「話し合おうとすると、彼が黙り込んでしまう……」
「もっと親密になりたいのに、距離を置かれてしまう」
回避型の傾向がある彼と付き合っていると、相手の気持ちが分からず、不安になってしまうことはありませんか?
何か気に障ることを言ってしまったのか、それとも自分への気持ちが冷めてしまったのか……。
彼の態度を見ているうちに、「私が悪いのかな」と自分を責めてしまう女性もいるかもしれません。
実は、回避型の傾向が見られる人の中には、幼少期の親子関係や過去の人間関係で身につけた「自分を守るための反応」が、大人になってからの恋愛に影響している場合があります。
今回は、愛着理論の先駆者であるジョン・ボウルビイの著書『母子関係入門』を参考に、幼少期の経験が大人の人間関係にどのような影響を与える可能性があるのかを解説します。
1. 自分の本音を出すことが怖くなった背景
回避型の傾向が見られる人の中には、幼い頃、自分の怒りや悲しみ、不安といったネガティブな感情を、親に十分に受け止めてもらえなかった経験を持つ人もいます。
ボウルビイは、子どもが敵意や嫉妬心などの感情を表した際、親が過度に処罰したり、罪悪感を抱かせたりすることの影響について述べています。
一部の親は(中略)子どもに、敵意や嫉妬心は悪いばかりでなく危険な可能性もあることを強く印象づけるべきだと思っています。(中略)どちらの方法によっても、子どもは自らの感情におびえ、罪の意識を抱き、こうした感情を地下に追いやるようになります。
(出典:ジョン・ボウルビイ著 / 作田勉 監訳『母子関係入門』P.18)
こうした環境では、子どもが自分の感情を恐れるようになり、表に出さずに抑え込むことがあると考えられています。
たとえば、子どもが不満を口にしたときに、
「そんなことを言う子は嫌い」
「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」
「親を困らせるようなことを言わないで」
と繰り返し否定されていたら、どうなるでしょうか。
子どもは次第に、「自分の気持ちを伝えると怒られる」「本音を見せると嫌われてしまう」と感じるようになるかもしれません。
そして、自分の感情を表に出さないことが、心を守るための方法になっていく場合があります。
このような経験が大人になってからの人間関係にも影響し、親しい相手に対しても本音を伝えることに不安や警戒心を抱くことがあるのです。
事例:弱音を吐けず、突然距離を置いてしまう男性
たとえば、仕事で大きなストレスを抱えている30代の男性Aさん。
彼女から「最近、仕事が大変そうだけど大丈夫?」と心配されても、「別に何でもないよ」と笑顔で答え、本当の気持ちを話そうとしません。
やがてストレスが限界に近づくと、彼女への連絡も減り、ひとりになろうとします。
Aさんは幼少期、弱音や不満を口にすると「我慢しなさい」「わがままを言うな」と強く叱られて育った、という背景があったとします。
その経験から、つらい気持ちを誰かに伝えることに抵抗を感じ、感情が大きくなるほど、人との関わりを避けるようになっていたのかもしれません。
もちろん、実際に彼が距離を置く理由は本人にしか分かりません。ただ、このように過去の経験から身につけた反応が、現在の恋愛に影響している可能性は考えられます。
2. 愛情を求めることを諦めてしまった背景
もうひとつ考えられるのが、幼少期に愛情や世話を求めても、十分に応えてもらえなかった経験です。
ボウルビイは、子どもが親から愛情や世話を求めることを、重要な欲求として取り上げています。
本当に重大な欲求不満は、親からの愛と世話を求める子どもの要求に関連した欲求不満です。これらの要求が満たされていれば、ほかの欲求不満はほとんど問題ではないのです。
(出典:ジョン・ボウルビイ著 / 作田勉 監訳『母子関係入門』P.19)
幼い子どもにとって、寂しいときに寄り添ってもらうことや、不安なときに安心させてもらうことは、心の成長に関わる大切な経験です。
しかし、甘えたいときに十分に応えてもらえなかったり、助けを求めても受け止めてもらえなかったりする経験が重なると、子どもは「人に期待しても無駄なのかもしれない」と感じるようになることがあります。
そして、誰かに何かを求めること自体を避けることで、傷つかないように自分を守ろうとする場合もあるのです。
事例:彼女の「会いたい」を重く感じてしまう男性
たとえば、彼女から「最近寂しいから、もっと会いたい」と伝えられると、「そんなこと言われても無理」「重い」と突き放してしまう30代の男性Bさん。
彼は幼少期、親が忙しく、寂しいときに甘えたくても十分に応えてもらえなかった経験があったとします。
そのため、人に期待したり、自分の寂しさを伝えたりすることに、慣れていなかったのかもしれません。
大人になった今、恋人からまっすぐに愛情や甘えを向けられても、どう応えればよいのか分からず、戸惑いを感じることがあります。
その戸惑いが、冷たい言葉や距離を置く行動として表れてしまう可能性も考えられます。
このように、過去の経験によって身につけた心の守り方が、親密な関係を築く場面で影響することがあるのです。
ただし、すべての回避型の人が同じ幼少期を過ごしているわけではありません。また、相手の冷たい態度が必ずしも過去の傷つきによるものとも限りません。
彼の行動の背景をひとつの可能性として理解しつつ、実際に何を感じているのかは、本人との対話を通して確かめていくことが大切です。
3. 相手の過去を理解することと、自分を犠牲にすることは違う
彼の態度の背景に、過去の経験が関係しているかもしれないと知ると、これまで理解できなかった行動にも、別の見方ができるようになるかもしれません。
「本音を話すことが怖いのかもしれない」
「誰かに甘えることに慣れていないのかもしれない」
そう考えることで、彼の行動をすべて自分への拒絶だと受け止めずに済む場合もあります。
では、そんな彼と向き合うためには、どのようなことを意識すればよいのでしょうか。
大切なのは、相手が安心して気持ちを伝えられる関係を目指すことです。
たとえば、彼が自分の気持ちを話してくれたときには、すぐに否定したり、正しさを判断したりせず、まずは話を聞いてみる。
また、彼がひとりの時間を必要としているときには、その気持ちを尊重しながらも、自分が寂しいと感じていることや、望んでいる関わり方を落ち着いて伝えてみることも大切です。
ただし、彼の過去を理解しようとするあまり、あなた自身の気持ちを我慢し続ける必要はありません。
連絡が途絶えることや、話し合いを避けられることに苦しさを感じるなら、その気持ちを大切にしてよいのです。
相手の事情を理解することと、自分が傷つく関係を受け入れることは別の話です。
お互いの気持ちを尊重しながら、無理なく関われる距離を探していくことが、健やかなパートナーシップにつながります。
4. 過去を責めるのではなく、これからの関係を考える
この記事を読んで、自分自身の幼少期を振り返ったり、彼の親子関係について考えたりした方もいるかもしれません。
親もまた、自分が育ってきた環境や価値観をもとに子どもと接しています。愛情を持って育てていたとしても、結果的に子どもの気持ちを十分に受け止められなかったこともあるでしょう。
だからといって、幼少期に傷ついた経験や、そのときに感じた悲しみまで否定する必要はありません。
大切なのは、誰かを責め続けることでも、自分の気持ちを押し殺すことでもなく、過去の経験が今の自分や人間関係にどのような影響を与えているのかを知ることです。
愛着について学ぶことは、自分や相手の反応を理解するためのひとつの手がかりになります。
そして、これからどのような関係を築いていきたいのかを考えることもできます。
もし彼自身が自分の反応に気づき、少しずつ向き合っていこうとするなら、ふたりで安心できる対話を重ねていくこともできるでしょう。
一方で、彼に変わる意思が見られない場合や、あなたが一方的に我慢し続けている場合には、今の関係が自分にとって心地よいものなのかを見つめ直すことも必要です。
まとめ:彼の心の防衛反応を理解し、自分の気持ちも大切に
回避型の傾向が見られる人の中には、幼少期の親子関係や過去の人間関係を通じて、自分の本音を抑えたり、人に期待することを避けたりする反応を身につけてきた人もいます。
その反応が、大人になってからの恋愛で、心を閉ざしたり、親密になることを避けたりする行動につながっている可能性があります。
彼の態度に悩んだときは、その背景にあるものを想像することで、これまでとは違った視点を持てるかもしれません。
しかし、彼の本心を決めつけることはできませんし、過去の経験を理由に、あなたがつらさを我慢し続ける必要もありません。
相手を理解しようとすることと同じくらい、自分の気持ちや限界を大切にすることも忘れないでください。
安心できる関係は、どちらか一方が努力し続けることで築くものではなく、お互いの気持ちを尊重しながら、少しずつ育んでいくものです。
「彼のことを理解したいけれど、どう接すればよいのか分からない」
「心の距離が縮まらず、ひとりで悩んでいる」
そんな方は、今の関係を一緒に整理してみませんか?
【カウンセリングのご案内】
回避型の彼との向き合い方や、恋愛で繰り返してしまう悩みについて、あなたの状況に合わせて丁寧にお話を伺います。
彼の気持ちを決めつけるのではなく、あなた自身がどうしたいのか、どのような関係を望んでいるのかを一緒に考えていきましょう。
ひとりで抱え込まず、ぜひお気軽にご相談ください。