【Vol.3】コンサルの「不都合な真実」。彼らが数千万円で売る「AI戦略」の裏で、実はこっそりGeminiを使い倒しているとしたら?

【Vol.3】コンサルの「不都合な真実」。彼らが数千万円で売る「AI戦略」の裏で、実はこっそりGeminiを使い倒しているとしたら?

記事
ビジネス・マーケティング
※過去コラムの再掲載です。内容に古い部分がありますがご容赦ください。


〜「情報の非対称性」で稼ぐ時代の終わりと、現場の「野生のプロンプト」の逆襲〜

先日参加したア◯ームコンサルティングのセミナー。 そこで提示されたスライドは、息をのむほど完璧でした。

美しいロジックツリー、隙のないロードマップ、網羅的な競合分析、そして洗練された将来予測。 会場の参加者たちは「さすがプロだ」「我々にはこの視点はなかった」と感嘆し、熱心にメモを取っていました。


しかし、その圧倒的なプレゼンテーションを見つめながら、私の脳裏には、ある「疑念」が静かに、しかし確実に広がっていました。

「この完璧な資料を作ったのは、本当に『優秀な若手コンサルタント』の頭脳だけなのだろうか?」

今回は、DXやAI推進の旗振り役であるコンサルティングファームが抱える、最大の「不都合な真実」について切り込みます。 これは、彼らを悪者にする話ではありません。むしろ、彼らが優秀で合理的だからこそ陥っている、業界全体の構造的なパラドックス(逆説)の話です。

完璧なスライドの背後にある「ブラックボックス」
少し想像してみてください。 深夜のオフィス。高給取りのエリートコンサルタントが、明日のクライアントへの提案資料を作っています。

かつて彼らは、徹夜で論文を読み漁り、過去の事例をデータベースから引っ張り出し、先輩に壁打ちをして知見を絞り出していました。 しかし、今はどうでしょう?

もし彼らのブラウザの別タブで、「Gemini 3.0 Pro」や「ChatGPT Plus」が開かれていたとしたら?

「〇〇業界における、生成AI活用の最新トレンドを5つ挙げて。それぞれに具体的なユースケースと期待されるROIを含めること」 「この課題に対するソリューション案を、松・竹・梅の3パターンで提示して。ロジカルな根拠を添えて」

彼らはこう入力し、数秒で出力された「80点の答え」をプロの視点で「100点」に手直しし、美しいパワーポイントに落とし込む。 そうやって作られた資料が、翌日、数千万円のプロジェクト提案書として、クライアントの役員会に提出される。

これは私の妄想でしょうか? いいえ、これは今、コンサルティング業界の「公然の秘密」であり、同時に「クライアントには絶対に言えないタブー」でもあります。

「情報の非対称性」というビジネスモデルの崩壊
なぜ、これがタブーなのか。 それは、コンサルティングビジネスの根幹に関わるからです。

企業が高いフィー(報酬)を払ってコンサルを雇う理由は、主に2つあります。

「クライアントが知らない知見(ベストプラクティス)」を持っているから。

「高度な論理的思考力」で問題を整理してくれるから。

これを経済学用語で「情報の非対称性(Information Asymmetry)」と言います。「私は知らないことを、あなたは知っている」。この知識の格差こそが、彼らの商材でした。

しかし、もしその「知見」のソースが、誰でも月額20ドル(約3,000円)で使えるAIだとしたらどうなるでしょう? もしその「論理構築」が、たった一つのプロンプトで生成されたものだとしたら?

彼らがやっていることは、「月額3,000円のAIから仕入れた情報を、数千万円のパッケージに包み直して販売している」 という、単なる「裁定取引(アービトラージ)」になってしまいます。

クライアントが「デジャヴ」を感じる時
このビジネスモデルには、致命的なリスクがあります。 それは、クライアント側のリテラシーが上がった瞬間に、魔法が解けてしまうことです。

ある日、経営企画部の社員が、提出されたレポートを見てこう思うのです。 「あれ? この構成、昨日俺がChatGPTに壁打ちして出てきた答えと、そっくりじゃないか?」

その瞬間、数千万円のフィーは「投資」から「ぼったくり」へと姿を変えます。 「思考の仲介手数料」を取るビジネスは、原価(AIの利用料)がバレた瞬間に、その正当性を失うのです。

「自分たちは軽やかに使い、客には重厚なシステムを売る」
ここで、さらに根深い欺瞞(ぎまん)があります。 それが「ダブルスタンダード(二重基準)」です。

セミナーでア◯ームは、「AIソーシング(AIを一人材とみなす)」というコンセプトを提唱しました。 皮肉なことに、これを世界で最も実践しているのは、他ならぬコンサルタント自身です。

彼らは、自分のPCの中で、AIを「優秀なバディ(相棒)」として使い倒しています。 面倒な社内手続きも、ガバナンスも関係なく、個人の裁量で高速に試行錯誤(壁打ち)を繰り返し、圧倒的なスピードで成果を出しています。

しかし、彼らがクライアントに提案するのはどういう世界でしょうか?

「全社的なガバナンスの策定が必要です」

「セキュアな基盤構築に半年かけましょう」

「従業員のリテラシー教育から始めましょう」

おかしいと思いませんか? 自分たちは「AIという秘書」を軽やかに使いこなして生産性を爆上げしているのに、クライアントには「AIを使うための、重たくて面倒な手続き」を売りつけているのです。

本来なら、こう言うべきはずです。 「私たちも裏でGeminiを使っています。めちゃくちゃ便利なので、御社も今すぐ全社員にアカウントを配って、自由に使わせてください」と。

トップダウンの限界と、「中抜き」のすすめ
現在のAI導入の構造は、以下のようになっています。

【現状】 [現場の課題] ➔ [コンサルタント] ➔ (コンサルのAI) ➔ [解決策の提案]

コンサルタントという「高級なプロンプトエンジニア」が間に挟まることで、コストは跳ね上がり、スピードは落ちます。 しかし、あるべき姿はこうです。

【あるべき姿】 [現場の課題] ➔ (現場のAI) ➔ [解決策]

この「中抜き」を行うだけで、スピードは10倍になり、コストは100分の1になります。

セミナーでは「上流からの戦略立案」や「トップダウン」が強調されました。 しかし、AIの本質的な面白さは、「使い手によって化ける」ことにあります。

コンサルが設計する「トップダウンのAI」は、経費精算や日報要約といった「定型業務」の自動化には強いでしょう。 ですが、ビジネスの最前線で起きるのは、常に「非定型なトラブル」と「文脈依存の悩み」です。

「この特殊な仕様のクレームに、どう返信すれば角が立たないか?」

「工場のラインで起きたこの異音、過去の事例だと何が怪しいか?」

こうした現場の生々しい問いに答えられるのは、東京のオフィスにいるコンサルタントではありません。 その場にいる現場社員と、彼らの手元にあるAIとの「対話」だけです。

「野生のプロンプト」が戦略を凌駕する
コンサルタントがオフィスで「良い提案書の書き方」をAIと試行錯誤しているように、現場の営業マンや工場長が、自分の手元で「今の業務をどうハックするか」をAIと試行錯誤する。

私はこれを「現場の野生のプロンプト」と呼びたいと思います。

泥臭い試行錯誤から生まれる「野生のプロンプト」こそが、企業の独自資産(アセット)になります。 コンサルがきれいに整えた「スマートな戦略」よりも、現場がAIと喧嘩しながら生み出した「荒削りな対応策」の方が、実戦では遥かに役に立つのです。

結論:王様の耳はロバの耳
逆説的ですが、コンサルティングファームが「AI活用」を叫べば叫ぶほど、「コンサル不要論」が近づいてきます。

彼らが優秀であればあるほど、裏でAIを使っているはずです。 だとしたら、私たちが彼らから学ぶべきは、彼らが作ってくれた「立派な戦略資料」ではありません。 彼らが決して見せてくれない、「裏でどうやってAIを使っているか(手の内)」そのものです。

企業経営者の皆さん。 「コンサルに頼んでAI導入計画を作ってもらう」のは、もうやめましょう。 それは、「スマホの使い方を、隠れてスマホで検索している人にお金を払って教えてもらう」ようなものです。

今すぐ、全社員にセキュアなAI環境を与えてください。 そして、コンサルタントがひた隠しにしている「生産性の魔法」のタネ明かしを、自社の中で起こすのです。

必要なのは「研修」ではありません。「環境」です。 習うより慣れろ。それが、AI時代の唯一の真実です。

▼次回予告 【Vol.4】最終回。我々が目指すべき「AI民主化」の景色。経営者が決断すべき、たった一つのこと。

※本コラムは筆者の個人的な考察であり、特定の企業の信用を毀損する意図はありません。あくまで「AI時代における専門家のあり方」への問題提起です。

今回のコラム(Vol.3)に登場した、経済用語やコンサル業界の専門用語を解説します。 記事の文脈(コンサルタントの価値を問い直す視点)に合わせて、少し皮肉や本質を突いたニュアンスで説明しています。


経済・ビジネス用語
情報の非対称性(Information Asymmetry)

本来の意味: 「売り手」と「買い手」の間で、持っている情報量に格差がある状態のこと。

コラムでの文脈: 「コンサルタントは知っているが、クライアントは知らない」という知識の格差こそが、コンサルの高額な報酬の正体でした。しかし、AIが普及して誰でも知識にアクセスできるようになると、この格差(=コンサルの価値)が消えてしまうことを指しています。

裁定取引 / アービトラージ(Arbitrage)

本来の意味: 同一の価値を持つ商品に一時的な価格差が生じた際、安い方で買って高い方で売り、その差額(利ざや)を稼ぐこと。「サヤ取り」とも呼ばれます。

コラムでの文脈: 原価の安い「AIの出力(月額数千円)」を、付加価値をつけて高額な「コンサルティング資料(数百万円)」としてクライアントに販売し、その差額で儲けているのではないか、という批判的な比喩として使っています。

ダブルスタンダード(Double Standard)

意味: 二重基準。「自分はいいけど、あなたはダメ」という不公平な使い分けのこと。

コラムでの文脈: コンサルタント自身はルールを無視してAIを自由に使いこなしているのに、クライアントには「ルールを作って厳重に管理しましょう」と提案する矛盾を指します。

ブラックボックス(Black Box)

意味: 内部の構造や仕組みが見えない状態のこと。

コラムでの文脈: コンサルタントに仕事を依頼してから、アウトプットが出てくるまでの「思考プロセス」のこと。昔はそこに「徹夜の努力」や「熟考」が詰まっていましたが、今は「AIによる自動生成」が入っているかもしれない、という意味です。


AI・コンサル現場用語
ベストプラクティス(Best Practice)

意味: 過去の成功事例に基づいた「最も効率的で効果的な方法」「模範解答」。

コラムでの文脈: コンサルが売る主要な商品の一つ。これまではコンサル会社内のデータベースにしかありませんでしたが、今はAIに聞けばある程度のベストプラクティスを教えてくれるようになりました。

プロンプト(Prompt)

意味: AIに対する「指示出し」や「質問」のテキストのこと。

コラムでの文脈: 「野生のプロンプト」という言葉で、現場社員が自分の悩み解決のために必死に入力する、泥臭くてリアルな指示のことを表現しています。

壁打ち(Kabe-uchi)

意味: 誰かに話を聞いてもらうことで、自分の頭の中を整理したり、アイデアをブラッシュアップしたりすること。テニスの壁打ち練習が語源。

コラムでの文脈: これまでは上司や同僚とやるものでしたが、今は「AI相手に壁打ち」をするのが最も高速な思考整理術となっています。

ソリューション(Solution)

意味: 課題解決策。

コラムでの文脈: コンサル用語の代名詞。「松・竹・梅の3パターン」のように、AIに複数の解決策を出させるシーンで使われています。
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