ファイナンシャルプランナーは2,500万円の夢を見るか? ――「ジャンボミニ17枚」に隠された、合理と認知の行動経済学
記事
マネー・副業
「お金のプロである
ファイナンシャルプランナー(FP)なら、
宝くじなんて『確率が低いから買わない』」
そう思っていませんか?
……実は私、先日ジャンボミニを
「17枚」ほど購入しました。
「FPのくせに、お恥ずかしい……w」
と思われるかもしれません。
確かに、数学的な
「期待値(戻ってくるお金の平均)」
だけで言えば、宝くじは買った時点で
マイナスからスタートする仕組みです。
それはプロとして百も承知しています。
でも、なぜ買ってしまったのか。
そしてなぜ、私たちは宝くじ売り場を前にすると、
つい財布を開けたくなるのか。
今日は
「宝くじを買うなんて無駄だ、
ギャンブル思考だ」と
バッサリ切り捨てるのではなく、
人間の脳が自然とハマってしまう
「思考のクセ」と「行動の仕組み」を、
私と一緒にのぞいてみませんか?
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「3.9万分の1」なら、いける気がしてしまう不思議
今回私が買ったジャンボミニ。
1等・前後賞を合わせた2,500万円に当選する確率を
計算してみると、約 3万9,216分の1 でした。
数字だけ見ると、
途方もなく低い確率ですよね。
客観的に見れば、ほぼ「無理ゲー」です。
しかし、ここでちょっと別の数字を
並べてみましょう。
通常のジャンボ宝くじで、
1,000万円以上が当たる確率は、
約 14万7,059分の1 です。
これらを並べて、
こう言われたらどう感じるでしょうか?
「通常のジャンボを狙うより、ミニの前後賞を狙う方が、
約3.75倍も当たりやすいですよ」
……どうでしょう?
不思議なことに、さっきまで
「無理ゲー」だと思っていた
3.9万分の1という確率が、
なんだか「あれ? ちょっとマシかも?」
「もしかしたら……」と思えてきませんか?
実際の当選確率が変わったわけではありません。
ここには、行動経済学が明かす
3つの「脳のクセ」が綺麗に発動しています。
✅ 1. 参照点依存(さんしょうてんいぞん)
人間は、絶対的な数字(3.9万分の1)を
そのまま受け取るのが苦手です。
必ず、どこかに
「基準となる点(参照点)」
を置いて比較します。
今回の参照点は
「通常のジャンボ(14.7万分の1)」
それと比べることで、
急にミニが「現実的な選択肢」に
見えてくるのです。
✅ 2. アンカリング効果
最初に「通常のジャンボの当たりにくさ」や
「7億円」という巨大な数字を見せられると、
それが脳に突き刺さる錨(アンカー)になります。
その後に「2,500万円」や
「3.75倍マシ」と言われると、
アンカーのせいで、
ものすごく身近で扱いやすい数字のように
錯覚してしまいます。
10万円の高級バッグを見た後に
1万円のポーチを見ると
安く感じるのと同じ仕組みです。
✅ 3. 確率加重関数(かくりつかじゅうかんすう)
これが一番厄介で、
愛おしい人間のクセです。
私たちは
「客観的な確率」と
「主観的な確率」を
一致させることができません。
行動経済学では、
「人間は、極めて低い確率を、
実際よりも大きく見積もってしまう」
ことが分かっています。
0%(絶対当たらない)と
0.002%(ほぼ当たらない)
の間には、数字以上の
「巨大な可能性の壁」を
勝手に感じてしまうのです。
「どうせ当たらない」
と頭では分かっていても、
これらの脳のクセが重なり合うことで、
私たちの心の中に「もしかしたら」という
小さな炎が灯るようになっています。
なぜ私たちは「当たる前」にお金を払えるのか?
脳のクセは分かりました。
では、そもそもなぜ私たちは、
これほど低い確率だと知りながら、
実際に売り場へ足を運び、
お金を支払うという行動を
起こすのでしょうか?
その「行動の構造」を理解するために、
まずは全体を3つのステップ
(ABC分析)で整理してみましょう。
① 先行事象(きっかけ)
「ジャンボミニ発売!」の看板や、
数字の比較(3.75倍マシ)を目にする。
② 行動
宝くじ売り場に行き、17枚購入する。
③ 事後の結果
「もし当たったら……」という
未来の妄想やワクワク感が手に入る。
宝くじの本当の結果
(お金が当たるかどうか)が分かるのは、
何週間も先です。
つまり、本来の目的であるはずの
「当選」という結果は、
すぐには訪れませんし、
確率も極めて低いです。
それなのに私たちがついついお金を
支払ってしまうのは、行動した「直後」に、
未来を妄想できる楽しさという報酬(好子の出現)が、
100%その場で確実に手に入っているからです。
100%大金が入ってくるとも限らないはずなのに・・・
人間は、遠い未来の不確実な結果よりも、
「今すぐ、目の前で確実に得られる
環境の変化」に強く影響を受けます。
つまり、私たちが数千円を出して
買っているのは、紙切れそのものではなく、
「買ったその瞬間から抽選日まで続く、
ワクワクした時間」という
環境そのものなのです。
そう考えると、この行動が起きるのも、
ごく自然なことだと思えてきませんか?
ちなみに……私はこう使います
もし、今回の17枚のうちの1枚が、
2,500万円に化けたらどうなるか。
「私ならどうするか」という、
ちょっとした妄想の設計図を公開してみますね。
【もしも私が2,500万円を当てたらプラン】
✅2,000万円:
毎月分配型の投資信託
(純資産が崩壊していない
長期継続可能なもの)へ
✅200万円:
心理的安全性(心のゆとり)のための
預金としてガッチリ確保
✅300万円:
他の配当銘柄へ分散投資
※しかも一括で投資するのではなく、
毎月150万円ずつ積みながら、
自分の生活モデルがどう変わるか実験していく。
一般的に投資や資産形成の世界では、
「毎月分配型は効率が悪いから損だ、悪だ」
と一蹴されることも多いです。
けれど、もし目的が
「死ぬ時に資産を最大化すること」ではなく、
「今、自由になるための毎月の
キャッシュフロー(疑似年金)を作ること」
だとしたら、その人にとっては
これが一つの心地よい選択肢になります。
もちろん、これはあくまで私の一例にすぎません。
お金の使い方や投資の仕方に
「唯一絶対の正解」はありませんし、
人それぞれで全く違っていいのです。
✅「ドカンと一括投資して、
あとは忘れて自分の好きな仕事や
趣味に没頭したい」
✅「1円も動かさずに全部貯金して、
ただただ圧倒的な安心感に包まれたい」
✅「今しかできない体験や、
大切な人との旅行にすべて使い切りたい」
どれも全部、その人が
「人生で何を大切にして生きているか」
という価値観の現れであり、
間違いなんてひとつもありません。
宝くじという低確率のオプションは、
正解の正しさを競うためのものではなく、
「もしも自由になるまでの時間を短縮できる
ショートカット券が手に入ったら、
自分は何を一番大切にしたいんだろう?」と、
自分の本当の願いにスポットライトを
当てるためのツールなのかもしれません。
「合理」と「夢」のハイブリッド戦略
だからといって、
「生活費を削ってでも宝くじを買いましょう!」
と言いたいわけではありません。
生活費を削ったり、借金をしたり、
人生設計のすべてを
宝くじに依存させてしまうのは、
かえって日々の心の安定(環境)を
壊してしまいます。
大切なのは、
「あ、今自分の脳のクセが発動してるな」
「私は今、直後のワクワクを買いに動いているんだな」
と自分の仕組みを知った上で、
こんな風にバランスを付き合わせてみることです。
✅普段の生活や将来のための積立は、
コツコツと手堅く動かす(合理の仕組み)。
✅でも、人生のゲームルールを少しだけ
変えてくれるかもしれないチケットに、
お小遣いの範囲で少しだけ投資して、
直後のワクワクを味わう(夢の余白)。
私たちはロボットではないので、
100%合理的な選択ばかりでは
心が息詰まってしまいます。
「正しさ」だけでカチカチになった心に、
ほんの少しの「遊び」を持たせること。
それこそが、実は日々の堅実な行動を
長く続けるための、
隠れた防衛策でもあるのです。
あなたがもし、
次に宝くじ売り場を見かけて
「買おうかな、どうしようかな」
と心が揺れたら、
それは決して意志が弱いわけでも、
悪いことでもありません。
「私は今、この数千円で、
どんな未来の選択肢を妄想したいんだろう?」
その問いかけの向こう側にある
妄想の中にこそ、
あなたが今、本当に求めている
「理想の暮らし」のヒントが、
鏡のように映し出されているかもしれませんよ。