「虹色の鳥」
ある場所で、虹色の羽をもった雛が生まれました。
その雛は両親からたくさんの愛情をもらい、大切に育てられました。
「私たちは美しい羽を神様から与えられたの。神様の近くへ行くために、
いつも良い行いをしましょうね」
「良い行いって、どんなことをすればいいの?」
「たくさんのものに愛を与えなさい」
「うん、わかった」
「良い子ね」
そうして、虹色の雛は立派な鳥になり、大人の鳥として良いことをするために
旅に出発しました。
ある雨の日、虹色の鳥は木で休んでいました。
「今日は冷えるなぁ。僕には雨をはじく羽があるから、雨でも平気だ」
虹色の鳥は、自分の羽の上で雨粒が丸くなるのを見て楽しんでいました。
ふと横を見ると、木のうろに栗鼠の子供がいるのを見つけました。
栗鼠の子供は巣の入口近くで、雨に濡れて凍えていました。
「お母さんはまだ戻ってこないのかい?」
と虹色の鳥は聞きました。
でも、栗鼠の子供は寒くて声も出せないようでした。
虹色の鳥は、栗鼠の子供を雨から守ってあげることにしました。
羽で温められて、声が出せるようになった栗鼠の子供が言いました。
「お兄ちゃんの羽は大きくて、雨をはじくなんてすごいね」
「そうだろう?声が出るなら、もう大丈夫だね。
お母さんが戻るまで、雨に濡れないようにしておくよ」
「うん、ありがとう」
そう言って、虹色の鳥は自分の羽を何枚か抜いて、雨が入らないように
木のうろの入口にかけて飛び立ちました。
しばらく飛んでいると、大きな木の根元で、怪我をして動けなくなっている
子猫を見つけました。
「動けないのかい?」
声をかけても返事がないので、虹色の鳥は木の根元のくぼみに子猫を運び、
自分の羽毛を抜いて寝床を作りました。
ふわふわの羽毛に包まれて安心した子猫は、眠ってしまいました。
しばらくして子猫が目を覚ますと、
ふわふわの羽毛の横に小さな魚が置いてありました。
「目が覚めたかい?さあ、これを食べて元気になるんだよ。僕はもう行くよ」
そう言って、羽が減った虹色の鳥は飛び立ちました。
しばらく飛んでいると、道に座り込んで泣いている人間の少女を見つけました。
虹色の鳥は声をかけることにしました。
「君はどうして泣いているんだい?」
少女は答えました。
「お父さんから預かったお金を川に落としてしまって、
パンを買えなくなってしまったの」
「そうなのか。それじゃあ、僕のこの羽を町の道具屋へ持っていくといい」
「まぁ、きれい。こんな羽は見たことがないわ」
「そうだろう?珍しい羽だから、きっと食べ物と替えてくれるよ」
虹色の鳥はキラキラした羽を抜き、少女に与えて飛び立ちました。
虹色の鳥は空の上から、少女が羽を売り、無事にパンを買うところを見て安心しました。
「良かった。これであの子は安心だ」
その時、少し強い秋風が吹き、
羽の減った虹色の鳥はバランスを崩しました。
「少し羽が減りすぎたかな。
でも、羽はまた生えるし、良いことをする方が大切だ」
そう言って、虹色の鳥はどんどん自分の羽を困っている者たちへ与えて回り、
とうとう与える羽がなくなってしまいました。
「どうしよう。これでは飛ぶこともできない。良いことをすることもできない。
僕はもう役立たずだ。
なんてことだ。神様の近くへ行くこともできないなんて。
僕はなんて親不孝なんだ」
虹色の鳥は、おいおいと泣き出しました。
そこへ、羊を連れたおじいさんが通りがかり、
羽のない鳥を見て言いました。
「なんて痛々しい姿なんだ。かわいそうに。
これでは寒いだろう。うちにおいで」
おじいさんは虹色の鳥を抱きかかえ、家に連れて帰りました。
そして、羽のない鳥の肌に薬を塗り、栄養のある食べ物を与え、
暖かい布をかけてあげました。
「君は、本当はどんな姿の鳥なのだい?
どうして羽がなくなってしまったのだい?」
「僕は、虹色の美しい羽を持った鳥でした。
神様からもらった羽で周りを幸せにするように教わったので、
僕の羽をあげる旅をしていました」
「そうか……。君の力は何だと、君は思う?」
「……僕の力?
美しい羽をあげて、周りを幸せにすること……かな?」
おじいさんは飼い犬を呼びました。
「お前の力はなんだい?」
「おいらの力は、この速く走れる足と大きな声さ。
それに牙もあるぜ。それで羊たちを守るのさ」
おじいさんは羊にも質問しました。
「お前たちの力はなんだい?」
「私たちの力は、このモコモコにたくさん生える毛よ。
毛を刈られても、また生えてくるわ。
おかげで、おじいさんの服はポカポカでしょ?」
犬は羽のない鳥を見て言いました。
「お前、何の生き物なんだ?」
「……僕は鳥」
「鳥なのに羽がなくて、飛べない鳥ってことか?」
羽のない鳥はハッとして、涙を流しました。
「そうか。
僕の力は飛ぶことだ。
僕は、自分から飛べなくなることをしてしまっていたんだ」
おじいさんは言いました。
「美しい羽を周りにあげて幸せにすることは良いことだ。
でも、それも自分の力があるからできることなんだよ」
そう言って、おじいさんは鳥の頭をなでてあげました。
冬が過ぎ、おじいさんの家で身体を休めた鳥は、
春には以前のような虹色の美しい羽を取り戻しました。
虹色の鳥は、久しぶりに空を飛んでみました。
飛んでいるうちに一枚の羽が自然に抜け、
おじいさんの目の前に落ちました。
おじいさんは虹色の羽を拾い、言いました。
「それが君の本当の姿なんだね。
君から自然に落ちた羽でも、幸せになる誰かがいる。私のようにね」
虹色の鳥は言いました。
「この自慢の美しい羽は、僕が飛ぶためにあるのだということを忘れません。
そして、これからも旅を続けていきます」
そう言って、虹色の鳥は空へ飛び立ちました。
遠く遠く、いろいろな場所を飛びながら、
今度は自分の羽を失うことなく、
たくさんの生き物を幸せにしながら旅を続けました。
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まじめで一生懸命すぎる人が私の近くにもいる。
「他人のために」と行動することは、もちろん良いことだと思う。
でも、自分のことも
その「他人」の中に含ませてあげてみてはどうだろうか。