第4話|結婚式の、前の夜に ― 鑑定室の物語

記事
占い
※「鑑定室の物語」は、月夜の鑑定室を訪れる方々の物語を綴る連作です。

その夜の予約は、日付が変わる少し前。こんな時間に占いを求めて来る方は、たいてい、明日を待てない理由を抱えていらっしゃいます。

入ってこられたのは、二十代の終わりほどの女性。きれいに整えられた爪。けれど、その手が膝の上で固く握りしめられているのを、わたくしは見逃しませんでした。

「わたし……明日、結婚式なんです。ドレスも式場もぜんぶ準備したのに、今になって急に怖くなって。この人で、ほんとうに良かったのかなって」

「彼のこと、嫌いになったわけではないのね」

「はい、それは全然。優しいし、一緒にいて楽だし。ただ、ドラマみたいに『この人しかいない!』っていう確信が、わたしには無くて。みんな、こんなに地味な気持ちで結婚するものなんでしょうか」

わたくしは、すぐにはカードを取りませんでした。この方が本当に怖いのは「相手が間違っているか」ではなく、「確信がないまま選ぶ自分自身」なのです。

引いたのは「恋人」のカードでした。向かい合うふたりと、その上で祝福を与える天使の絵。

「『恋人』の正位置。とても良いカードよ。でもね、これが教えてくれるのは『運命の相手』なんていうおとぎ話のことではないの」

わたくしは、カードの天使を指さしました。「この天使は、ふたりの『上』にいるでしょう。愛とは、燃え上がる感情の下にあるんじゃなくて、もっと静かで高いところにある『選び続ける意志』だということを示しているのよ」

「確信って、最初にあるものではないの。選んだあとに、ふたりで時間をかけて育てていくもの。『この人で良かった』は、明日の式で完成するんじゃない。これから何十年もかけて、あなたたちが一緒に作っていく答えなのですわ」

「……完成してなくて、いいんですか」

「いいのよ。むしろ、迷えるというのは、あなたがこの選択を本気で受け止めている証。どうでもいい相手になら、人は迷ったりしませんもの。ここに来たこと、それがもう、あなたの『はい』なのよ」

その方の目に、涙が滲みました。「地味な気持ちのままで、結婚していいんですね」

「ええ。花火は一瞬で消えるけれど、あなたが選んだのは、毎日灯る小さな明かりのほう。そちらのほうが、ずっと長くあなたを照らしてくれるわ」

戸口で振り返ったその方は、「明日、笑顔でいられそうです」と微笑みました。東の空が、ほんの少し白み始めていました。

大きな選択の前に、人は誰でも怖くなります。けれど迷いは、間違いのしるしではありません。その選択をどれだけ大切に思っているか、という心の深さのあらわれですのよ。

何かの選択の前で、立ちすくんでいませんか。

━━━━━━━━━━━━━━━━
🌙 光月蘭のタロット鑑定

選択に迷う夜、背中をそっと押してほしいとき。月夜の鑑定室で、あなたのために一枚を引かせていただきます。ワンコイン(¥500)から、お守り風のPDF鑑定書付き。

▼ ご鑑定はこちらから
━━━━━━━━━━━━━━━━

※ 本鑑定は占いに基づくエンターテインメントです。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す