第1話|最期の相談 ― 鑑定室の物語

第1話|最期の相談 ― 鑑定室の物語

記事
占い
雨が上がったばかりの、ある夜のことでした。

その夜の最後の予約は、お名前が伏せられていました。占いに来る方には、名前を明かすことさえためらう方がいらっしゃいます。それだけ、人は弱った心を抱えてここへ来るのです。

入ってこられたのは、五十をいくつか過ぎたくらいの女性でした。ひと目で、お加減がよくないのだとわかりました。頬はこけ、手首は折れそうなほど細い。けれど、背筋だけはまっすぐに伸びていらっしゃる。

「占いなんて、初めてですの」

そう言って、その方はやわらかく笑いました。

しばらく、たわいもない話をいたしました。そして、ふと、湯呑みに視線を落としたまま、こうおっしゃったのです。

「わたし、実は……あまり、時間がなくて」

部屋の空気が、すっと静かになりました。

「お医者さまに、言われましたのね」

その方は、小さく、けれどはっきりとうなずきました。「春の終わりに。もう、長くはないと」

「最後にひとつだけ、占っていただきたいことがあって、まいりましたの」

わたくしは、てっきりご自分のことだと思っておりました。けれど、違ったのです。

「娘が……これから、幸せになれるのか。それを、知りたいんですの」

お話を聞くうちに、見えてまいりました。お嬢さまとは、もう何年も、まともに口をきいていらっしゃらない。若い頃、強く反対をなさって、きつい言葉もぶつけてしまった。そのまま、お嬢さまは家を出た。

「もう、謝る時間も、そんなに残っていなくて。せめて、あの子がこの先ちゃんと幸せになれるのか、それだけでも知れたら……」

最後の言葉は、もう、声になりませんでした。

わたくしは、カードを引きました。現れたのは——「太陽」のカードでした。まばゆい光のもと、あどけない子どもが描かれた、無条件の肯定をあらわすカード。

「これはね、『あなたは、すでに愛されている』というカードなのよ」

「この太陽はね、誰かがずっと前から、その子に注いでいた光なんですのよ。離れていても、けんかをしていても、ずっと注がれていた光。——あなたが、お嬢さまに注いでこられた光と、同じなのよ」

その方の頬を、涙がひとすじ伝いました。

「でも、わたしは、あんなにひどいことを」

「ひどい言葉が出るのは、どうでもいい相手にではありませんわ。本気で、その子の幸せを願っていたから、あなたは強く言ってしまった。それは、まちがいなく、愛なのよ。あなたはもう、答えをご存じなのよ」

その方は、声を上げて泣かれました。そして、すっと顔を上げて、こうおっしゃいました。

「わたし、手紙を書きます。ちゃんと、ごめんねって。それから……ありがとうって」

その方は、来たときよりもまっすぐな背中で、夜の街へ消えていかれました。

それから、ひと月ほど経った頃。鑑定室に、若い字の便りが届きました。

『母が、先日、旅立ちました。最後の数週間、たくさん話しました。長い手紙をもらったんです。ごめんね、と、ありがとう、と。母が、どうしても先生にお礼を、と言っていました』

わたくしがしたことなど、何もありません。カードを一枚、引いただけ。あの方がご自分の胸の奥に、ずっと前から持っていらした答え。その上に、月の光をほんの一筋、当てさせていただいた。ただ、それだけのことです。

占い師にできることは、灯りを一筋、当てることだけ。道を歩くのは、いつだって、その人自身です。

それでも、暗い夜道の一筋の月あかりが、どれほど人を支えることか。

あなたの胸の奥にも、きっと、もう答えはあるのよ。もし、それを信じられない夜があったなら——そのときは、月を見上げてごらんなさいね。

━━━━━━━━━━━━━━━━
🌙 光月蘭のタロット鑑定

「大ごとにするほどではないけれど、誰かにそっと聞いてほしい」——そんな夜に。月夜の鑑定室で、あなたのために一枚を引かせていただきます。ワンコイン(¥500)から、お守り風のPDF鑑定書付き。

▼ ご鑑定はこちらから
sample_kantei_L00.png

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す ココナラコンテンツマーケット ノウハウ記事・テンプレート・デザイン素材はこちら