このポスターを見た時、あなたは何を思いましたか?
「IT企業っぽい。」
「なんだかかっこいい。」
「アイデアって言葉が印象に残る。」
人によって感じたことは違うと思います。
ですが、その印象は偶然ではありません。
デザイナーは見る人にどんな印象を持ってほしいのかを考え、
それをデザインによって意図的に作っています。
つまり、
「かっこいい」
と感じたのであれば、その”かっこよさ”を生み出す仕掛けが
必ず存在するのです。
今回は前回と同様、ポートフォリオに掲載している作品を例に、
「なぜその印象を受けたのか」
「その印象を作るためにどんな工夫がされているのか」
という視点から解説していきます。
はじめまして。
Illustratorを中心に約4年間ポスターデザインを制作している象彩堂と申します。
現在はデザイン制作サービスも販売しておりますので、興味を持っていただけた方はぜひプロフィールもご覧ください。
それでは今回はこちらのポスターを見ていきましょう。
これはIT企業の新卒採用ポスターを想定して制作したものです。
このポスターでまず注目していただきたいのは、文章ではありません。
「雰囲気」です。
実は人は、文字を読むより先に全体の雰囲気を感じ取っています。
つまり、
「未来的だな」
「IT企業っぽいな」
という印象は、文章ではなくデザインそのものから受け取っているのです。
では、その印象はどのように作られているのでしょうか。
今回は5つの視点からデザインの内側を分析してみましょう。
キャッチコピーを主役にする
このポスターで一番伝えたいことは、
「2026年新卒採用」
ではありません。
一番伝えたいのは、
「そのアイデア、終わらせるな」
というメッセージです。
普通の採用ポスターなら、「新卒採用」を一番大きくすることが
多いでしょう。
しかし、このポスターではあえてキャッチコピーを主役にしています。
その理由は、人は会社の募集内容よりも、まず共感できる言葉に惹かれるからです。
「アイデアを大切にする会社なのかな。」
そんな興味を持ってもらって初めて、採用情報を読んでもらえます。
つまり、このポスターは募集広告でありながら、
最初に売っているのは会社の価値観なのです。
情報の階層を作る
ポスターには多くの情報があります。
しかし、それらを同じ大きさ・同じ強さで並べると、
何から読めばいいか分からなくなります。
そこでデザインでは情報に順位を付けます。
このポスターでは
①キャッチコピー
②新卒採用
③募集職種
④受付期間
⑤検索欄
という順番になるよう設計されています。
このように情報を階層化することで、読む人は迷わず内容を理解できます。
情報を減らすだけではなく、順番をデザインすることも大切なのです。
世界観を統一する
このポスターでは
背景、色、フォントまで一貫して近未来・ITをイメージしたデザインになっています。
例えば背景だけ木目調だったらどうでしょう。
少し違和感がありますよね。
デザインでは一つひとつの要素がバラバラではなく、
すべてが同じ世界観を作るために存在しています。
だからこそ、このポスターを見た瞬間に
「IT企業っぽいな。」
と感じられるのです。
余白で読みやすくする
初心者ほど情報を詰め込みたくなります。
しかし、情報量を増やすほど読みにくくなってしまいます。
このポスターでは上部、中部、下部にしっかり空間を作っています。
その余白があることで、
各情報が独立して見え、読む人も内容を整理しながら理解できます。
これは前回のブログでもお伝えしたグループ化の力でもありますね。
余白は何もない空間ではありません。
情報を整理するためのデザイン要素なのです。
ターゲットに合わせたデザイン
最後はターゲットです。
このポスターは誰に向けて作られているでしょうか。
答えは新卒の学生です。
だからこそ、
堅苦しい企業らしいデザインではなく、
「挑戦」
「創造」
「未来」
を感じさせるビジュアルになっています。
もし銀行の採用ポスターなら、このデザインでは信頼感よりも勢いが強く見えてしまうでしょう。
つまり、良いデザインとは
ただかっこいいデザインではなく、ターゲットに合ったデザインなのです。
いかがでしたでしょうか。
これまでの記事でもお伝えしてきたように、
デザインは決して「なんとなく」で作られているものではありません。
今回はその中でも、「何を最初に伝えるか」という
情報設計に注目して解説しました。
同じ情報でも、伝える順番や見せ方が変わるだけで、見る人の印象は大きく変わります。
もちろん、このポスターにも今回紹介しきれなかった工夫はまだまだ隠れています。
そしてその工夫をただ使うだけでなく、
工夫同士の絶妙な具合の組み合わせることで良いデザインは生まれるのです。
ここまでブログを読んでいただいた皆さんはぜひ自分の力で、
「なぜこのデザインなのか」という視点で考察してみてください。
きっと、普段何気なく見ているポスターが今までとは違って見えてくるはずです。そしてそれこそがデザインを内側から楽しむ力なのです。
また、
「こんなポスターを作ってほしい」
「伝わるデザインをお願いしたい」
という方は、プロフィールやサービスもぜひご覧いただけるとうれしいです。