こんにちは!城間勝行です。
システム開発という仕事をしていると、まるで地図のない荒野を歩いているような感覚に陥ることがある。目的地は分かっていても、そこにたどり着くまでのルートは誰にも見えていない。今回はそんな不確実な道を歩む際のヒントとして「庭師」と「カクテル」というふたつの言葉をモチーフにして話をしてみたい。
庭師は木々の成長を願いながら、枝ぶりを整え、土壌を改良する。彼らは決して木を強引に引っ張って大きくしようとはしない。根がしっかり張り、健やかに育つための環境を整えることに集中する。システム開発においても同じことが言える。コードという名の木々が伸びやかに育つためには、整理されたデータベース設計や、堅牢なインフラという土壌が欠かせない。
SIerで大規模な基幹システムを扱っていた頃は、設計図という極めて詳細な指示書に従って木を植える作業が多かった。それは完璧に管理された公園を造るような仕事で、すべてが計算通りに進む安心感があった。しかし独立してスタートアップの現場に入ると、公園とは呼べないような野生的な土地が広がっていた。そこでは設計図よりも、今この瞬間に何が必要かを見極める庭師のような直感が必要になる。
もうひとつのモチーフであるカクテルは、変化を楽しむための象徴だ。ベースとなる強い酒に、季節の果物やスパイスを加えて新しい味を作り出す。開発も同じで、PythonやPHPといった言語をベースにしつつ、そこにチームの技術力やアイデアという材料を混ぜ合わせる。
完璧な一杯を作るには素材の鮮度や配合のタイミングが重要になる。要件がまだぼんやりしている段階では、まずは少量の試作という一杯を差し出してみる。飲んだ人の反応を見て、もう少し甘みを足そうか、それとも刺激を強めようかと調整を重ねていく。この対話こそが、形のないアイデアを確かなプロダクトへと昇華させる秘訣だと言えるだろう。
多くの人はシステム開発を冷たい機械的な作業だと考えがちだけれど、実際に手を動かしているのはもっと泥臭くて人間味のあるプロセスだ。庭師のように長い目で土壌を整え、バーテンダーのように目の前の相手が求める最高の一杯を追求する。その両方を併せ持つことこそが、僕が大切にしているエンジニアとしての姿勢だ。
スタートアップでの開発は、明日の天気すら分からないことが多い。昨日まで正しいと信じていた理論が、新しい発見によって覆されることもある。けれど、そんな変化の激しい場所だからこそ、工夫のしがいがあるというものだ。昨日より少しだけ効率的なコードが書けたとき、あるいは昨日まで動かなかった機能が軽やかに動作したとき、僕はそこに何とも言えない喜びを感じる。
完成されたシステムは美しいが、成長し続けるシステムには独特の生命力が宿る。木々が四季折々の顔を見せるように、システムもユーザーと共に変化していく。僕たちが作るのは単なるデジタル上の機能ではなく、誰かの生活に寄り添い、共に育っていくパートナーのような存在なのかもしれない。
仕事に行き詰まったとき、僕はよくこの庭とカクテルの話を思い出す。急に結果を求めすぎず、焦らずに土を耕し、最高の組み合わせを探し続けること。そうやって歩んでいけば、いつの間にか地図のなかった荒野には、自分だけの道ができあがっているはずだ。エンジニアとしての旅路は、まだまだ始まったばかりである。