしての魅力は残っていても、社会現象と呼べるほどの熱狂が続くとは限らなかったのです。
4. ブームに乗って購入した人が、満足し始めた
人気商品が広がると、必ずしも全員が同じ理由で購入しているわけではありません。
ラブブの場合も、購入者にはさまざまな動機があったと考えられます。
キャラクターのデザインが本当に好きな人
バッグに付けてファッションを楽しみたい人
コレクションとして集めたい人
SNSで話題の商品を手に入れたい人
値上がりや転売益を期待する人
このうち、長く購入を続ける可能性が高いのは、キャラクターそのものに愛着を持っている人でしょう。
一方、話題性や入手困難さを理由に購入した人は、ブームが落ち着くと購入する理由を失いやすくなります。
最初は一つ手に入れるだけで満足していた人が、次々に新作を買うようになることもあります。しかし、ある程度集めれば満足する人もいます。
購入者が一巡し、すでに欲しい商品を手に入れた人が増えれば、新たな購入者が同じ勢いで増え続けるのは難しくなります。
つまり、人気が落ち着くのは、必ずしも商品に問題があるからではありません。
欲しかった人に商品が行き渡り、購入する理由が一つずつ減っていくことも、ブームが終わる大きな要因なのです。
5. ラブブ以外のキャラクターにも注目が集まっている
ラブブを展開するPOP MARTにとって、次の課題はラブブ以外のキャラクターをどこまで成長させられるかという点です。
同社は、ラブブ以外にもTWINKLE TWINKLE、CRYBABY、DIMOO、SKULLPANDAなど、複数のキャラクターを展開しています。
2026年上半期の業績では、ラブブを含む「THE MONSTERS」の売上高は44億5,000万元となりました。一方、全社売上高に占める割合は前年同期の34.7%から26%に低下しています。会社全体の売上高は前年同期比23.8%増でした。
この数字からわかるのは、ラブブを含むシリーズの存在感が相対的に小さくなっている一方で、POP MART全体の売上が減少しているわけではないということです。
ほかのキャラクターが成長すれば、会社全体としては売上を伸ばせます。
しかし、ラブブ単体のブームという視点では、以前のように一つのキャラクターに注目が集中する状況が変わりつつあるともいえるでしょう。
ラブブの人気が落ち着けば、次のキャラクターに注目が集まる。これはキャラクタービジネスにおいて自然な流れでもあります。
ただし、次のキャラクターがラブブと同じ規模の社会現象を起こせるかどうかは、別の問題です。
6. ラブブは本当に売れなくなったのか?
ここまで読むと、ラブブは完全にブームが終わり、誰も買わなくなったように感じるかもしれません。
しかし、そこは区別する必要があります。
2026年上半期のPOP MARTは、全社売上高が前年同期比23.8%増となり、THE MONSTERSも44億5,000万元の売上高を記録しています。
つまり、ラブブを含むシリーズは、依然として大きな売上を生み出しています。
一方で、一部の中古市場では価格が下落し、以前のような高値での取引が難しくなりました。
ここから考えられるのは、「ラブブが売れなくなった」というよりも、以前のような異常な熱狂が落ち着き、商品としての実力が問われる段階に入ったということです。
入手困難だから欲しい。値上がりするから買う。SNSで話題だから手に入れたい。
そうした動機だけでは、長期的な人気を維持するのは難しいでしょう。
今後は、キャラクターそのものを好きな人がどれだけ残るのか、新作やコラボレーションによって新たな魅力を生み出せるのかが重要になってきます。
ラブブの人気が落ち着いた本当の理由
ラブブが以前ほどの勢いを失った理由は、一つではありません。
大きな要因として考えられるのは、次の5つです。
供給が増えたことで、入手困難さや希少性が薄れた
転売価格が下落し、利益目的の購入が減った
SNSの話題性が落ち着き、新たな購入者を引きつける力が弱まった
購入者が一巡し、ブームに乗って買う人が減った
ほかのキャラクターにも注目が分散し、ラブブ一強の状態が変化しつつある
特に大きいのは、供給拡大によって希少性が薄れたことと、転売目的の需要が弱まったことでしょう。
手に入らないから欲しくなる。高値で売れるから買う人が増える。そして、話題になっているからさらに人気が広がる。
ラブブは、こうした流れが重なって大ブームになりました。
しかし、商品が手に入りやすくなり、値上がりも期待しにくくなれば、ブームを支えていた仕組みは弱まっていきます。
もちろん、ラブブが今後も一定の人気を維持する可能性はあります。キャラクターとしての魅力がなくなったわけではないからです。
ただし、2025年のような熱狂が再び起きるかどうかは別の話です。
ラブブのブームが教えてくれるのは、商品が売れ続けるためには、希少性や話題性だけでなく、ブームが落ち着いたあとも買いたいと思わせる魅力が必要だということです。
一時的に爆発的な人気を得ることと、その人気を長く維持することは違います。
ラブブは今、その違いが問われる段階に入っているのかもしれません。