負の感情は、人生を壊すものではない
「前向きに考えよう」
「感謝していれば、きっと良いことが起きる」
「ネガティブな言葉は使わない方がいい」
今の時代、こうした言葉があまりにも多くあふれています。
少し前までは、自分の本音を見つめることや、苦しさと向き合うことが大切だと言われていました。
けれど今は、短い言葉で気分を上げるだけの薄っぺらい自己啓発が広がりすぎています。
「言葉を変えれば人生が変わる」
「常に前向きでいれば、運気は上がる」
「不安や怒りを口にすると、悪いものを引き寄せる」
そんな分かりやすい言葉だけが独り歩きし、多くの人が本当の気持ちを置き去りにしたまま、無理に明るく振る舞うようになりました。
本当は怒っている。
本当は悔しい。
本当は不安で仕方ない。
本当は、誰かに選ばれたい。手に入れたい。失いたくない。
それなのに、「こんな感情は持ってはいけない」と自分に言い聞かせ、聞こえの良い言葉で覆い隠そうとする。
「こうなりたくない」と感じているのに、「こうなりたい」と言い換える。
「もう耐えられない」と叫びたいのに、「きっと大丈夫」と自分をなだめる。
もちろん、前向きな言葉を使うことが悪いわけではありません。
ただ、心の奥では泣いているのに、口先だけで「幸せです」と言い続けても、現実は変わりません。
むしろ、本音と違う言葉を重ねるほど、自分の中の苦しさは置き去りにされていきます。
人を大きく動かすのは、いつも穏やかな希望だけではありません。
「こうなれたらいいな」という願いよりも、
「もうこのままではいたくない」
「これ以上、奪われたくない」
「こんな扱いを受け続けるのは嫌だ」
「絶対に変えたい」
そんな限界に近い感情の方が、何倍も大きなエネルギーを持っています。
人が本気で環境を変える時。
人が誰かを手放す時。
人が新しい道を選ぶ時。
そこにはたいてい、希望だけではなく、怒りや悔しさ、不安、執着、嫉妬といった感情があります。
世間では、それらを「負の感情」と呼びます。
けれど、本当に問題なのは、負の感情を持つことではありません。
薄っぺらい自己啓発に影響されて、その感情を悪いものだと決めつけ、認めず、押し殺し、扱い方も分からないまま放置してしまうことです。
強い怒りを抱えながら、笑顔でいようとする。
深い孤独を抱えながら、「私は大丈夫」と言い続ける。
誰かを失いたくないほど想っているのに、「執着しない方がいい」と自分に言い聞かせる。
それでは感情は消えません。
行き場を失ったエネルギーは、心の奥に溜まり続け、いつか自分自身を苦しめます。
本当に強い人は、ネガティブな感情を恐れません。
怒りがあるなら、その怒りを認める。
悔しいなら、悔しいと認める。
欲しいものがあるなら、欲しいと認める。
感情に飲み込まれるのではなく、その力を自分のために使える形へと変えていくのです。
負の感情は、暴れさせれば人生を乱します。
けれど飼い慣らすことができれば、人生を前へ進めるための強烈な推進力になります。
悔しさは、努力を続ける力になる。
怒りは、自分を粗末に扱う場所から離れる決断になる。
不安は、未来を守るための準備になる。
執着は、本当に大切なものを見失わないための熱になる。
黒魔術が扱うのも、まさにこうした人間の奥底にある強いエネルギーです。
負の感情を無理に消すのではなく、否定せず、飲み込まれず、自分の望む未来へ向かう力として使っていく。
綺麗な言葉だけでは変えられない現実もあります。
だからこそ、自分の中にある醜い感情も、苦しい感情も、まずは見捨てないでください。
その奥には、まだ使われていない大きな力が眠っています。
飼い慣らせなかった感情は、自分を苦しめます。
けれど、正しく使いこなせた時。
その感情は、これまで想像もしなかった未来へ進むための、最も強い味方になるはずです。