電子書籍を出したあと、「紙でも出せますよ」と聞いて驚く方がいます。
実はKDPでは、追加費用なしでペーパーバック(紙の本)を出版できます。在庫を持つ必要もなく、注文が入ったときに印刷される仕組みです。
ただし、ひとつ知っておいてほしいことがあります。電子書籍の表紙は、そのままでは使えません。
電子書籍とペーパーバックの、決定的な違い
電子書籍の表紙は、表紙1枚です。
ですが、ペーパーバックには表紙・背表紙・裏表紙があります。これらをつなげた1枚の画像をアップロードする必要があり、ファイル形式もPDFのみです。
つまり、電子書籍で作った縦長の1枚画像は、そのまま流用できないんです。新しく作り直すことになります。
「裁ち落とし」という壁
さらに、紙の本には印刷特有のルールがあります。
Amazonの品質基準を満たすには、表紙に裁ち落としのサイズを設定する必要があります。裁ち落としとは、画像や背景がページの端まで印刷されるときに用いられる印刷用語で、上・下・外側の端に3.2mm(0.125インチ)大きくサイズを取ります。
計算式は以下の通りです。
・表紙の幅 = 裁ち落とし + 裏表紙の幅 + 背表紙の幅 + 表表紙の幅 + 裁ち落とし
・表紙の高さ = 裁ち落とし + 判型の高さ + 裁ち落とし
また、切り落とされてはいけない要素は、表紙の外縁から6.4mm以上内側に置く必要があります。フォントもファイル内に埋め込まなければなりません。
……ここまで読んで、「思ったより複雑だなぁ」と感じたと思います。実際、そうなんです。
背幅はページ数で変わる
もうひとつ厄介なのが、背表紙の幅です。
ペーパーバックの表紙サイズは電子書籍のように固定ではなく、判型(本の大きさ)とページ数で決まります。ページ数によって背表紙の幅が変わるためです。
つまり、本文が確定しないと表紙が作れません。 原稿を1ページ増やしただけで背幅が変わるので、順番としては「本文確定 → ページ数確定 → 背幅計算 → 表紙作成」になります。
薄い本は背表紙に文字が入れられない
これは意外と知られていないルールかもしれません。
背表紙にテキストを含めるには、本が79ページ以上である必要があります。79ページ未満で背表紙にテキストが入っていると、表紙は却下され、調整が必要になります。
ですが、実務的には80ページの背表紙に読める大きさの文字を入れるのは物理的にも厳しく、100ページを超えたあたりが現実的なラインだと言われています。
それでもペーパーバックを出す価値
ここまで少し面倒な話をしてきましたが、紙で出す意味は確実にあると思います。
・手渡せる:名刺代わりに使うなら、紙のほうが圧倒的に強い
・贈れる:家族や恩師に渡すという使い方ができる
・Amazonの商品ページにペーパーバック版が並ぶ:それだけで本格的に見える
・在庫リスクゼロ:注文が入ってから印刷されるので、余ることがない
特に、講師やコンサルタントとして活動している方にとって、実物を手渡せるというのは電子書籍にはない強みです。
補足:本文データも別途必要です
表紙だけでなく、本文もペーパーバック用に作り直す必要があります。
マージンの規定があり、裁ち落としがない本なら上下・外側6.4mm以上、ある本なら9.6mm以上。内側のマージンはページ数によって変わります。
なお、Kindle Createは現在、日本語のペーパーバック本文作成には対応していません。Word等で自分で組む必要があります。
ペーパーバックは電子書籍の”おまけ”ではなく、別の制作物だと思ってもらったほうがいいかもしれません。
裁ち落とし・背幅計算・PDF書き出し、このあたりで手が止まる方が多い工程なので、ペーパーバック版の表紙だけを作ってほしい、というご依頼にも今後対応していきます。また、電子書籍版の表紙データがあれば、そこから紙用に組み直すことも可能です。
※ 記載の数値は2026年8月時点でKDP公式ヘルプに基づいて確認したものです。規定は変更される場合があるため、実際の出版時には公式ヘルプで最新情報をご確認ください。