「あの時代は、みんなそうだったのよ」
「親は、あなたのためを思ってやったことなんだから」
親との関係について悩んでいるとき、こんな言葉をかけられて、余計に苦しくなったことはありませんか?
悪気はなかったのかもしれない。時代が違ったのかもしれない。頭ではそう理解できても、あのとき自分が感じた苦しさは、確かにあった。
今回は、親の世代の「当たり前」と、今の「当たり前」の違いについて考えてみたいと思います。
親にとっての普通と、子どもが感じた痛み
まず、最初にお伝えしたいことがあります。
親の世代にとって、それが当たり前だったこと。そして、あなたが傷ついたこと。この2つは、同時に成立します。
「当時は普通だった」ということは、「子どもは傷つかなかった」という意味ではありません。
そして、傷ついたからといって、親を最低の人間だと決めつけなければならないわけでもありません。
この記事は、親を責めるためでも、親の行動を正当化するためでもありません。時代の背景を知ることで、あなたが自分の気持ちを否定しなくて済むように、という思いで書いています。
「当たり前」の基準は、時代とともに変わっている
子育てに関する考え方や社会の基準は、少しずつ変化しています。
日本では、2020年4月に施行された改正法によって、親権者による体罰が法律で禁止されました。また、2022年の民法改正では、親権者の「懲戒権」の規定が削除され、子どもの人格を尊重することや、心身の発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならないことが明記されました。
つまり、かつて「しつけだから」と受け止められていた行為も、現在では見直されているものがあります。
もちろん、すべての親が同じ考え方で子育てをしていたわけではありません。ただ、親が育った時代と、今の子育てに関する価値観には、違いがあるのです。
親の世代に多かったかもしれない「しつけ」
家庭によって事情は異なりますが、以前は次のような関わり方が、しつけや教育として受け入れられていたことがあります。
- 「男の子なんだから泣くな」「我慢しなさい」と感情を抑えさせる
- 成績や結果を重視し、子どもの気持ちにはあまり目を向けない
- 「あなたのため」と言い、子どもの意見より親の判断を優先する
- 厳しく叱ることが、愛情や責任感の表れだと考える
親自身も、そのような環境で育ってきたのかもしれません。
自分の感情を受け止めてもらう経験が少なかった人は、子どもの感情をどう扱えばよいのか、知らないまま親になることもあります。
当時は、今ほど心理学や子どもの心に関する情報に触れやすい環境ではなかったことも考えられます。
ただし、ここで大切なのは、親が知らなかったことと、子どもが傷ついたことは別の問題だということです。
「悪気がなかった」と「傷ついた」は別の話
親に悪意はなかった。
でも、子どもは傷ついた。
親は普通のことだと思っていた。
でも、子どもにとっては怖かった。
こうしたことは、十分に起こり得ます。
「親に悪気はなかったんだから」と言われても、あなたの傷つきが消えるわけではありません。
一方で、自分が傷ついたと認めることは、親を憎み続けなければならないという意味でもありません。
理解することと、許すことは違います。
親の事情を知ったとしても、無理に許す必要はありません。今まで通りの関係を続ける必要もありません。
親との関係を見つめ直すことで、できること
親の世代の価値観を知ることは、あなた自身の気持ちを整理するきっかけになります。
①「当時は普通でも、私はつらかった」と認める
当時の基準では普通だったとしても、「あのとき苦しかった」と感じてよいのです。自分の感覚を、後から否定しなくても大丈夫です。
② 親に理解してもらうことを、ゴールにしない
親が今も昔の価値観を持っている場合、あなたの気持ちを理解してもらうことが難しいこともあります。
理解してもらえなかったとしても、あなたの感じ方が間違っていたことにはなりません。
③ 自分の中に残っている親の影響に気づく
親から受けた言葉や関わり方は、大人になってからも無意識に残っていることがあります。
「失敗してはいけない」「人に迷惑をかけてはいけない」「自分の気持ちより相手を優先しなければ」
そんな思い込みに気づくことで、これからの人間関係を少しずつ選び直せるかもしれません。
④ 親との距離は、自分で決めていい
親を理解することと、これまで通り付き合い続けることは別です。
連絡の頻度を減らす、会う時間を短くする、話したくない内容には答えない。
自分の心を守るために、距離を調整してもよいのです。
回避型の彼との関係にも、つながる視点
親との関係で身につけた感情の扱い方は、大人になってからの恋愛にも影響することがあります。
たとえば、幼い頃から感情を抑えることが求められてきた人は、親密な関係の中でも、自分の気持ちを表現することに苦手意識を持つ場合があります。
回避的な愛着傾向についても、養育者との関係や、感情への反応が影響する可能性が考えられています。
ただし、回避型だから必ず親に問題があった、というわけではありません。彼の過去を、あなたが推測だけで決めつけることもできません。
そして、ここはとても大切なことです。
彼の背景を理解することは、あなたが傷つき続ける理由にはなりません。
彼自身が自分の傾向に気づき、向き合おうとする意思も必要です。あなたが彼の気持ちを代わりに整理し、変えてあげることはできません。
最後に
親の「当たり前」と、今の「当たり前」は違うことがあります。
親に悪気がなかったことも、当時はそれが普通だったことも、事実かもしれません。
でも、あなたが傷ついたことも、同じように大切な事実です。
時代の違いを知ることは、親を許すためではなく、自分を責めすぎないためにあります。
親との関係について、誰にも話せずに抱えている気持ちはありませんか?
無理に答えを出さなくても大丈夫です。まずは、今感じていることを言葉にするところから始めてみませんか。
一人で気持ちを整理するのが難しいときは、あなたのペースに合わせてお話をお聞きします。1分からのご相談も大歓迎です。