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占い
第4話:揺れ始める距離と、言葉にできない感情
記事
占い
霊視鑑定士 昴流PRO ※ブログ更新中
2026/03/25 20:40
会議での評価から数日。
私は、以前よりも明確に「見られている」と感じるようになっていた。
ミスをしないように、ではない。
「どう成長しているか」を、見られている。
それは、少しだけ怖くて、でも同時に嬉しかった。
「澪さん、この分析、もう一段階踏み込めますか」
昼過ぎ。
蒼さんが、私のデスクの横に立っていた。
相変わらず無駄のない声。
感情の揺れを感じさせないトーン。
でも以前と違うのは、
“任せられている感覚”があることだった。
「もう一段階、ですか…?」
私は画面を見つめながら問い返す。
「はい。表面的な傾向は見えていますが、その“理由”までは届いていません」
短い。
でも、的確すぎる指摘。
「…分かりました。やってみます」
そう答えながら、心の中では少しだけ焦っていた。
(……できるかな)
その日の帰り道。
私はカフェに寄って、ノートとパソコンを広げていた。
いつもなら「これで十分」と思っていたラインを、
今日は越えようとしている。
数字の裏にある動き。
ユーザーの心理。
市場の流れ。
何度も資料を見返しながら、
“なぜそうなるのか”を掘り続けた。
(……まだ浅い)
(……もっと見えるはず)
時間が過ぎていくのも忘れて、
気づけば外はすっかり暗くなっていた。
翌日。
私は少しだけ緊張しながら、資料を蒼さんに提出した。
「……確認お願いします」
声が、わずかに硬い。
蒼さんは無言で資料に目を通していく。
ページをめくる音だけが、静かに響く。
その時間が、妙に長く感じた。
「……ここまで来ましたか」
ぽつりと、蒼さんが言った。
顔を上げる。
表情は相変わらず変わらない。
でも、視線の奥が少しだけ違う。
「はい。前回の指摘を踏まえて、背景まで整理しました」
「分かります」
短く返ってくる。
そして、ほんの一瞬だけ。
「いいと思います」
その言葉が落ちた。
一瞬、時間が止まった気がした。
「……ありがとうございます」
私は、うまく言葉を返せていたか分からない。
ただ、胸の奥がじんわりと熱くなっていた。
その日の午後。
なぜか集中できなかった。
作業は進んでいるのに、
頭の中に浮かぶのは、あの一言だった。
「いいと思います」
たったそれだけの言葉。
でも、それがこんなにも残るなんて思わなかった。
(……なんでだろう)
帰り道。
ふと、自分に問いかける。
嬉しかった。
それは間違いない。
でも、それだけじゃない。
もっと奥に、何かがある。
(……認められたかったんだ)
そう気づいた瞬間、
胸の奥が少しだけ静かになった。
ずっと、怖かったのかもしれない。
否定されること。
見てもらえないこと。
でも今は違う。
ちゃんと見られていて、
ちゃんと評価されている。
それなのに。
なぜか、少しだけ苦しい。
翌日。
「澪さん」
背後から呼ばれて振り返る。
「はい」
蒼さんが立っていた。
「次の案件ですが、澪さんにも一部任せます」
「……え?」
思わず声が漏れる。
「ここまでの内容を見る限り、任せても問題ないと判断しました」
相変わらず、感情は乗っていない。
でも、その言葉の重さは、はっきりと伝わってきた。
(……任せてもらえた)
嬉しい。
でも同時に、
また少しだけ、胸がざわつく。
「……やってみます」
私はそう答えた。
その声は、
少しだけ強くなっていた。
蒼さんは、軽く頷いた。
それだけ。
それだけなのに。
なぜか、その仕草が、
やけに印象に残った。
(……なんだろう、この感じ)
仕事としての距離は、確実に縮まっている。
でもそれ以上に、
“何か”が近づいている気がした。
まだ名前は分からない。
でも確かに、
静かに動き始めている。
私の中で、何かが変わり始めていた。
仕事だけじゃない。
もっと別の、
言葉にできない何かが。
続く。
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