設計の仕事を始めて25年。これまで1000組を超えるご家族の家づくりに関わってきました。
住宅相談をしていると、引き渡しの後に、決まって耳にする言葉があります。
「もっと早く聞いておけばよかったです」
「まさか、そこまで確認することだとは思いませんでした」
「契約する前に、知っておきたかった」
不思議なのは、こうおっしゃる方ほど、実はとても勉強熱心だということです。
SNSで情報を集め、家づくりの本を何冊も読み、休日には住宅展示場を回る。誰よりも準備をしてきたように見える方が、後になって後悔される。最初の頃、私はその理由がうまく説明できませんでした。
長く現場にいて、ようやく見えてきた答えは、拍子抜けするほどシンプルなものでした。
知識は十分に増えている。けれど、その知識を「目の前の担当者に確認する」ところまでは、たどり着けていなかったのです。
たとえば、こんなことです。
この見積もりのほかに、あとから必要になるお金はありますか。
標準仕様とオプションの境目は、どこですか。
将来のメンテナンスには、どのくらいかかりますか。
この間取りに弱点があるとしたら、どこでしょう。
実際に住んだ方から、多い後悔はありますか。
どれも、難しい質問ではありません。
それでも、多くの方が口に出せずにいます。
「こんなことを聞いていいのだろうか」「担当者さんに失礼じゃないか」「素人だと思われたら恥ずかしい」。そんな小さな遠慮が、言葉を飲み込ませてしまうのです。
この「聞けない心理」は、私はとても自然なものだと思っています。相手は専門家で、自分は初めての家づくり。気を悪くさせたくないという気持ちも、よく分かります。けれど、その遠慮が積み重なった先で起きることを、私は何度も見てきました。
契約のあとや、工事が始まってから、「聞いていなかった」「知らなかった」「そういう意味だったのか」と気づく。一つひとつは小さくても、それが重なると、せっかくの新しい暮らしに小さな影を落としてしまいます。
誤解しないでいただきたいのは、これは営業担当者や設計者が不親切だから起きるのではない、ということです。家づくりは、決めることが本当に多い。一度の打ち合わせで何十項目も話が進み、丁寧に説明されても、すべてを覚えておくのは誰にとっても難しいのです。だからこそ、その場で「確認する」ことが効いてきます。
これまでたくさんのご家族とお話ししてきて、はっきり感じることがあります。満足度の高い家づくりをされる方ほど、質問が上手なのです。
といっても、特別な専門知識をお持ちなわけではありません。ただ素直に、「それはなぜですか」「もし、こうなったらどうなりますか」と聞いている。それだけです。質問できる人が成功するのは、知識が多いからではなく、思い込みのまま進めず、その都度立ち止まって確かめているからなのだと思います。
家づくりは、人生で一番大きな買い物かもしれません。遠慮はいりません。納得できるまで確認することは、わがままではなく、ご家族のこれからの暮らしを守ることにつながります。
私自身、住宅相談の中で、同じ後悔を何度も聞いてきました。その経験から、契約前から打ち合わせ中まで使える質問と、実際によく寄せられるご相談を、一冊に整理してみました。よければ、お守りのような気持ちで覗いてみてください。
これから家づくりを始める方、契約を前に少し不安を感じている方の、心強い味方になれたら嬉しいです。
▼契約前に確認しないと後悔する ハウスメーカー質問集100