こんな人におすすめ
・自社のWikipedia記事を編集しようとして「ブロックされています」と表示された広報担当者
・社内の誰かが自社記事を編集し、Wikipedia編集ブロックを受けてしまった企業の経営者
・自社記事の誤りを直したいが、Wikipediaの編集ルールがわからず手が止まっている方
・これからWikipediaへの掲載・作成・編集を検討していて、ブロックのリスクを先に知っておきたい方
はじめに:Wikipedia編集ブロックは「次の一手」で状況が変わる
「自社のWikipedia記事に古い情報が残っていたので直したら、しばらくして編集できなくなった」
「会社のネットワークからWikipediaを開いたら、ブロックの通知が出た」
広報担当者が自社のWikipedia記事に手を入れたとき、こうした事態に直面することがあります。慌てて別のアカウントを作ったり、自宅の回線から同じ編集をやり直したりしたくなるかもしれません。しかしWikipediaの方針では、ブロック回避に使われたアカウントは無期限ブロックの対象とされ、有期のブロック中であれば、ブロック期間がリセットされて最初からに戻るとされています。
私はWikipedia編集を10年続けてきたフランクマーケティングです。この記事では、Wikipediaで編集ブロックを受けたときにまず確認すること、ブロック中にできること・できないこと、解除依頼の考え方、そして解除後に自社記事を正しく改善する手順を、Wikipediaの方針ページに沿って整理します。
なお、Wikipediaの方針や運用は改定されることがあります。実際に対応する前に、末尾に挙げた方針ページの最新版を必ずご確認ください。
Wikipediaの編集ブロックとは
ブロックは「懲罰」ではなく「予防」のための措置
一般に「編集ブロック」と呼ばれるものは、日本語版Wikipediaの正式な用語では「投稿ブロック」といいます。「Wikipedia:投稿ブロックの方針」では、投稿ブロックを「アカウントまたは IPアドレスからウィキペディアへの投稿を禁止する機能」と説明し、「すべての場合において、投稿ブロックは懲罰というよりむしろ予防であり、ウィキペディアの被害を回避するためにのみ実施されます」としています。
この考え方を知っておくと、どう対応すればよいかが見えてきます。解除を求めるときには、「同じ被害はもう起きない」と判断できる材料を示すことが基本になるからです。
企業の関係者がブロックを受ける主な理由
投稿ブロックの方針などには、ブロックの対象になりうる行為として、たとえば次のものが挙げられています。企業の関係者が自社記事に関わる場面で当てはまりやすいものを抜き出しました。
・宣伝・広告投稿:投稿ブロックの方針には「宣伝・広告投稿をする利用者は、ブロックされます」とあります
・過剰な差し戻し:他の編集者に戻された内容を何度も戻す行為
・多重アカウントの不適切な使用:複数のアカウントを持つこと自体ではなく、他の利用者を欺く、合意を捻じ曲げる、制裁を回避するといった使い方(ソックパペット)が問題とされます
・不適切な利用者名:利用者名が不適切と判断されたアカウントはブロックされることがあります
・有償の寄稿の開示に応じないこと:一定の条件を満たすとブロックの対象になります
・利益相反のある編集による混乱:草案のページ「Wikipedia:利益相反行為」には、利益相反の編集で混乱が生じた場合、管理者が投稿ブロックすることもあると書かれています
自社の正しい情報を載せたいという善意からの編集でも、これらに当てはまればブロックの対象になりえます。
編集ブロックを受けたら最初に確認する3つのこと
1. ブロックの対象を確認する(アカウントか、IPアドレスか)
ブロック中に編集しようとすると「あなたはブロックされています」というページが表示され、ブロックの理由や解除依頼の方法が書かれています。まず、何が対象になっているかを確認します。
・アカウントのブロック:あなたが使っていたアカウントそのものが対象
・IPアドレスのブロック:接続元のIPアドレスが対象
・自動ブロック:ブロックされたログイン利用者が編集しようとしたとき、その人が使っていたIPアドレスも自動でブロックされるもの。投稿ブロックの方針では、期間は「24時間と本来のブロックの期限までのうち短い方」とされています
また、変動IPなどで、自分とは関係のないブロックに偶然巻き込まれることもあります(投稿ブロックの方針では「巻き込まれのブロック」として説明されています)。会社のネットワークのように多くの人が同じ接続元を使う環境で、「自分は何もしていないのにブロックされた」という場合は、この可能性も考えてください。
2. ブロックの理由・期間・範囲を確認する
通知には、ブロックの理由と期間が示されます。有期のブロックは期間が過ぎると自動的に解除され、無期限のブロックは管理者が解除するまで続きます。
範囲にも違いがあります。サイト全体での編集が禁止される場合のほか、特定のページだけが編集できなくなる「部分ブロック」もあります。
3. 自分の会話ページを確認する
ブロックの前後に、他の編集者や管理者から、あなたのアカウントの「会話ページ」へ注意やメッセージが届いていることがあります。そこに書かれた指摘が、何が問題とされたのかを知る一番の手がかりになります。
ブロック中にできること・できないこと
ここを取り違えると、善意の行動がブロック回避とみなされかねません。
ブロック中にできること
・自分の会話ページで、管理者と対話すること(投稿ブロックの方針では、ブロック中の利用者との対話は、その利用者の会話ページでしかできないとされています)
・自分の会話ページで、解除依頼を出すこと
ブロック中にしてはいけないこと
・別のアカウントや別の回線で編集すること(ブロック回避)
・記事のノートページなど、ブロックの範囲内にあるページへ書き込むこと
・同僚や知人に、自分の代わりに編集してもらうこと
自社記事の内容を直してほしいという提案は、ブロックが解除されてから行うのが原則です。部分ブロックの場合は、ブロックの対象外のページに限って編集できますが、ブロックを受けた問題と同じ行為を別のページで続けることは避けてください。
会話ページの編集まで禁止されている場合について、「Wikipedia:投稿ブロック解除依頼作成の手引き」では、IRCの #wikipedia-ja-unblock で会話ページの編集許可を求める方法が案内されています。
Wikipedia編集ブロックの解除依頼の出し方
解除依頼の基本
「Wikipedia:投稿ブロック解除依頼作成の手引き」では、自分の会話ページの一番下に、次の形で解除依頼を投稿するよう案内されています。
{{Unblock|理由 --~~~~}}
手引きによると、解除依頼で説得すべきなのは、「ブロックが方針に反していること」、または「ブロックされた理由を理解し、二度と繰り返さず、今後は有益な貢献を行うこと」のどちらかです。また、次の点が勧められています。
・簡潔に、落ち着いて書く
・ブロックの理由を明示する
・必要に応じて差分(編集の記録)で証拠を示す
・法律家のように振る舞わない、法的な脅しをしない
・他人を非難しない
手引きには「現実には、ブロック解除依頼の多くは却下されています」とも書かれています。解除依頼は、ブロックを受けた本人が、自分の言葉で、自分の会話ページから出すものです。
巻き込まれでブロックされた場合
自分ではなく、同じ接続元を使う別の人へのブロックに巻き込まれた場合は、ブロックの対象が自分ではないことを、通知に示された情報をもとに簡潔に伝えます。「自分は悪くない」と強く主張するより、通知に書かれた内容と自分の状況を落ち着いて説明する方が伝わりやすいはずです。
社内の同じネットワークから複数の人が編集する場合、「Wikipedia:多重アカウント」では、チェックユーザーという調査で関連付けられる可能性があるため、利用者ページで互いの関係を宣言しておいた方がよいとされています。同じ目的で編集すると、一人の利用者とみなされる場合があることにも注意が必要です。
自分の編集が原因でブロックされた場合
自社の宣伝的な記述を書き加えた、差し戻しを繰り返した、といった自分の編集が原因の場合は、次の3点を整理して書きます。
・どの編集が、どの方針に反していたと理解しているか
・自分と記事の対象(自社)との関係
・今後どう行動するか(例:自社記事の本文を直接編集せず、ノートページで提案する)
多重アカウントの使用でブロックされた場合、手引きでは、解除依頼は必ずメインのアカウントから出すよう案内されています。
自社との関係を開示する(利益相反と有償の寄稿)
利益相反がある場合の考え方
自社の社員や、自社から依頼を受けた人が自社記事に関わる場合は、利益相反がある状態です。
日本語版Wikipediaで関係するガイドラインとしては、「Wikipedia:自分自身の記事をつくらない」があります(「Wikipedia:有償の寄稿の開示」の記述による)。
一方、「Wikipedia:利益相反行為」は、英語版のガイドラインを途中まで翻訳したページです。ページ冒頭に、草案であり、まだ公式にリリースされていない旨が表示されており、日本語版の正式な方針やガイドラインではありません。そのうえで、このページには「利益相反の関係にある編集者は、その影響を受ける記事を直接編集することは極力行ってはいけません。その代わりにノートページで編集の提案を行うことが求められます」と書かれています。自社記事に関わるときの考え方として参考になります。
社員として編集する場合も「有償の寄稿」にあたる
「Wikipedia:有償の寄稿の開示」は、ウィキメディア財団の方針で、日本語版でも方針とされています。報酬を受け取って寄稿する場合は、「雇用主、顧客および提携団体」を開示する必要があり、開示の方法として、利用者ページ、関連するノートページ、編集の要約のいずれかが挙げられています。
雇用主の定義では、利用者が雇用主の社員であるかどうかは問わないとされています。会社が社員に自社の記事を書かせる場合、その会社は雇用主であり顧客でもある、という説明もあります。つまり、広報担当者が業務として自社記事に関わる場合も、開示の対象になると考えてください。
アカウントの作り方にも注意する
・「Wikipedia:多重アカウント」では、複数人で共有するアカウント(ロールアカウント)は原則として禁止されています。部署で一つのアカウントを使い回すことは避けてください
・草案のページ「Wikipedia:利益相反行為」(英語のまま残っている部分)には、組織の共有アカウントを作ったり、組織名をアカウント名にしたりしないよう書かれています
・手引きでは、不適切な利用者名は通常無期限ブロック(多くはソフトブロック)とされ、宣伝・スパムと判断されるケースが多いと説明されています
解除後に自社記事を正しく改善する手順
ブロックが解除されたあと、あるいはこれから自社記事に関わる場合は、次の手順をおすすめします。
ステップ1:利用者ページで関係を開示する
所属や自社との関係を利用者ページに書きます。業務として関わる場合は、有償の寄稿の開示に沿って雇用主・顧客などを明記します。
ステップ2:本文を直接編集せず、ノートページで提案する
直したい内容は、記事本文ではなく記事のノートページに書きます。提案の基本形は次のとおりです。
・現在の記述:どの段落・どの文か
・提案する記述:どう書き換えたいか(宣伝的な言葉を使わず、事実だけを書く)
・出典:その事実を確認できる、第三者が発行した情報源(発行元、日付、記事名など)
・開示:自分が記事の対象と関係していること
提案に他の編集者が応じて反映してくれることもあれば、反応がないこともあります。反応がないからといって、自分で本文を書き換えるのは避けてください。
ステップ3:社内のルールを決める
会社のネットワークを共有している以上、一人の編集が他の社員に影響することがあります。再発を防ぐため、社内で次のようなルールを決めておくと安心です。
・自社記事の本文を直接編集しない
・Wikipediaに関わる担当者と窓口を決め、各自が自分のアカウントを使う(共有アカウントは作らない)
・会社名やブランド名をアカウント名にしない
・業務として関わるときは、有償の寄稿の開示を行う
・同じネットワークから複数人が関わる場合は、利用者ページで関係を宣言する
・外部に依頼する場合は、依頼先が有償の寄稿の開示を行うかを確認する
よくある質問
Q1. 会社のネットワークから編集できなくなりました。自分がブロックされたのでしょうか?
A. 必ずしもあなた自身が対象とは限りません。社内の別の人のアカウントがブロックされ、その接続元が自動ブロックされている可能性や、巻き込まれのブロックの可能性もあります。表示される「あなたはブロックされています」のページで、理由と対象を確認してください。
Q2. ブロックはいつ解除されますか?
A. 有期のブロックは期間が過ぎると自動で解除され、無期限のブロックは管理者が解除するまで続きます。ただし、ブロック回避をすると有期のブロック期間は最初からに戻ります。解除依頼が認められるかどうか、いつ解除されるかを約束できる方法はありません。
Q3. ブロック中に、記事のノートページで訂正を提案してもよいですか?
A. ブロックの範囲内にあるページには書き込めませんし、書き込もうとしてはいけません。ブロック中に使えるのは原則として自分の会話ページで、そこでは管理者との対話や解除依頼を行います。記事への提案は、解除されてから行ってください。部分ブロックで、その記事やノートページがブロックの対象外になっている場合でも、ブロックを受けた問題と同じ行為を続けることは避けてください。
Q4. 自社記事の明らかな誤り(設立年や所在地など)も、自分で直してはいけないのですか?
A. 草案のページ「Wikipedia:利益相反行為」(英語版ガイドラインの途中までの翻訳で、日本語版の正式な方針・ガイドラインではありません)では、利益相反のある編集者は直接編集を極力避け、ノートページで提案することが求められるとしています。誤りが明らかでも、出典を添えてノートページで提案するのが安全です。
Q5. 専門家に依頼すれば、ブロックが解除されたり、記事が削除されなくなったりしますか?
A. いいえ。ブロックの解除は管理者が、記事の内容はWikipediaのコミュニティが判断します。草案のページ「Wikipedia:利益相反行為」(英語のまま残っている部分)にも、有償の編集者はWikipediaの記事について結果を保証できないと書かれています。また、解除依頼は本人が自分の言葉で、自分の会話ページから出すものです。
まとめ
・編集ブロック(投稿ブロック)は、懲罰ではなく予防のための措置
・まず「あなたはブロックされています」の表示で、対象(アカウント/IPアドレス/自動ブロック)、理由、期間、範囲を確認する
・ブロック中は、自分の会話ページで対話と解除依頼を行う。別アカウント・別回線での編集や代理編集はしない
・解除依頼は {{Unblock|理由 --~~~~}} で、理由の理解と今後の行動を簡潔に、落ち着いて書く
・解除後は、有償の寄稿の開示などで自社との関係を明らかにし、本文ではなくノートページに出典付きで提案する
編集ブロックを受けると焦りがちですが、いったん手を止めて方針に沿った手順に切り替えることが、自社の記事に長く健全に関わるための近道だと私は考えています。
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著者プロフィール
フランクマーケティング
Wikipedia編集歴10年の専門家。企業・個人のWikipedia記事作成代行を通じて、デジタルマーケティングとブランディングを支援。SEOとAI検索(LLMO/GEO/AIO)の両面から、クライアントの認知度向上をサポートしている。
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