築年数の経った物件では、手元にあるのが手書きの間取りや、何度もコピーされて薄くなった竣工図だけということがあります。そこから広告用の間取り図を描き直す時に、作図の前と後で確かめている点をまとめます。法令の根拠は不動産公正取引協議会連合会の「不動産の表示に関する公正競争規約」と「同施行規則」です。
1. 読み取れない字は推測で埋めない
薄れた数字、つぶれた部屋名、手書きの「6」と「0」の区別。読めない箇所は、似た部屋の寸法から埋めたくなりますが、面積や帖数に直結するので、そのまま描かずに依頼元に戻します。確認が取れるまでは、その箇所に「要確認」の印を付けた下書きを出し、どこが未確定なのかが分かる形にしておきます。
2. 寸法の足し算が合うか
部屋ごとの寸法を足して、外周の寸法や登記面積と合うかを見ます。手書きの図では、間仕切りの厚みが入っていない、押入の奥行きが抜けている、といったずれがよくあります。合わないときは、どちらの数字を正とするか依頼元に決めてもらいます。描き直した側で勝手に「合うように」寸法を動かすと、後で現況と違う図になります。
3. 方位
元の図に方位記号がない、または記号の向きが怪しいことがあります。図面だけでは決められないので、公図や配置図、現地写真のどれかで確かめた向きを依頼元から受け取ります。マンションでは、バルコニー側を南と思い込んで描くと向きが逆になることがあります。
4. 建具の向きと開き勝手
ドアの開く向き、引き戸か開き戸か、窓の種類は、手書きだと線1本で済ませてあることが多いです。写真や現地の確認がない部分は、元の図に描かれた線以上の情報を足さず、分からない建具は依頼元に聞きます。クローゼットの折れ戸を開き戸で描くと、家具の置けない範囲が変わって見えます。
5. 帖数の表記
施行規則第9条(16)は、居室の広さを畳数で書くときは、畳1枚あたり1.62平方メートル以上の広さがある意味で使う、と定めています。各室の壁心面積を畳数で割った数が1.62以上になるかを確かめます。元の図に「6帖」とあっても、寸法から計算して1.62を切るなら、そのまま書き写せません。
計算で端数が出るときは「約6帖」「≒6.0帖」のように、約の表記を付けておきます。面積はメートル法で表示し、1平方メートル未満は切り捨てることができます(施行規則第9条(13))。
6. 居室と納戸の区別
採光・換気のための窓などの開口部の面積が、建築基準法第28条の割合に適合しない部屋は、居室と認められないため「納戸」等と表示します(施行規則第9条(17))。規約第23条(10)でも、居室に該当しない部屋を居室であると誤認させる表示は禁止されています。古い図で「洋室」と書かれていても、窓のない部屋は、依頼元に確かめたうえで「納戸」等として描きます。
7. DK・LDKの呼び方
規約第18条は、ダイニング・キッチン(DK)を台所と食堂の機能が1室に併存する部屋、リビング・ダイニング・キッチン(LDK)を居間と台所と食堂の機能が1室に併存する部屋と定め、いずれも居室数に応じて必要な広さ・形状・機能があるものに限っています。古い図の「台所」をLDKに書き換えるときは、この定義に当てはまるかを見ます。
8. 図面と現況が違う時
竣工図と現況が違うことは珍しくありません。間仕切りの撤去、和室から洋室への変更、増築。改装や増築を表示するときは、その内容と時期を明示します(施行規則第9条(21))。現況で描くなら、何を根拠に描いたかを「現況優先・○年リフォーム時の図による」のように注記で残します。規約第23条(9)は、間取りを実際より優良と誤認させる表示を禁止しているので、現況より良く見える方に寄せない、という線で判断します。
9. 「見取図」である旨
描き直した間取り図は、現地を測量して作った図ではありません。見取図や完成予想図は、その旨を明示して使うことになっています(施行規則第9条(23))。「図面は現況と異なる場合があります。現況を優先します」の一文を入れておきます。
10. 最後は元の図と重ねて見る
描き直しで多いミスは、線の抜け(柱、袖壁、腰窓)と、余分な線(元図のコピー汚れを壁と読む)です。描き直した図を元の図に重ねて、線がずれていないか、消えていないかを見ます。最後に人の目で、部屋名と帖数が元の資料と合っているかを1部屋ずつ照合します。
外注に出すときに揃えておくと早いもの
・元の図面(手書き、竣工図、過去の販売図面のどれでも)
・登記簿または面積の分かる資料
・方位が分かる資料(公図、配置図、地図のどれか)
・現況と違う箇所のメモや写真
・家具入りの図が要るかどうか
「マイソク制作工房」では、古い図面や手書きの間取りから、間取り図とA4横1枚の販売図面を3,000円から作っています。画像生成AIは使わず、AIが元の図面を読み取ってプログラムで作図し、上に書いた重ね合わせの点検と人の照合を通して納品します。読み取れない箇所は購入後のトークルームで確認します。初稿は資料と内容が揃ったと連絡した日から、間取り図は2日以内、販売図面一式は3日以内です(土日祝日も日数に含みます)。見本は全て架空の物件です。