見積書の一番下に「月額費用:別途」とだけ書いてある。別途の中身は書いていない。聞いてみると「サーバー代くらいですね」と返ってくる。それがいくらなのか、誰に払うのか、来年も同じ額なのか。そこまで書面に残ることは少ない。
月額課金のサービスなら話は早い。毎月いくら、と最初から書いてある。ところが受託で作ってもらう場合、毎月の費用が見積書に出てこないことがある。出てこないのは費用がないからではなく、費用の発生する場所が見積書の外にあるからだ。
今回は、その「外」がどこにあるのかを見ていく。先に結論を書くと、毎月いくらかかるかは機能の数では決まらない。サーバーを誰の名義で契約するかで決まる。
月額の正体は、誰の名前で契約されているか
アプリを動かすには、置き場所(サーバー)、住所(ドメイン)、データの保管先(データベース)が要る。この3つはどこかに必ず存在する。1つの契約にまとまっていることも多いし、住所は無料でもらえるものを使うこともある。まとまっていても、無料でも、誰の名前で申し込まれているかは必ず決まっている。
開発した側の名義で契約されていれば、その費用は開発した側に毎月発生する。発生した費用は当然回収される。名目は「運用費」「保守費」「サーバー管理費」。呼び方は違っても中身は同じだ。多くの場合、開発費に対する割合で年額が決まる。
逆に、依頼した側の名義で契約されていれば、請求はサーバー会社から直接来る。開発した相手を経由しない。この場合、開発会社に払う月額はゼロにできる。「買い切り」「月額0円」と書かれている出品は、たいていこの形をとっている。
名義が相手側にあると何が起きるか
毎月払うこと自体は、悪いことではない。設置も監視もバックアップも全部引き受けてもらうなら、対価として妥当です。問題は金額ではなく、名義が相手にあるとやめる自由が自分の手を離れる点にある。
止めたいときに自分では止められない。管理画面のIDを持っていないので、中で何が動いているかも見えない。相手が廃業したり担当者と連絡が取れなくなったりすると、支払いが続いているのか、いつ止まるのかも自分では分からない。データを取り出したくても、取り出す先のアカウントに入れない。
見落とされやすいのがドメインだ。名刺やメールに載せた住所が相手名義だと、乗り換えるときに持って行けない。アプリを作り直すより住所の移転のほうが面倒、ということが起きる。
「月額0円」が成り立つ条件
ここで言う月額0円は、作り手に払う分がゼロという意味だ。サーバー会社への支払いは依頼した側に残る。規模によっては無料枠に収まるので実際の出費がゼロになることもあるが、費用の置き場所が動いただけ、という理解が正しい。成り立つ条件は3つある。どれか1つでも欠けると、あとから月額が出てくる。
1つ目。サーバーとドメインが依頼者名義で契約されていること。当方が受ける仕事もこの形で、当方の名義でお預かりすることはしない。預かった時点で、毎月の支払いと、解約の手続きと、データを保管する責任を当方が持つことになる。それはもう買い切りではない。
2つ目。その規模が無料枠に収まること。社内の数名で使う台帳のようなアプリなら、無料枠のあるホスティングに収まることが多い。ただし「収まる」は規模の話であって、永久の保証ではありません。
3つ目。作り手が月額の保守を前提にしていないこと。ソースコードが手元にあり、他の技術者に渡せる状態なら、以後どうするかは自分で選べる。渡されない場合、直したいときの窓口が世界に1つしかないことになる。金額が書かれていなくても、これは月額と同じ効果を持つ。
無料枠を超えるのはどこか
無料枠が切れる原因は、たいてい「使う人が増えたから」ではない。増えるのは人ではなくファイルだ。
文字のデータは、思ったほど増えない。1件の案件を1行として記録していく形なら、数年分をためても小さいままだ。枠を押し上げるのは写真・PDF・スキャンした書類といった添付のほう。現場写真を1件に何枚も付ける運用なら、初年度から効いてくる。
あとは、社外の人が見る画面がある場合の通信量、24時間動かし続ける処理、通知メールの通数。この3つが無ければ、無料枠の中で長く回る見込みは高い。
判断の仕方はひとつ。毎月どれだけファイルが増えるかを、作る前に掛け算で出す。1日に何件、1件に何枚。出した数字は、契約するホスティングの無料枠の上限と並べる。上限は申込ページに必ず書いてあるので、探す手間はかからない。
スマートフォンで撮った写真は1枚で数MBになる。仮に1日20枚なら、ひと月で1GB前後という計算だ。その桁が枠の何割を食うのか、何年でいっぱいになるのか。ここまで出せば、月額の話は「別途」では済まなくなる。掛け算が出ないなら、その業務はまだ整理できていない。整理してから作ったほうが安く上がります。
「サーバー代くらいですよ」——その「くらい」が、いくらで、誰に、いつまで発生するのか。
やめるとき、手元に何が残るか
契約を切った翌日に何が残るか。発注の前に4つ書き出しておくとよい。ソースコード、データ、ドメイン、そして「別の人に引き継げるか」。
データは形式まで確認する。CSVで書き出せるのか、データベースごと渡してもらえるのか。画面から1件ずつコピーするしかない、では取り出したことにならない。当方がお渡しするのは、ソースコード一式・データベースのバックアップ手順・管理者向けの操作手順(1枚)です。
引き継げるかどうかは、作られた場所に依存する。特定のツールの上でしか動かない作りだと、そのツールを解約した瞬間に業務のロジックごと消える。何で作られているか、他の技術者が読める形か。ここは発注の段階でしか聞けない。動き出してからでは遅い。
発注前に投げる4つの質問
質問は短くていい。次の4つを、口頭ではなく文字でやり取りしておく。メッセージのやり取りが残っていれば十分だ。
4つ目は失礼に聞こえるかもしれない。だが、この質問に淀みなく答えられる相手ほど、設計が整理されている。「サーバーはお客様の名義なので、当方がいなくなっても契約が続く限り動きます」と即答できるなら、名義の話が頭の中で片付いているということだ。答えに詰まるなら、その相手の中でもまだ片付いていない。
なお、買い切りの支払いと月額の支払いでは会計上の扱いが変わる可能性があります。金額が大きくなる場合は、税理士など専門家にご確認ください。
当方は、紙やExcelで回している業務を買い切りのWebアプリにしている。当方にお支払いいただく月額はなく、サーバーは依頼者さま名義でご契約いただき、ソースコードは一式お渡し、データははじめから依頼者さまのサーバーの中にある。いま何に時間がかかっているか・使う人数・ご希望の時期が分かればお見積りできるので、まずはココナラのメッセージからご相談ください。