「リンゴづくりの仲間」
あるところに、リンゴ畑がありました。
畑の責任者は、一人の男性で、男性と一緒に
ミミズ、蜂、馬、猿が働いていました。
ある日、男性は言いました。
「生産性を上げるために、少数精鋭でやっていこう。
そのためには、全員が同じ仕事をできるようになった方がいい」
そして仕事のやり方をマニュアルにして、
ミミズにも、蜂にも、馬にも、猿にも、同じように仕事をさせました。
動物たちは、少しでも良い点数をつけてもらおうと、一生懸命マニュアルを
守って働きました。
ある日、ミミズが蜂に言いました。
「僕、どうしても木に登れないんだ」
蜂も言いました。
「僕は一人じゃリンゴを運べないんだ」
馬は困ったように言いました。
「どうしてもリンゴに歯型がついてしまう」
猿も言いました。
「リンゴはもげるけど、たくさん運ぶことはできないよ」
それでもみんな、
できないことをできるようになろうと頑張り、無事にリンゴが成りました。
男性は、できあがったリンゴを市場へ売りに行きました。
すると、
「去年のリンゴの方が美味しかったね」
とお客さんに言われました。
翌年には、
「一昨年のリンゴの方が美味しかったね」
とお客さんに言われました。
男性は首を傾げながら畑に戻り、
動物たち一人ひとりの働きを評価しました。
「ミミズは木にも登れないから5点」
「蜂は一人でリンゴを運べないから10点」
「馬はリンゴに歯型をつけちゃうから50点」
「猿はたくさんもいでくれたから75点」
動物たちは、もっと良い点数をもらおうと、さらに頑張りました。
でも、リンゴは年々美味しくなくなっていきました。
数年後、とうとう誰もその畑のリンゴを買ってくれなくなりました。
それからしばらくして、畑の責任者が一人の女性に変わりました。
女性は畑へ来ると、
まず動物たちが働いている様子をじっと見ました。
そしてミミズに聞きました。
「今、何をしているの?」
ミミズは答えました。
「木に登ろうとしています」
「どうして木に登ろうとしているの?」
「そうした方が良いと言われたからです」
女性は蜂にも聞きました。
「あなたは何をしているの?」
「リンゴを運ぼうとしています」
「どうして?」
「男性が、その方が良いと言ったからです」
女性は、馬にも猿にも聞きました。
みんな同じように、
男性が言ったことを信じて働いていただけでした。
女性は、みんなを集めて言いました。
「明日から私と一緒に違うルールでリンゴづくりをしない?」
動物たちは訳が分かりませんでした。
女性は、ミミズに言いました。
「土に潜って、どんどん土を食べてくれる?」
ミミズは「わかりました」と答えました。
蜂には、
「たくさんのお花に挨拶をしてきてくれる?」
蜂は「わかりました」と答えました。
馬には、
「このカゴがリンゴでいっぱいになったら運んでくれる?」
馬は「わかりました」と答えました。
猿には、
「一番美味しそうになったリンゴだけを選んで、もいでカゴに入れてくれる?」
猿は「わかりました」と答えました。
それから
ミミズは、張り切って土を耕し、
蜂は、歌いながら花から花へ飛び回って挨拶をして回りました。
馬は、リンゴを運ぶ仕事ができるまで畑の隅で土のための肥料を作りました。
猿は、一つひとつリンゴを見ながら、食べ頃の美味しそうなリンゴだけを選んでカゴに入れました。
カゴがリンゴでいっぱいになると馬が女性の元へ運びました。
女性はリンゴを洗って、丁寧に箱に詰め、市場へ売りに行きました。
厳選されたピカピカのリンゴは、あっという間に売り切れました。
「こんなにきれいなリンゴは初めて」
と喜ぶ人もいました。
次の日には、
「昨日のリンゴ、すごく美味しかったよ」
と、また買って帰ってくれる人もいました。
動物たちは女性に聞きました。
「どうして僕たちのリンゴ、全部売り切れたの?」
女性は言いました。
「みんなが得意なことをやったら美味しいリンゴができて当然でしょ?」
少し考えてから猿は言いました。
「この土は、ミミズさんだからできたんだよね。
僕じゃ、こんなにうまくできないよな」
馬は言いました。
「花から花へ、花粉を届けるのは蜂さんじゃないとできないよね」
蜂は言いました。
「食べ頃のリンゴを目利きできるのは、猿さんだからだよね」
ミミズは言いました。
「あんな重たいものは、馬さんじゃないと運べないよね」
みんなは顔を見合わせました。
そして、猿が言いました。
「どうして僕たち、無理なことを無理やりやろうとしていたんだろうね。
良い点数をもらって、いつかあの男性みたいに、点数をつける側にでもなりたかったのかな」
少しして、ミミズが言いました。
「そもそも、なんで僕たち、あの人に高い点数をつけてもらおうとしていたんだろう?」
みんなは、しばらく黙って考えました。
「・・・なんでだろうね」
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私は苦しいと感じながら、苦しいと思う自分がおかしくて、
社会の当たり前が正しいのだと疑いもせず信じていた。
生まれた時から、そのゲームの枠の中にいると、
そのゲームのルールがおかしいことには気づきにくい。
でも私は、誰かが作ったルールのゲームに参加しているだけだった
と気が付いてしまった。
だから私は、そのゲームからは出ることにした。
ゲームが正しいか、間違えているか、ということではなく、
そのゲームのルールを、自分の人生のルールにするか・しないかを
自分が選択することが本当は大事なことだと思う。
とはいえ、そもそも自分がゲーム内で生きていることに気が付かない
場合もあるしね。