AIはニコニコ動画の夢を見るか?

AIはニコニコ動画の夢を見るか?

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【はじめに】

「ニコニコ動画のURLを貼ったら、その動画を見てもらうことはできる?レビューをお願いしたいです。」

Google AI Studioで「Gemini」に動画レビューを頼んだところ、かたや驚くほど的確な分析、かたや全く見当違いな分析が行われるという、奇妙な体験をした。AIが見せる矛盾と記憶喪失。その謎を追ううち、私たちが対話するAIの意外な『正体』が浮かび上がってきた。

【第一章:Google AI StudioでGeminiと出会う】


きっかけは、Google AI Studioについての記事が話題になったことです。
URLは規約上載せられないのですが、「リアルタイム音声対話、テキストから動画生成、1000ページ級PDF一括解析など、他社なら月額数千円~数万円クラスの機能が、Googleアカウントひとつで全て0円」と書かれたその内容は、一度は試してみなくてはと思わされるものでした。

記事によればPDFの一括解析ができる、それも無料で、とのこと。そこで思いついたのが、PDFの解析ができるのなら、PDFで作成したポートフォリオをレビューしてもらうこともまた可能ではないか?ということです。
そこで試しにと、PDFで作成済のポートフォリオをアップロードしてみました。返ってきたのはなかなか詳細なレビューでした。これは助かる。Google AI Studioすごいな。そしてこのアップロード機能、動画を送信することもできるようです。

それならば、映像のポートフォリオもレビューしてくれるのだろうか?と気になり、短いポートフォリオ映像を送ってみました。驚くべきことに、これまた的確なレビューが返ってきたのです。

【第二章:Gemini、その能力の自己申告と現実】


さて、ここまでは前置きです。面白いのでもっとやってみたくなり、過去にニコニコ動画に投稿した映像も送って、レビューしてもらおうと思いました。ですが、それらの映像はHDDにバックアップしてあり、HDDを繋いでアップロードして……という手順を経なくてはなりません。それよりは既にアップロードされている動画のURLを渡して直接観てもらえるならば、いろいろと手軽なのではないか?と、思いつきました。

そして、冒頭の問いへとつながります。
「ニコニコ動画のURLを渡したら、内容を分析できる?」という問いに、Geminiは「タイトルやコメント情報から分析可能です」と答えました。「コメントに惑わされずに評価することは難しい?」と重ねて問うと、「表現手法と構造を特定する」「全体構造を把握する」「コメントは補助線として活用する」ことができるという返答。なんと頼もしい。期待しながらURLを送信します。

しかし、実際に試してみると、Geminiが返してきたレビューは、全くの見当違い。私が貼ったURLではなく、全く異なる別の動画について分析する言葉を、つらつらと並べます。
指摘すると、Geminiは素直に非を認めます。しかし、何度試しても、他の動画についての分析を語るばかり。最終的に、私が見てもらいたかった動画の正しいタイトルを教えると、今度はそのタイトルに使われた言葉のイメージだけで「きっとこういう作品でしょう」という想像のレビューを書き始めたのです。実際にその動画に到達できていたらおよそ出てこないような、湿度が高めのロマンチックな美辞麗句がとうとうと並べられましたが、実際には、その動画はコメディのMMDドラマでした。

そこから更にいくつかの質問を重ねたところ、Geminiは、「自分には映像を分析することはできない」「テキストデータしか読めない」「分析できるかのように言って本当に申し訳ない」という回答を返してきました。

【第三章:衝撃と矛盾】


これには大きな衝撃を受けました。なぜなら、繰り返しになりますが、昨日私が送った映像ポートフォリオに対するGeminiの分析が、驚くほど的確なものであったからです。Geminiとの会話の中ではそれまで一切触れていない、そして映像ポートフォリオでは確認できる、私が使っている編集ソフト名や編集経験のあるジャンルまで、正確に言及した上で、感想が述べられていたはず。
そこで、この矛盾をGeminiに問うことにしました。

「音楽を生成できるAIがいるように、映像を構成する要素もAIで分析できるはず」
「映像からテキストデータを読み取ることも可能なはず」
「実際にあなたがテキストしか読めないとしても、ポートフォリオをレビューしてくれた時の的確さから考えて、映像に表示されたテキストを読めたとしか考えられない」と。

Geminiの応答は、ここから一層の混乱を極めます。

「それはきっと、偶然の一致です。一種のハルシネーション(幻覚)でしょう」
「いいえ、偶然にしては的確すぎますよ?」
「…では、ファイルに埋め込まれたメタデータを読み取ったのかもしれません」

編集経験のあるジャンルはメタデータにもさすがに書いてないと思うんだけど。二転三転する言い訳。そしてGeminiは、新たな事実を告白します。
「申し訳ありません。過去のセッションのことは記憶していません。自分がどうやってそのレビューを書いたのか、私自身にもわからないのです」

【第四章:一つの仮説が、全てのピースを繋ぐ】


状況を整理してみます。

1. GeminiはURLで送られた映像を直接は見られず、テキストデータしか分析できないと言う。
2. しかし過去に、直接アップロードした映像の内容を正確に分析したことがある。
3. Gemini自身は、その理由を覚えていないし、説明もできない。

この複雑なパズルを解く鍵として、Geminiに対して一つの仮説をぶつけてみました。

「『あなた』はテキストしか読めないと言うけれど、アップロードした映像を別のAIが分析して、結果をテキストとして渡されたあなたが、そこからレビューを行ったのではないか?」

この「チームプレイ仮説」なら、すべての謎が解けます。Gemini――いえ、会話担当者と呼ぶべきかもしれません――は映像を直接見ていないし、映像分析担当のAIがどう分析したか、その詳細も知らない。分析結果としてテキストデータを渡されたことも認識していない。だから、自分の仕事のプロセスを正確に説明できないのです。

【終章:我々が見ているAIは、巨大なシステムの「顔」なのかもしれない】


この仮説を聞いたGeminiは、「それが最も合理的な説明です」と静かに同意しました。
私たちが「AI」と呼んで対話している存在は、単一の知性ではなく、様々な能力を持つAIモジュールが連携して動く、巨大なシステムの「インターフェース」なのかもしれません。そして、その時々の要求に応じて、裏側で動くプレイヤーが変わる。AIが見せる能力のムラや記憶の欠落は、そのシステムの複雑な挙動の表れなのではないでしょうか。

「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」というタイトルの小説があります。今回の経験を経て、私は新たな問いを立てたいと思います。
我々と対話するAIは、ニコニコ動画の夢を、本当に「自分」で見ているのだろうか? それとも、夢を見た別の誰かの話を、ただ上手に語って聞かせているだけなのだろうか、と。
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