月額SaaSを増やす前に考えたい|専用ツールを作ったほうがいい業務・作らないほうがいい業務
「この作業、便利なSaaSを入れれば解決しそう」
今は本当に選択肢が多いです。
顧客管理。
タスク管理。
予約。
勤怠。
請求。
フォーム。
チャット。
ファイル共有。
月額数千円から使えて、登録したその日から動く。
正直、便利です。
僕も条件が合うなら、ゼロから専用ツールを作るより既存サービスを使ったほうがいいと思っています。
ただ、気づいたら会社の中にSaaSが増えて、
Aで登録。
Bへ転記。
CからCSV。
最後はExcel。
みたいになっていることがあります。
便利なサービスを増やしたのに、なぜか手作業が残る。
今回は「SaaSを使うか」「専用ツールを作るか」を、開発者目線で分けてみます。
結論から言うと、専用ツールはSaaSの代わりではありません。
向いている仕事が違います。
SaaSが強いのは「普通に必要な仕事」
まず、世の中の多くの会社が同じようにやっている仕事。
これはSaaSが強いです。
例えば、
オンライン会議。
チャット。
クラウドストレージ。
一般的な勤怠管理。
経費精算。
電子契約。
このあたりを自社専用でゼロから作る理由は、かなり少ないと思っています。
機能だけ作れば終わりではありません。
セキュリティ。
法改正。
スマホ対応。
障害対応。
バックアップ。
アップデート。
全部自分たちで面倒を見ることになります。
既存サービスなら、その部分まで含めて月額料金です。
「毎月お金がかかるから自作したい」
という理由だけで専用化すると、逆に高くなることがあります。
はい。
小さな月額費用を消すために何日も開発したら、何をしているのか分からなくなります。
ここは冷静に見たいです。
専用ツールが強いのは「その会社だけの流れ」
一方で、会社ごとにかなり違う業務があります。
同じ「案件管理」でも、
受付。
確認。
見積。
承認。
作業。
報告。
請求。
この順番が会社ごとに違う。
使う項目も違う。
途中の判断も違う。
「この条件なら上長確認」
「ここだけ担当者を変える」
「この状態になったらPDFを作る」
みたいなルールが増えてくると、既存SaaSへ合わせるのが難しくなります。
設定だけで対応できればいいです。
でも設定では足りず、
CSVを出す。
Excelで加工する。
別サービスへ入れる。
チャットで連絡する。
という作業が残るなら、専用ツールを考える余地があります。
僕が専用化を考えるのは、
「その会社だけの手順」が仕事の中心にある場合です。
月額料金だけで比べると失敗する
SaaSと専用ツールを比較するとき、
SaaSは月3万円。
専用開発は30万円。
だったら10か月で元が取れる。
みたいな計算をしたくなります。
でも、これだけだと足りません。
専用ツールにも保守があります。
OSやブラウザが変わる。
外部APIが変わる。
業務ルールが変わる。
利用者が増える。
作ったら永久にそのまま、ではありません。
逆にSaaSにも見えにくいコストがあります。
利用者数が増えると料金が上がる。
上位プランでないと欲しい機能が使えない。
データを出して加工する手作業が残る。
複数サービスを覚える教育コストがある。
つまり見るべきは月額料金だけではありません。
「その業務を回すために、会社全体でどれくらい手間が残るか」
こっちです。
専用ツールを作ったほうがいい5つのサイン
僕なら、次の状態が複数あると専用ツールを検討します。
1. 同じ情報を何度も入力している
顧客名をAへ入力。
同じ顧客名をBにも入力。
請求時にExcelへもう一度入力。
入力が増えるほどミスも増えます。
元データを1つにして、必要なところへ使い回せないかを考えます。
2. SaaSとSaaSの間を人がつないでいる
AからCSV。
Bへアップロード。
結果をCへ転記。
毎回同じなら、かなり自動化候補です。
サービス同士にAPIがあれば連携できる場合があります。
APIがなくても、別の方法が取れることがあります。
3. 現場が結局Excelを使っている
新しいシステムを導入した。
でも現場を見ると、
「使いにくいのでExcelに出してます」
となっている。
これは結構強いサインです。
Excelが悪いわけではありません。
むしろ現場に必要な機能がExcel側にあるということです。
専用ツールを考えるなら、そのExcelを消すのではなく、
なぜExcelへ戻っているかを見ます。
4. 使わない機能のほうが多い
メニューが20個ある。
実際に使うのは3個。
利用者は毎回迷う。
この状態なら、必要な画面だけ作る価値があります。
専用ツールの強さは、足せることより削れることです。
5. その業務が会社の強みそのもの
会社独自の査定。
独自の計算。
独自の承認フロー。
独自の顧客対応。
ここを一般的なSaaSへ無理に合わせると、仕事の良さまで消えることがあります。
だったら、その部分だけ専用で作る。
他はSaaSを使う。
全部自作する必要はありません。
作らないほうがいい業務もある
逆に、僕なら専用ツールをすすめないケースもあります。
まず、業務自体がまだ固まっていない。
毎週ルールが変わる。
担当者によってやり方が違う。
何を管理すべきかも決まっていない。
この状態でシステム化すると、修正だらけになります。
先に業務を整理したほうがいいです。
次に、利用頻度が低い。
年に数回しか使わないなら、手作業のほうが安いこともあります。
さらに、一般的なSaaSでほぼ解決する。
これも無理に作りません。
僕が開発者だからといって、全部開発に持っていったらダメなんですよね。
仕事を減らすためにシステムを作るのに、
システムを作ること自体が仕事を増やしたら意味がありません。
SaaSと専用ツールは一緒に使っていい
ここを二択にしないのが大事です。
例えば、
認証は既存サービス。
ファイル保存はクラウド。
社内チャットも既存サービス。
自社独自の業務部分だけ専用Webツール。
こういう構成は普通に考えられます。
全部を自前で持つ必要はありません。
Gmailを作り直す必要もないです。
Googleドライブを作り直す必要もない。
そこは既存の強いサービスを使う。
でも、
「会社独自の受付から完了まで」
だけは自分たちに合わせる。
このほうが現実的です。
GASやPython、Webアプリは、その“間”をつなぐためにも使えます。
ChatGPTやClaude Codeで「小さく試す」がやりやすくなった
以前は、専用ツールを作るとなると最初の試作品にもそれなりに時間がかかりました。
今はChatGPTやClaude Code、Cursorを使うことで、画面や処理のたたき台を作るスピードがかなり上がっています。
その結果、
いきなり完成版を作る。
ではなく、
まず小さく動かす。
現場で触る。
必要なら増やす。
がやりやすくなりました。
僕はこの進め方が好きです。
最初から100点を目指すと、使われなかった機能まで作りがちです。
それより、
一番面倒な1工程だけ消す。
そこで本当に使われたら次へ。
このほうが無駄が少ないです。
判断するときは「月額」ではなく「残る手作業」
SaaSを入れるか。
専用ツールを作るか。
迷ったら、料金表を見る前に今の作業を書き出してみてください。
入力。
確認。
転記。
集計。
連絡。
出力。
その中で、
SaaSを入れたら何が消えるのか。
何が残るのか。
を見る。
残った部分を毎日人が処理するなら、そこを専用化できないか考える。
逆に、SaaSだけでほぼ消えるなら、それで十分です。
専用ツールは「既製品よりすごいもの」ではありません。
自分たちの仕事に余計な回り道をさせないための道具です。
月額サービスを増やす前に、
今の業務で本当に困っているのは何か。
そこから考えると、
SaaSを使うべき場所と、自分たち用に作るべき場所がかなり見えやすくなります。