「ほらまただ…」
私は心身に不調をきたすとどうやら財布の中身を気にせずにやたらめったら植物を買いあさりだす癖があるそうで。
買い物に出掛ける度に観葉植物や花を持ち帰る。
そうすると子供が私に聞こえない様に気を使いながらため息交じりにぼやく。
これまで何度も心身の不調はあり、都度今に近い状況はあったが、何かをきっかけに、無理矢理気を紛らせたり、仕事が増えて休みが無くなると全く世話が出来ず、いつの間にか植物の存在自体が薄れ、幾度と枯らしていた。
残るは荒れた庭と、捨てた土と空の鉢の山…。
程なくして、また波がやってくると増えるという繰り返し。
今春から庭には20種類の苗木が新たに植えられ、夏頃より自宅内には人間の動線を阻害するくらい観葉植物を迎え入れられた。
これにより無職の一日は多忙を極めている。
しかし、他に気が紛れる事が無いのか、時間があり過ぎるのか毎日お世話が続く。
流石に無職。財布を開けて「やば…」となる為、今では株分けや挿し枝による増加にとどまっているが、今までとは少し違った感覚で植物と接している。
葉の形や色、成長の過程や花の香に意識がいく様になっていた。
植物のコンディションまでわかる様になり、ほぼ枯らす事は無い。
今朝、庭に植えているラベンダーの前を大量の洗濯物を抱え通っていると
足元に何等かの優しい風を感じた。
目を留めると、一匹のミツバチが花から花へ渡っていた。
ミツバチ…見たの何年振りだろう。
こんな小さな生き物の活動に気付けたんだ。
あのまま働いていたら、死ぬまで気づく事なんてなかったのかも知れない。
口では「秋らしくなってきた」なんて言ってたけど、もういつからか自然や季節、物やヒトの変化など、見ているつもりで何も見えて無かったんだ。
秋なんだ。
本当に秋がきたんだ。
何十年ぶりかの秋。