2026年9月、総務省は、日本の65歳以上人口が3,624万人、総人口に占める割合が29.6%になったと発表しました。割合は過去最高です。
青森県では、2026年2月1日現在、65歳以上人口は41万8,076人、高齢化率は35.90%でした。
ただし、この数字を「高齢者が増え続けている」とだけ読むと、実態を見誤ります。前年と比べ、県の総人口は1万9,311人減少。そのうち65歳以上は1,391人減りました。減少した65歳未満は1万7,920人で、人口減少全体の約93%です。
青森でより速く減っているのは、65歳未満の人口です。
私は社会福祉士として、青森県内の病院で20年間働いてきました。医療や介護の現場で問われるのは、高齢化率の高さだけではありません。誰が、どこで、どのように暮らしを支えるかです。
高齢者数が減っても、高齢化率が上がる理由
高齢化率は「65歳以上人口 ÷ 総人口 × 100」で決まります。分子の高齢者数が少し減っても、分母の総人口がさらに大きく減れば、割合は上がります。
35.9%という数字は「高齢者が増えた結果」だけではありません。子どもや働く世代を含む人口が、先に細くなっている結果でもあります。
県内でも「支える人数」は違う
15〜64歳人口を65歳以上人口で割ると、青森県全体では2020年の1.65人から、2030年には1.36人になる見込みです。
2030年の推計では、西北地域が1.03人、下北地域が1.29人、上北地域が1.46人、三八地域が1.41人、中南地域が1.39人、東青地域が1.41人です。
これは実際の介護者数ではありません。年齢構成を見るための目安です。同じ青森県でも、交通、医療、介護、人材配置の形を一つにそろえることはできません。
75歳以上は増え、支え手は減る
推計を県内6地域で合計すると、65歳以上人口は2020年の約41.8万人から2030年の約41.6万人へ、ほぼ横ばいです。
一方、75歳以上人口は約21.2万人から約25.2万人へ約1.19倍に増えます。15〜64歳人口は約69.0万人から約56.7万人へ約18%減り、2050年には2020年の半分以下になる見込みです。
「高齢者全体」は増え続けなくても、医療や介護を必要としやすい75歳以上は当面増える。その一方で、医療、介護、交通、家族の支え手になり得る世代は減る。2030年前後は、この二つが重なる転換期です。
人口減少と闘うのではなく、暮らしを組み直す
「青森はこのまま消滅を待つしかないのか」と感じる人もいるかもしれません。
私は、人口減少そのものと闘うことを目標にするべきではないと思います。しかし「仕方がない」と放置することも違います。
目指す方向は二つです。所得や働き方を改善し、人口減少の速度を緩やかにすること。そして、人口が減っても暮らしが途切れない地域へ組み直すことです。
青森で優先したい5つの再設計
1 若者対策の中心を「地元愛」ではなく所得にする
賃金、休日、キャリア、子育てとの両立を実際に改善する。特に医療、介護、交通など、地域を維持する仕事の待遇と働き方を先に整えます。
2 「施設を残す」から「到達できることを守る」へ
施設数だけでなく、通院や買い物にかかる時間、利用できる頻度を評価する。拠点化する場合は、予約型交通、送迎、訪問診療、巡回サービスなどを組み合わせます。
3 医療・介護を事業所単位から生活圏単位へ変える
病院、診療所、訪問看護、介護、薬局、交通が、採用、研修、夜間対応、記録、送迎などを共同化する。ICTは人を減らすためではなく、専門職が人に向き合う時間を守るために使います。
4 「残れ」ではなく「戻れる・離れていても関われる」にする
県外へ出ることも大切な選択です。戻ろうとした時の仕事、所得、住まい、子育ての選択肢を整え、Uターン採用、副業・遠隔勤務、二地域居住を継続的な仕組みにします。
5 縮小する地域では、住民と「移し方」を決める
何を残すか、どこへ移すか、移動できない人をどう支えるかを住民と決める。移転や住み替えを希望する人を支援し、住み続けたい人には交通、医療、生活インフラへの最低限の接続を守ります。
人口総数だけを成果にしない
見るべきなのは、20〜39歳の転出入、男女別の県内定着率、県内賃金、医療・介護職の定着率、通院や買い物にかかる時間、公共交通を利用できる住民の割合です。
「若い世代が先に減る」という表現は、高齢者を問題と見なすためのものではありません。高齢者を一括して「支えられる側」、若者を一括して「支える側」と決めつけることもできません。
必要なのは、世代間の負担の押しつけ合いではなく、支える人が少なくても暮らしが途切れない仕組みです。
青森が目指すべきなのは、人口をかつての規模に戻すことではありません。若い人が残ることも、県外へ出ることも、戻ることも選べる。そして人口が減っても、医療や移動、日々の暮らしを諦めなくてよい地域へ組み直すことです。
消滅を待つのでも、数字だけを追って人口減少と闘うのでもない。変化を受け止めながら、守るべき暮らしを守る。それが青森の現実的な進み方だと思います。
※2026年9月25日時点の公表資料を基に一般向けに整理しました。将来推計は一定の仮定に基づくもので、実際の人口を確定するものではありません。個別の受診、治療、介護サービスの選択を示すものでもありません。症状や生活上の困りごとは、医療機関や市町村の地域包括支援センターなどへご相談ください。
主な出典
・総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」(2026年9月20日)
・青森県国民健康保険団体連合会「令和7年度版 介護保険の実態(第24号)」
・青森県「よくわかる青森県2026 地域別情報」
・国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」
・国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」
・青森県「人口減少対策の主な取組」
・青森県「所得向上・労働力確保に向けた実践プログラム」